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ツヴァイト防衛戦①

 振り下ろされた棍棒を左の剣で往なし、右の剣でウィズを発動させながら喉元を斬りつける。アーツが終わった後も勢いを保ったまま剣を振り続けて斜め後ろからの攻撃を弾き、できた捻りを利用して左の剣でソニックリヴォルバーを発動。

 アタシを包囲していたゴブリン達を一斉に薙ぎ払って包囲を脱する。その瞬間、後方から紅蓮のレーザーが戦場を一閃し、無数の黒球が襲いかかった。


 上空からルーチェの炎天魔術とリリスの奈落魔法が戦場を蹂躙している。まだ遠距離攻撃の危険がないと判断し、パシアンさんの指示で二人には俯瞰して戦況が厳しい場所へと魔法でのサポートを任されていた。


 アタシだって飛べはするけど、魔力は消費していくし、何より気軽に放てる魔法スキルがない。一応星魔法のマスタリー100で使えるようになった範囲魔法があると言えばある。でも、どの道星空スキルを使わなくちゃいけないから、とても使えたものじゃない。

 いきなり戦場を夜になんかしちゃったら全員が動揺して思わぬ被害に繋がる可能性が高いからね。


 最初に切り込んできたのは先頭を猛スピードで駆けていた騎乗兵ゴブリン・キャバルリー。高機動力から放たれる棍棒の一撃は意外に重いもので、乱戦になると危険。後続の戦闘特化な歩兵が来る前に殲滅ないしは大きく数を削っておく必要がある。

 相手と打ち合っている内に後ろに回り込まれて攻撃されるのが一番危ない。


 今はその機動力を発揮しきれないように地上と空中の両方から攻撃し、間引くついでに一ヶ所へと集まるように誘導している。


「グギャァッ!」


 ゴブリンが振り上げた棍棒に黄色の光が灯る。武器を持ってるMOBってアーツ使ってくるんだよね。結構厄介な仕様になってる。

 瞬歩を使って一歩分だけ後退してアーツを躱し、逆にハイトで斬りつけて吹き飛ばす。筋力値が高ければ相手を確率で吹き飛ばせるから結構助かるんだよね。

 今回は上手いこと飛んで行ってくれたみたい。それを確認してから一気にその場から飛び退く。


「撃てぇっ!!」


 接近戦をしていた全員が後ろへ下がると、パシアンさんの号令がかかり、大小・属性様々の魔法が頭上を飛び抜けていく。

 数多の魔法は一ヶ所に集められていたゴブリンに次々と着弾。これでかなりの数を巻き込めたはず。


 魔法の余波でできた煙が晴れると、満身創痍のゴブリン達が十数体いた。それを取り囲みながら危なげなく倒していき、冒険者側に来ていた騎乗ゴブリンは殲滅完了。


「こっちはもう大丈夫そうかな?」


 戦闘が一時終了したと見てクラリスがアタシの傍に寄ってきた。その後に、他のパーティメンバーも近付いてきて、少し休憩って空気になる。


「騎士団の方は大丈夫かな~?」

「大丈夫ですよ、フィオーリ様。あの程度でやられるほど弱くはありませんから」

「そうそう。そんなことになったら護衛するはずの私達より弱いってことになっちゃうもん」

「そういう問題?」


 ちょっとズレた信頼の寄せ方に疑問を持ちながら騎士団が受け持ってる方を見れば、アタシ達と同じようなやり方で確実に数を減らしていってたから問題はないっぽい。


「第一波は何とかなったわね」

「はい。後は報告にあったゴブリン・ソーズマンとゴブリン・ソルジャーですね」


 ソーズマンの方は知ってるんだけど、ソルジャーの方は知らない。


「クラリス」

「どうしたの? ステラちゃん」

「ゴブリン・ソルジャーについて教えてくれる?」

「うん、いいよ」


 ゴブリン・ソルジャー。ショートスピアを武器として持っているゴブリン種。隊列を組んで全力で突撃してくるため、防御をしっかり固めていないとなすすべなく槍で貫かれる。

 質の悪いことにショートスピアがゆえの取り回しやすさで近接戦闘まで熟すらしい。


「突撃せずに槍衾を作るとかの可能性は?」

「充分ある。いや、むしろそっちの方が可能性が高いかもね」

「理由は?」

「ソーズマンが一緒に行動してるから」


 攻めはソーズマンで守りがソルジャーって感じになるってこと?


