~67話~新料理と魅惑のデザート
「剥ぎ取りは終わったのか?」
「はい!完了しました!」
「素材は馬車に積んだので今すぐにでも出発できます!」
「この美味しそうな料理達は何という名前ですか?」
メイサとオリーブが配膳をしてくれている間に、3姉妹から報告を受けるが、カンナは常に食欲優先だ。
「これは餃子でこっちがシュウマイと炒飯だ!」
「ダーリン終わりましたわ?」
「御主人様すぐに食べましょう。」
「冷める前に食べないとな!?頂きます!」
「「「「「頂きます」」」」」
号令と共にみんな一気に食べ始め、6人掛けの机に所狭しと並べられた料理がどんどんと無くなっていく。
「この餃子という食べ物はおいしいですわね。」
「奥様、シュウマイお勧めですよ?」
「炒飯でしたか?チャーシューがころころしていて美味しいです!」
「私はラーメンが一番ですかね?」
みんなが思い思いに感想を言って食べてくれて、ご満悦の叡斗。
ちなみにカンナは脇目も振らずに一心不乱に御飯を食べている。
「メイサ?この料理達もこの世界には無いのか?」
「餃子とシュウマイはアメリアの小国家の特産だったと記憶しています。」
「それだけ?」
「しかもレシピは国を上げて隠してると書物にあったと思いますわ。」
「なるほど・・・」
「それにしても小麦粉とはパンになる物と思ってましたが、こんなに変わるのですね。」
「次は何を作ろうかな?」
「今から次が楽しみですわ!」
「そろそろデザート欲しいよな・・・」
この世界のデザートと言えば、甘味の少ないパウンドケーキか果物くらいしか無い。
「デザートですか?」
「アイスクリーム食べたいな・・・」
「あいすくりぃむですか?今日作れる物ですの?」
「御主人様、作りましょう!」
「作れない事はないけど・・・今日作るのか?」
「駄目ですか?」
「御主人様・・・」
「わかったわかった!作るぞ!」
女性陣に上目遣いで見つめられ、折れる叡斗
晩御飯が終わりオリーブに片づけを任せて、メイサと叡斗が厨房代わりの台の前に立つ。
「メイサ?これでこのボウルの中身を混ぜてくれる?」
メイサに泡だて器とボウルを渡す叡斗
「卵白と蜂蜜ですの?」
「白くなって泡だて器を持ち上げたら角が出来るくらい混ぜてくれ!」
「分かりました。」
メイサが混ぜ始めるが早すぎて残像が起きている。
「ダーリンできましたわ。」
「はやっ!10秒もかかってないじゃないか!出来てる・・・次はこれ!」
「はい!・・・出来ましたわ!」
「じゃあこれ!」
「出来ましたわ!」
「じゃあこのボウルとボウルを泡を潰さないように混ぜてだな」
「フムフム、卵白と卵黄をここで混ぜるのですね?」
「その後にこっちのボウルを入れて混ぜる」
「最後に牛乳を混ぜた物を入れるのですね?」
「そしてバットに流し込んで・・・」
「どう致しますの?想像が付きませんわ。」
「凍らせる!」
叡斗が製氷機代わりに使っている魔導具の冷凍庫にバットを入れる。
「よし!じゃあ御風呂入ろっか?」
「え?これだけですの?」
「俺の記憶が正しければこれだけだ!」
「どんな物が出来るのか楽しみですわね。」
「言っとくが上手くいったら氷にはならないぞ?」
「え?凍らせますのに?」
「出来てからのお楽しみだ!」
「凍らせるのに氷ではない・・・クイズかしら?」
ブツブツと呟くメイサと風呂に入るが
「ダーリン?そろそろ上がりません?」
「まだ凍ってないぞ?」
「そうですわよね・・・」
何度もメイサから言われる。
「ダーリン?」
「わかったわかった!」
「何が分かりましたの?」
「上がって急いで凍らせるぞ!」
「出来ますの?」
「時間をかけるべき時はかけないと駄目だが今日は試験的な物だからいいだろう!」
「ではすぐにでも行きましょう!」
「はいはい。」
メイサに腕を引かれて風呂を上がる叡斗
オリーブと3姉妹が風呂に入っている間にゆっくりとバットの中身を混ぜて、冷凍庫の出力を上げる。
「出来ていましたか?」
「思ったより冷凍庫の出力が高いみたいだからもうすぐだよ?」
バットの中身を混ぜる時に手応えがあったので結構凍ってるはずだ。
「楽しみですわね!」
「御主人様、出来ましたか?」
「オリーブ?早すぎないか?」
「御風呂から上がればアイスクリームと聞きましたので。」
「早く上がれば早く出来るってもんじゃないぞ?」
「そうですか・・・」
「あと1時間くらいじゃないか?」
「楽しみです。」
ソワソワして何も手に付かない様子のメイサもオリーブを眺めて、ニヤニヤとワインを飲む叡斗。
