表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元傭兵のおっさん。追放された悪役令嬢に転生したので、もっと悪逆非道に生きてみた~物語は語られない所でも動いている~  作者: ななよん
一章 成長編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/40

第一話 転生

※毎朝4:00頃に投稿中!

挿絵(By みてみん)


 ゴオオオオオォ!!


 激しい風きり音、息が苦しい。


 落下中!? 目を開け、滝壺(たきつぼ)か!?


 考えてる暇がない。入水(にゅうすい)姿勢を取れ。


 つま先を下へ。脚を閉じる。腕を上げて頭を挟む。体を一本の棒に固める。


 息を吸い込んで、止めた。


 ゾンッ――世界が白い。頬に気泡が当たりぱちぱちと爆ぜていく。


 全身を殴られた様な感覚。水が耳を潰し、上下が分からなくなる。冷たい。手足を動かす。泡の流れる方向。あっちが上だ。


 水面に顔が出た。しかし息が上手くできない。滝の落水(らくすい)に押し戻されそうになりながら、流れの緩い方へ必死に抜ける。


 岸が見えた。


 浅瀬に足がついたところで、そのまま四つん這いに()った。

挿絵(By みてみん)

 大量に飲んだ水を可能な限り吐き出す。


 何度か()き込んで、ようやくまともに息が入る。


「コヒュウっ」と言う狙って出せない音が喉から聞こえた。


 考えるより先に、体を(あらた)めた。


 指を握る。動く。足首を回す。動く。首、肩、胸、腰。異常なし。


 痛みもない。出血もない。あの高さから落ちて、傷ひとつない?


 ……上出来だ。


 水中に岩が無かったのも幸運だった。


 ようやく顔を上げて滝を見上げてみる。落ちてきたのはあそこか。

 周囲に人影はない。獣の気配もない。襲われて落ちたとか突き落とされた訳じゃなさそうだ。


 日はまだ高いとは言え、濡れた服が体温を奪っていく。


 立ち上がって、ようやく息をついた。


 ――で。


 どうしてこうなった。


 頭の芯が、じん、と(しび)れている。


 その奥から、記憶が流れ込んできた。


 自衛官だった頃を思い出す。


 国内の空気と合わない異端だった俺は、事件を起こす前に海外へ出た。


 我ながら英断だったと思う。


 ああ、そういや最期は、助けた子供に殺されたんだったか。


 殺された?じゃあ、今のこの状況は何だ?


 混ざって、別の記憶も思い出されていく。


 石造りの屋敷。冷たい目をした男。読み上げられる罪状。閉ざされる門。


 知らない記憶だ。なのに、身に覚えがある。


 濡れた髪をかき上げた手が、目に入った。


 細く白い上品な手だ。


 女の、身体?


 ――俺は、誰だ?


 いや、俺は俺だ。それは分かる。


 分からないのは、この身体だ。


 そう思った瞬間、視界の端に半透明の板が浮かんだ。


 名前。称号。数値。スキルの一覧。


 ステータスボード?


 こんなモノが出るって事は、転生したって事か。日本のライトノベルじゃあるまいし。


 感慨はない。代わりに、別のことが頭に浮かんだ。


 これ、他人に見られたらマズいな。


 情報が筒抜けだ。もっとも、他の人間もこうやって見れるかどうかは怪しいが。


 得体の知れないものを持っていると知られる。それがどれだけ厄介か、想像はつく。


 ボードの存在を、隠すべきものとして頭の隅に刻んだ。


 あらためて、目を通す。


 スキル欄には、数字がふたつずつ並んでいた。



 交渉術  1(5)

 剣術   2(6)

 馬術   2(2)

 作法   4(2)

 舞踏   6(2)

 歌唱   8(3)

 言語知識 7(5)

 体術   1(8)

 ……



 左が、この体の数字。括弧の中が、俺の数字。リストは結構長く並んでて全部見るのは後だ。


 舞踏6、歌唱8、言語7。見事なものだ。誰かに愛でられるためだけに磨かれた数字って感じだな。


 身体が持ってる体術は、1。


 俺の方は、8。


 体は令嬢、中身は俺。ご丁寧に数字で見せてくれるわけだ。ただ、この数値の差だと感覚のズレが生じそうだな。


 元々俺は剣道もやっていたし、空手や柔道、躰道なんかもやっていたからこの数字は納得だ。

 問題はこの身体で使った場合、どの程度再現できるかという一点だな。


 拳を握ってみる。力が入らない。いや、入ってるんだろうけど全く足りない。


 魔法適性の欄に目を移した。


 コモンマジック――可。俗に言う基本魔法・生活魔法などとも呼ばれる。


 ソーサラーマジック――適性あり。貴族の血統で魔法適正(高)。攻撃に関する魔法が多い。


 この記憶を引き出す感じはまるでウィキペディアを検索している様だな。

 魔法が使えるのは面白そうだ。武器を携行しなくても戦う手段があるのはいい。


 だが、順番を間違えるな。


 魔法が使えようが、この体では長く立っていられない。


 何にしてもまず体力だ。継戦能力が低くちゃ火力があったって大した意味が無い。


 走れる足と、立ち続けられる芯を作る。剣も魔法も、その上に乗せていく技術だ。

 まずは土台作りからだな。


 俺は立ち上がり服を絞った。


 粗末な麻。刺繍(ししゅう)もない、飾りもない。この体の記憶にある衣装とは、比べるべくもない服だ。


 少し離れた岩場に、(かばん)が引っかかっていた。落ちる時に一緒に流れたらしい。


 中を(あらた)める。


 なけなしの金。この身体の記憶はその辺は疎い様でこの金で何が出来るか分かっていない様だ。


 それと、短剣が一本。


 (さや)を払って、刃を光にかざす。


 ……悪くない。使えるだけありがたい。


 手入れはされていないが、(はがね)はしっかりしている。護身には十分だ。


 鞘に戻して、腰に差した。


 ひとまず、丸腰は脱したな。


1話・了

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!


「続きが読みたい!」「面白かった!」と思っていただけたら、

ページ下部にある**【★★★★★】評価や【ブックマーク】、【いいね】**を押していただけると更新の励みになります!


特に★評価とブックマークは作品のランキングに直結するため、応援していただけると本当に嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