「でも、それだとソーズマンが捨て駒みたいになりません?」

「もしそういう行動を取った場合はそうなるんだと思いますよ、ルーチェ」


 ソーズマンの方が相手の中に切り込んで、相手を疲弊させる。文字通り命を懸けてソーズマンが戦い、それに対抗するためにこっちも全力を出さないといけない。そうしてできた隙に一斉突撃して瓦解させる。

 これがクララが予想している敵の戦略パターンの一つらしい。他にも色々考えてるみたいだけど、可能性が最も高いのはこれ。


「あまり犠牲は出てほしくないんだけど……」

「戦いだもん。多少は出ちゃうと思うよ」

「それを最小限に留めるためにパシアン組合長も考えてくれています」


 まあその辺りの戦略とかは上の人に任せとけば良いね。ある程度指示に従いつつ戦えれば全殲滅まではいかなくても、撃退くらいはできると思うし。


 ただ、心配事は結構ある。

 キャバルリーは出た。ソーズマンも報告がなされてるから戦列に加わっていることはわかってる。じゃあアーチャーは? いくら斥候の役目だったんだとしても、逃げた分が戦いもせずに奥に引っ込んだままっていうのはあり得ない。


 それから、ゴブリンの戦い方に魔法がないかっていうのも心配してる。もしあるんだとしたら、より多くの戦略を持ってるはず。かなり気を引き締める必要があるかもしれない。


 プレイヤーなら死に戻れるからいいんだけど、この防衛戦の中でそんな特殊な立場なのはアタシ達四人だけ。場合によっては身代わりになるくらいはしようと思ってる。


 減ったHPをポーションで回復させながら第二波を待つ。


 そんな中、ちょっとした休憩のつもりだったけど多少気が緩んじゃったのかもしれない。前にも一度感じた首筋がチリチリする感覚がアタシを襲う。

 疑問を持ちながら辺りを見回し、木の上に潜んでこっちを狙う目があるのに気付いた。


「クラリス! クララ!」

「ふぇっ!?」

「ステラ様っ!?」


 二人を突き飛ばし、直後に肩口を何かが掠めていった。掠めていった先の地面に突き刺さっていたのは一本の矢。


「敵襲! ゴブリン・アーチャー!」

「盾持ちは前に出て構え! 装備が弱い者はその陰にしゃがんで隠れろ!」


 アタシが叫んだ後、すぐにパシアンさんが対処するための行動をするように指示を出す。


「フィーさん、ルーチェさん。私の後ろへ!」

「クララちゃんとステラちゃんはこっちきて!」


 リリスとクラリスがそれぞれの近くにいたアタシ達を呼んでアーツを発動する。いつかの白兎竜戦で見た大きめの障壁を張るアーツ。

 その陰に隠れた途端に多数の矢が降り注いできた。すごい攻撃の嵐だけど、二人共ノーダメージで受け切ってる。


 おかげで近くにいた六人は誰一人ダメージを負うことなくやり過ごし、二の矢が来る前にフィーと二人で森へ向けて走る。

 一気に距離を詰めてくるアタシ達を見て焦ったのか、弧を描くように撃つため斜め上に向けてた弓矢を何体かがこっちに向けて放ってくる。


 瞬歩で一息に踏み込みつつそれを避け、もう一度使って木の枝に膝をついて狙っていたアーチャーの目の前まで飛んでいき、疾風刃を発動したライトセイヴィヤを構え、アーツを全力で叩き込んでHPを全損させる。

 防御力が低いからか、筋力パラメータにものを言わせて魔法ダメージまで加算されたアーツを受ければ、マックスHPでも一撃で倒せるのか。


 アタシやフィーと同じように森の中まで来る斥候っぽい人達もいた。十人にも満たない数だけど、遮蔽物が多い森の中という特殊なフィールドならあまりハンデにはならないみたいだね。


 それから二十分ほどかけ、騎士団方面も含めて潜んでいた全てのアーチャーを倒しきった時、遂に歩兵隊がすぐそこまで来てしまったらしい。

 硬そうな、それでも可動域が制限されないように作られた金属鎧に身を包んだ剣を持ったゴブリン。同じ様相でショートスピアと反対側の手にバックラーを持ったゴブリン。これは苦戦しそうだなあ。


「ステラちゃん!」

「一旦戻る! さすがにあれを数人じゃ相手できない!」

「うん!」


 ただ、そう易々と逃がしてはくれない。隊列を崩さないためかソルジャーはそのまま一定速度で歩いてきてるけど、ソーズマンはアタシ達を見た瞬間に走り出してきてる。


 相手に捉えられないように、それでも木にぶつからないように気を使いながら斥候っぽい人達と森を抜け出す。


「このペースだとしばらくかかりそうで怖いんだけど……」

「だね~。相手もどれぐらいいるかわからないもんね~」

「目下最大の問題はそれよ。敵戦力が全然把握できてない」


 ゴブリン達との戦いはまだまだ終わらないみたい。

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