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親衛部隊

 イベントクエストの内容的に今日含めて二日ちょっとの猶予があるから、その間はレベリングしておこうという話になった。

 それで、野営用のアイテムや回復アイテムを持ち込んでラウム迷宮へとダンジョンアタックしてる。


「回復アイテムっている~? ステラちゃんとルーちゃんがいたらいらなそうだと思ったんだけど~」

「言ったでしょ。ここは毒状態にしてくるMOBがうようよと――」


 ボフンッという音と共にアタシの視界が紫色に染まる。相変わらず酷い腐臭ね。冷静に通路の脇まで歩いていき、窪んだ部分に潜んでいたヤートグリープを刺す。

 奇襲と状態異常に特化してる分、物理攻撃力や防御力が低い毒キノコはすぐに爆散した。


「とまあ、こんな風に突然毒攻撃してくる奴がいるから、解毒ポーションとかは必須なのよ」

「お姉ちゃんと私は神聖スキルがあるので問題ないんですけど、フィーさんとリリスさんは状態異常耐性のスキルがないですよね」

「そうですね。それよりも戦闘スキル優先みたいな感じで取っていたので」

「毒胞子のことは知ってたけど、ここまで唐突にやられるのは厳しいね~」

「でしょ? だから、HPとかはともかく状態異常回復のポーションくらいは持って来て然るべきなの」


 他にもMPポーションとかも大量に持ち込んでる。住人が作ったものだと一部を除いて品質は一定だから、上品質以上のポーションはあまりない。ちゃんと効果は出るから問題はないけどね


「それにしても、ステラちゃんの言う通り、このダンジョンってホントに経験値効率良いね~」

「今まで伸び悩んでたレベルが一気に上がりましたよ」


 パーティ単位で倒しても、両手で数えられるくらいの討伐数でレベル一つ上がるくらいだからね。序盤の経験値稼ぎには、慣れればここほど相応しい場所ないんじゃないかな。


 上層を目指しながら、エンカウントするMOBは片っ端から全部倒していく。それを繰り返す内に、アタシとルーチェは44、フィーは36、リリスは35までレベルが上がった。


「なんかこう、ズルしちゃってる気分になりますね……」

「多分だけど、そもそもこの迷宮のレベルが高いんじゃないかな~?」

「それを序盤も序盤で攻略しちゃったお姉ちゃんがおかしいんですよ」

「あの時はクララがいたし、アタシも借り物の武器とアクセサリーで強化されてたからね。後は属性相性的に良かったっていうのもあるから」


 そもそも借り物がなければ攻略するのは不可能レベルだったと思う。火炎刃なんて特殊効果があったからそれもあって勝つのも楽だったし。


「お姉ちゃん。そもそも魔法剣を当たり前のように扱えてるのがおかしいんだよ」

「普通はMP管理の難しさで十全に扱えるまで時間かかるはずなんですよね」

「そこはあれよ。クララも一緒にいたから使用時間もそれに比例して短くなってたし」


 後は、クララがある程度迷宮内の道を知ってたのもある。言っても序盤だけだけど、出てくる素材とかも結構覚えててそっちにはクラリスがいないだろうってことで中層まではサクサク進めてるからね。

 中層以降は知らないことが多かったから念のために全体を見て回ることになっちゃったけど。


「そろそろ到着かな?」

「どこに~?」

「上層最後の安全地帯」


 泊りがけのレベリングをするつもりでアイテムは選別してきてるから、前一人でレベリングに来た時と違って一番上まで登ってきた。


「ここがステラちゃんとクラリスちゃんが初めて会った場所なんだね~」

「まあね。この上にはもうボスのいた場所しかない」

「今何時くらいでしょうか。時間によっては一度落ちる必要があります」

「ですね。やっぱりゲーム内で時間が見れないのはちょっと不便な気がします」


 って言ってもβの時からこの状態で、正式サービスになっても変わってないなら、何かしら目的のある仕様ってことなんじゃないかな。まあそれが何かっていうのはちょっとわかんないけど。


