↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/44

3-15 夏祭り

 バスボム闇鍋事件が立て続けに起こった数日後。カナタはカーテンが締め切られた寒い部屋で目を覚ました。

「あーよく寝た。寝る子は育つ~」

 そう口ずさんだ傍ら、ニコーラーはAIであるにも関わらずおでこに怒りマークを浮かべていた。

『あのですね……よくネたって、イマナンジだとオモってるんですか!? 一五ジですよ一五ジ! イッシュウマワってフケンコウです!』

「そんなに怒らないでよニコーラー。エイタたちとお盆記念のオールナイトFPSしてただけだから」

『オコるヨウソしかありませんが?!』

「……でさ、これ何?」

 ベッドから起き上がったカナタは、勉強机の上にチェンジガンと共に置かれていた「映画のフィルムらしきもの」を手に取る。

『それは『バトルフィルム』です。ニシュウカンマエのシャークデーモンとのタタカいをブンセキし、カナタサマのアラたなセンリョクにしました』

「へぇ~あの時の……か」

 カナタの脳裏に浮かんだのは、シャークが死に際に放った「助けて」の声。死を恐れた、今にも泣き出しそうな顔。

 彼はきっと、魔王に仕向けられ、望まぬ形でデーモン怪人になったのだ。

 その事を考えてしまうと、手にかけてしまった申し訳無さで、ヒーローとしての自分の価値を疑ってしまうのがカナタだった。

 でも、失われた命は戻らない。だからカナタは、デーモン化された『中の人』を救うためにも戦うことを決意したのだ。

『セッカクです。チェンジガンにせっとして、ヘンシンしてみてください』

「そんなギミックあったっけ……」

 目線をフィルムからチェンジガンに戻した。すると、撃鉄部分が大きく伸び、フィルムがセットできる形状に、いつの間にやらなっていた。

「あったかなこんなパーツ」

『イマシンゾウしました』

「なんだそうだったのか。考えて損した」

 首飾り、もといチェンジャーを身につけたカナタは、チェンジガンにフィルムをセットし、オーブリンク。すると音声が変わり『オーブリンク・アーマード』と鳴った。

 いつも通りスライドを三回引き、前に向かってトリガーを引いて変身した。

「あまり変わって……た」

 ほとんどの部分はいつものコスモなのだが、唯一右腕に、ホホジロザメを象ったパーツが着いていた。

「すげぇ!  あ、そうだ。カーレースデーモンと、ジェイク保安官の時のはある?」

『ありますけど、ワタせるのはアシタイコウですね』

「そ。まーでも、これでパワーアップができたわけだし、ありがとね」

『どういたしまして。さあ、キョウのカツドウをハジめましょう』

 その時、部屋のドアがノックされ、カナタが応える間もなく開かれた。

「よーカナタ。起きたか」

 タイチだった。

「おはよー……おそよー父さん」

「で、お前はなんで変身してるわけよ」

「ニコーラー……例のAIがパワーアップアイテムくれてさ。お試しに、ね」

「なるほどな。さあ、変身は解いた解いた。そろそろ行くぞ」

「行くってどこに?」

『ナツマツりですよ! ちゃんとワタシのすけじゅーるキノウにハイってますからね!』


 **********


 夏祭りの会場は駅前の商店街。

 商店街とはいえ、並んでいるのは個人営業の飲食店ばかりで、アーチ状の屋根もない。

 そんなところに、屋台がひしめき合っている。

 大勢の市民が通りをごった返す中、一家で夏祭りにやってきたカナタは、「花より団子」ならぬ「団子より花」状態だった。

「マキナー笑ってー」

 屋台裏にある駐車場の一角で、カナタは浴衣姿のマキナをカメラに収めていた。

 マキナは、街灯の下でニッ、と笑った。それと同時にシャッターは切られる。

「どう? 可愛く撮れてる?」

「撮れてる撮れてる。公式から供給が無いなら作ってしまえ浴衣ビジュ。ほんと神がかってるわ……ロック画面にしよ」

 その時だ。カナタの背中に温かい何かが触れた。振り返ると、レジ袋に入った焼きそばを押し当てているタイチがいた。

「ほれ。買ってきたから食うぞ」

 タイチの後ろには、マキナと同じように浴衣を着たセルアたちがいた。ちなみに、春晴家の三人は普通の服である。

 一同は駐車場の端っこに座り込んで、焼きそばをかきこむ。

「やっぱみんな似合うね、浴衣。母さん、ナイス采配」

「ふふふ。レンタル浴衣のチラシに感謝ね」

「まー俺も、日本文化にはなるべく触れてほしいしな。こいつらには」

 そんな会話をしながら焼きそばを完食すると、今度はカナタとマキナも連れて、一同は夏祭りを練り歩く。

 道中、セルアはメダカすくいの屋台の前で足を止めた。

「やっていかないか? メダカすくい」

「あり。どうせなら勝負しようよ。多くすくえた方が勝ち!」

「水槽はでっかいのがあるから、遠慮無くやっちまえー」

「なら、私も参加させてもらいますね」

 ────子供たちとお祭りで、何度もやっていますもの……!

 こうして、春晴家メダカすくいバトルに参戦するメンバーが出揃った。

 さあ、ポイを受け取って……レディーファイッ!


 そして五分後。結果は・・・


 ラーシャ:二〇匹

 セルア:一七匹

 カナタ:三匹


 合計四〇匹の大家族を、春晴家は飼育することになった。


 *********


「まさか、言い出しっぺの俺がドベになっちゃうとは」

「くしゃみしちゃったから、仕方ないわよ」

 マキナが慰めるように言った。

 そして、そう言われた次の瞬間には、カナタは唐揚げ棒を手にしていた。

「はへ(だね)」

 当てもなくフラフラと、七人で歩く中、今度はマキナが射的屋台の前で足を止めた。

「狙撃ゲーム……いいわね。やってこよっと」

「おーう頑張れよー」

 ゴルダンは、プラコップに注がれたビールを飲みながら送り出した。

 そしてカナタは、射的の屋台の中にあるものを発見したようだ。

「あのフィギュア……俺がこの前中古屋で買い損ねたやつ! この人たちが買ってたのかぁ。マキナ、三段目の右から二番目の箱狙って」

「えっ、私花火欲しいんだけど」

「ならそれでヨシ!」

 ────推しがそれがいいなら、オッケーです!

「ま、いいわよ。五発あるし……ねっ!」

 マキナはしっかり景品の花火の的を狙って、トリガーを引いた。

 結果は、あと数ミリのところで外れた。

 続けて二発目。今度は当たった。だが倒れなかった。

 三発目。真ん中に命中し、倒すことができた。

「はい、お嬢ちゃん花火ね」

「ありがとうございます。じゃ、残りはカナタが欲しいぶんに……」

 四発目のトリガーを引く。当たった。的のど真ん中に当たったはずだ。なのに、倒れなかった。

「何故!?」

「やっぱり、重い景品は倒れにくいのかな……」

 ついに最後の五発目。一か八かで同じ場所を狙ってみる。すると・・・

「はい。お嬢ちゃんフィギュアね」

 あっさりゲット。

「ありがとうございます。えーと、なになに? 『MAKINA ARLOW』私じゃない」

「あ、バレた? これ限定品なんだよ。暗いところで目が光る」

「私そんなこと出来ないんだけど!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。