「ダーリン?」
「なんだ?」
「ダーリンの『水魔法』で凍らしてはどうですか?」
「ふむ、そんなに言うんならそうするけど不味くなっても知らないぞ?」
「待ちきれませんわ!」
メイサが嘆いて、オリーブが同意して大きく頷く
「じゃあ3姉妹が風呂から上がったらそうするよ!」
「早く上がって来ませんかね?」
「女ってのはどの世界でも甘味が大好きなんだねぇ・・・」
叡斗が1人ごちて、グラスのワインを飲みきる。
「ビール飲みたいなぁ・・・」
「ビールとはなんですの?」
「麦を発酵して作る炭酸の入ったお酒だよ?」
「エールとは違いますの?」
「エールと似てるんだけど、苦味と炭酸が物足りないよね・・・」
「ふむ・・・今度探してみますか?」
「そうだね!よし!3姉妹が上がったみたいだしアイスを食べようか?」
「待ってましたわ!」
叡斗が冷凍庫からバットを取り出し『水魔法』でバットごと凍らせる
「メイサ、オリーブスプーンで掬ってみ?」
「スプーンで?カチコチに決まって・・・柔らかいですわね。」
「冷たくて甘くて美味しいです。」
「じゃあ6人分に分けてくれるか?」
「かしこまりました。」
「オリーブ?これは御飯ではないので6等分ですわよ?」
いつも通りに自分の分を多めにしようとしていたオリーブの手が止まる
「奥様・・・」
「そんな目で見ても駄目です!」
「俺のを半分やるから、我慢しなさい!」
「御主人様・・・ありがとうございます。」
「一人前200gはあるだろ?胸焼け起こしてもしらんぞ?」
叡斗の心配をよそに、みんなペロリとアイスを食べてオリーブ以外は満足してテントに入って行く。
「オリーブ?どうせ明日からも作るんだから今日は我慢しなさい。」
「本当に作ってくださいますか?」
「この冷凍庫は上げるからアイス用に使いなさい!」
「レシピは覚えましたので、明日も作りましょうね?」
「御主人様、奥様・・・ありがとうございます。」
オリーブが泣きながらお礼をしてくる
「アイス如きで泣くなよ・・・寝るぞ?」
「ダーリン?あのアイスで戦争が起こるとしてもしょうがありませんわよ?」
「そうですね。魅惑の料理でした。」
「大げさな・・・」
「知ってしまったアイスを取り上げるというなら私はいといませんわよ?」
「国が相手でも殲滅あるのみです。」
「恐いよ!」
「ではダーリン?」
「ちっ!アイスで浮かれて普通に寝れる思ったのに!」
「甘いものとダーリンの魔素は別腹です。」
「魔素も腹だったの!?」
「ただの例えですわ?頂きます!」
「頂きます言っちゃったよ!」
メイサにかぶりつかれて意識が無くなる。
「あれ?」
朝目を覚ますとメイサもオリーブもいなかったので、着替えてテントから出ると女性陣が集まってごそごそと何かをしている。
「みんなおはよう。どうしたの?」
「早く凍らないかと待ってますの!」
どうやら朝一でアイスを作ったようだ。
「ふーん・・・朝御飯は?」
「あぁ・・・そこに置いてますのでどうぞ?」
机の上にパンと干し肉と生野菜サラダが置いてある
「そんなにアイスに夢中なのかよ・・・」
叡斗は昨日の残りの卵黄を取り出し、ひたすらかき混ぜて、かき混ぜながら植物油を少しづつ加えて行き、最後にレモンを絞り入れ、酢・塩・胡椒っぽい香草を入れてかき混ぜ、指で掬い味見をする。
「よし!マヨネーズ歓声だな。」
実は泡だて器はマヨを作ろうと思って魔力成型で作っていたのものだった。
パンと二つに切って野菜と干し肉を乗せてマヨをかけてパンではさんで食べる。
「やばっ!旨っ!マヨ最強だ!」
「御主人様その白い液体は何でしょうか?」
「マヨネーズだよ?」
「一口頂いてもよろしいですか?」
「アイスが不味くなるからやめときなさい!」
「そんな・・・」
「どうしましたの?」
「奥様!御主人様が何やら見た事無い物を食してます。」
「ダーリンそれはなんですの?」
「マヨネーズだ!」
「それはおいしいんですの?」
「アイスほどは美味しくない!」
「一口下さらない?」
「アイスの方が美味しいから上げない!」
「奥様・・・御主人様は怒ってますか?」
「怒ってはいませんがかなり不機嫌ですわね。」
「不機嫌じゃないよ?ちょっと意地悪したい気分なだけだ!」
「朝食をさぼった罰なのですね。」
「アイスにのぼせ過ぎましたわね・・・」
2人がトボトボと冷凍庫へと戻って行くので、サンドイッチを食べ終わりテントをしまって、風呂にゆっくりと浸かってから車の中で暇を持て余しているとついうたた寝をしてしまう。