「とりあえず、皆一旦落ちましょうか。体感時間的には昼時になっててもおかしくないくらいは続けてる感じだし」

「そうだね~」

「では、昼食が終わったらそれぞれログインしましょう」

「はい。では、私はお姉ちゃんと料理してご飯食べてきます!」

「あれ? アタシって今日当番だったっけ?」

「たまには二人で作るのも良いかなあって」

「……まいっか」


 そのまま全員同時にログアウトしていき、昼食を済ませてきた。




 それからもダンジョン内でレベリングをして安全に立ち回れそうかなぁと思えるまでレベルを上げてステータスアップをし、ダンジョンを下りていく。


「いやあ。まさかギルド一時退団中に20レベル近く上げられるとはね~」

「驚きましたよ。丸一日ちょっとの間、狩りをし続けるだけでこれですからね」

「もう現状では私達四人が最高レベルなんじゃないでしょうか?」


 三人の言う通り、昼食を済ませた後すぐに再ログインして狩りを続けてた。時にはトレインして多くのモンスターを一気に引きつけ、時にはアラームトラップをわざと発動させて向こうからくるように仕向けながら、百体以上は間違いなく狩ってる。

 そんなおふざけのような無茶なレベリングをした結果、四人揃ってレベル50へと到達。ただ気になるのは。


「レベル50になってから一気に上がりづらくなったわね」

「そうだよね。最初はお姉ちゃんと私だけだったのにね」

「50レベルになったら上がりづらくなる仕様にでもしてるのかな~?」

「もしくは、適正レベルを超えてしまったとかでしょうか?」


 やればやるほど不思議な出来事が増えていく。まあいいんだけど。とにかく、これからのレベル上げはかなり長くなりそうっていうのは何となく理解できた。


「ん?」

「どうしたの、お姉ちゃん?」

「ダンジョンの外が騒がしい……」

「他のプレイヤーがここまで来ちゃったとか~?」

「かもしれませんね。戦い慣れてレベルも上がれば、この場所に来れるようになるのは当然ですし」

「ちょっと警戒しとこうか?」


 四人で頷き合って、いつ戦闘になってもいいように心の準備だけしておく。そのまま外へ出ると。多くの馬車とそれを守るように騎士が立っていた。


「これは……」

「む? そこの女四人! 何者だ!」


 その集団を見つめていると、近くにいた騎士っぽい一人がアタシ達を見つけて誰何してきた。それに反応して、離れた場所にいた騎士が何人かこっちに来る。


「アタシ達は冒険者よ。ダンジョン探索から戻ってきたら貴方達がいただけ」

「はっ。街が一大事って時に暢気に迷宮攻略か。これだから冒険者は」


 いや、別に暢気に攻略してたわけじゃないけど……。ただレベル上げてただけだし。


「ゴブリンのことでしょ? それに対抗するためにここへ来たのよ」

「住人の避難も手伝わずに何を世迷言を」


 そう言われると何も言い返せないけど、何も世迷言扱いしなくたって良いじゃない。実際、アタシ達はレベルもステータスも上げて、新しいスキルも取ったんだから、ここに来る前よりは強くなってるの間違いないし。