「御主人様?お食事の準備が整いました。」
「ん?寝てたのか、もうそんな時間か?」
「はい昼食で御座います。」
「そうか!って3姉妹もまだ出発してないのか?」
叡斗が車から出ると隣に馬車が止まっていた。
「はいアイスを待っていたらこの時間になってしまったので・・・」
「そんな申し訳無さそうな顔すんな!別にいいんだぞ?」
「少々我々の我侭が過ぎたと反省しております。」
「気にすんなって!俺は怒ってないから!」
「ではこちらへ座ってお待ちください。」
オリーブに促されるままに席に着き昼食が始まる、今日はカツカレーだ。
「あの・・・エイト様?」
「リーナどうした?」
「あれから皆さんと話し合ったのですが、やはりウェステンデに報告のために一緒に帰ることは出来ませんか?」
「え・・・また苛められるってわかってるのに?」
「我々が守ります!」
「メイサはどう思う?」
「私も色々話しましたが、ここで力を示しておけば後々楽になりませんこと?」
「それもそうだな、今度は3姉妹が味方だし寄り道するか・・・」
「では昼食後に出発してウェステンデ到着は明日の夜ですわね?」
「そうなるかと思います。」
「じゃあ飯を食べたらお互いの車でウェステンデに帰るぞ!」
「「はい!」」
リーテとリーチェが満面の笑みで答え、末っ子カンナは一心不乱にカレーを食べている。
そんなぶれないカンナを姉2人が怒る。
「サーペントのカツは美味いから仕方がないよな!ハハハ!」
「朝食の失態を取り戻せましたかしら?」
「失態なんかあったか?」
「少々アイスにのぼせてサボりすぎましたわ。」
「いつも頑張ってくれてるんだしたまには休むのもいいんじゃない?」
「休むとサボるは違いますわ!」
「いつもメイサとオリーブには頑張ってくれて感謝してるよ?」
「ふぅ、それならよかったですわ。」
「御褒美に俺の分のアイスがあるんならだけど、2人で分けていいよ?」
「それは違いますわ!」
「そうです!御主人様の分はご自分で堪能してください。」
「気にするなって!あれか?アイスを作るのは最後なのか?」
「最後ではありません!これが最初です!」
「じゃあ俺が食べるチャンスをいくらでもあるから食べな?」
「わかりましたわ。」
「それよりも今日のカレー改良した?さらに美味くなったな!」
「気付いてくれました?スパイスを少し変えましたの!」
メイサが嬉しそうに答える
「メイサに任せておけば料理がどんどん美味しくなるな!?」
「そんな・・・言いすぎですわ!」
「御主人様、私も調合を手伝いました。」
「よしよし!オリーブもメイサも俺のお供には勿体無いよ!」
オリーブの頭を撫でて言うと、オリーブが耳を真っ赤にして俯く
「じゃあ出発出来る様になったら言ってね?」
叡斗が御飯を食べ終えて車へ行き、誰も見えない所で密かに魔力成型する叡斗。
「出来た!」
叡斗が木の棒を持ってニヤニヤと見る。
「では出発しましょう!オリーブよろしいですか?」
「問題ございません。」
「では出して頂戴?」
「かしこまりました。」
「万事問題無しか?」
「はい!問題なしです!」
「じゃあメイサ?杖の魔玉を作ってくれない?」
「どうしましたの?誰のです?」
「メイサの魔玉!俺が作った杖の枝だよ?」
叡斗が先ほど作った木の枝を見せる
「これはダーリンの・・・作って下さるのですか?」
「ウェステンデまでには出来るんじゃない?」
「では早速!」
叡斗を膝枕したメイサが空中に魔法陣を描いて魔玉に刻んで行く。
「出来ましたわ!」
「じゃあ明日に杖作りだな?」
「ではお願いしますわ!」
「ちなみに何の魔法を入れたんだ?」
「知りたいのですか?」
メイサが怪しい笑みを浮かべる
「いや・・・聞くのが恐くなった。」
「ではお願いしますわね?」
「あぁ!メイサの杖をプレゼントするよ!」
「指輪に続いて杖まで・・・次は何かしら?」
「次は考えてないよ・・・」
「では私の操をプレゼントですわ!」
「ウスッ!がんばります。」
「ではそろそろ晩御飯みたいですわよ?」
車が止まりメイサ言うと、辺りはすっかり日が暮れている。
「では晩御飯にしましょう!」
「そうだな!お願いしても大丈夫か?」
「勿論ですわ!」
「じゃあ任せた!」
「アイスを作ってい頂きましたし、腕によりをかけますわ!」
「楽しみだ!」
メイサとオリーブが嬉しそうに叡斗が作った簡易厨房に行き、3姉妹も料理をみようと群がり二人が料理を始める。