「アタシ達は加護者よ。魔物を数多く倒していけば、それに応じて強くなることもできるの」

「だから何だ? 薄汚い冒険者風情なのは変わらんだろう?」


 いい加減なことを言ってるわけじゃないってことを訂正しただけで、なぜ冒険者そのものが罵倒されているのか。

 あれかな。やっぱ正規の騎士と冒険者は仲が悪いってパシアンさんが言ってたやつ。


「ステラちゃん。コイツらぶっ飛ばしていいかな~?」

「やめなさい。どう見たって軍隊でしょうが、手を出したら罪に問われる可能性だってあるんだから」


 見事に全員が全く同じ鎧を身につけている。何らかの大きな組織を示してると見て良い。下手をすればこれが領主軍かもしれないし。

 騎士の訳のわからない罵倒に対してキレたフィーが威嚇して場の空気がピリピリしだした。


「何の騒ぎですか?」


 そんな雰囲気を癒すかのように鈴の音のような高い声が響いてくる。声のした方を見れば、白銀の鎧を身に纏った一人の女騎士がいた。


「これは騎士団長様。今日も美しくございます」


 その場にいた騎士達が一斉に敬礼の姿勢を取った。うん、確かに綺麗な人だね。なんで騎士団長なんて役職に収まってるのかっていう疑問を持つくらいには。


「エリック。私は何を騒いでいるのかと聞いているのです。そんなお世辞は求めていません」


 あの騎士エリックっていうのね。どうでもいいけど。


「はっ。実は冒険者が突然背後に現れたので警戒態勢を取り、目的を聞いていたところです」

「そうですか。では、貴女方は何のためにここにいるのですか?」


 騎士団長さんが今度はアタシ達に質問してきた。


「はっ。それはですね――」

「エリックは黙っていなさい。貴方には聞いていません」

「………」


 ざまあみさらせ。


「再び問います。貴女方はなぜここにいるのですか?」

「自分達の実力を上げるためにアタシ達の後ろにある迷宮で修行してたのよ」

「なるほど」

「目的まで話した方が良い?」

「いえ、何をしていたのか聞ければそれで充分です」


 疑わずに信じたってことでいいのかな? 上に立つ者としてはどうかと思うような反応だけど。


「こっちも聞いて良い?」

「答えられる範囲でなら答えましょう」

「そっちはどうしてここにいるの?」

「ツヴァイトの住民を避難させるためですね。この辺りでは最もプルミエの街が治安も防衛という意味でも優れているので、そこへ向かう途中の休憩です」


 戦いに巻き込まれないための避難か。まあそのくらいはするよね。戦えない人を残してたらどんなイレギュラーが発生するかわかんないし。


「もう一つ。貴女達は誰? できれば、どういう立場なのかくらいは教えてもらいたいわね」

「そうですね。名乗っておくのもいいかもしれません」


 そこで姿勢を正し、アタシ達をまっすぐ見詰めてくる騎士団長さん。


「我らは領主軍・クラリス親衛部隊。私は隊長を務めていますリーベ・ヴィッツと申します。以後お見知りおきください」


 ちょっと待って。ものすごく無視できない上、ツッコミたいとんでもない情報がいくつかあるんですけど。


「クラリスって領主となんか関係あるの?」

「ええ。クラリスお嬢様は現領主様の姪に当たるお方です」


 そこそこ育ちは良さそうだなあとは思ってたけど、まさか権力者と血縁関係があるとは。


「それで、姪っ子なのに親衛部隊があるの?」

「領主様はクラリス様を心配なされているのです。本当ならば領主館の方で暮らしてほしいとお考えなのですが、クラリスお嬢様自身がそれを拒否したため、仕方なく我々を陰ながらの護衛として付かせているのです」

「じゃあなんであの子が街を出た時に一緒にいなかったのよ……」

「恥ずかしながら、護衛の監視の穴をつかれたようで、気付いた時には手遅れでした……」


 ザル警戒だったのか、クラリスがそれを抜け出せるほど圧倒的な技量を持っていたのかはわかんないけど。護衛という任務を果たせてないというのは相当ヤバいと思うんですが。


「なので、クラリスお嬢様を生きて連れ戻ってくださったステラ様にはとても感謝しているのです。本当にありがとうございました」

「気付いてたのね。アタシのこと」

「クラリスお嬢様よりステラ様の特徴を教えていただいたので」

「そう。それで、クラリスの護衛である貴女達が護衛対象から離れてもいいの?」

「クラリスお嬢様からのご指示ですので」


 まああの子なら自分より、他の人優先しそうだね。妹のためとはいえ、無鉄砲にダンジョンアタックするような子だし。

 というかリーベさん。貴女さっき陰ながらとか言ってたのに、ばっちり存在がバレてるのはおかしいと思いませんか?


「それに、クララ様の親衛部隊が護衛として街に残っていますので」

「なるほど……」


 そっか。クラリスが領主の姪なら、当然クララも姪になるよね。そっちにも別の部隊が護衛に当たってたってことね。

 なんていうかこう、色々とすごい情報がでてきたなあ。これがイベントストーリーに関わってきそうだし。権力者関連のイベントとか割とご遠慮したいんですが。

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