2-4 殺し屋の到着
今もなお異空間を漂い続けている魔王城。科学者、スピカ・ターヴォがいたのは先日の会議室ではなく、魔王城の中心部かつ最上部に位置する玉座の間だった。
「魔王様、例の『鍵』が完成しました」
彼女が差し出した手には持ち手が禍々しく歪んだ鍵があった。
「ほう……これが地下都市の奴らが開発を進めてきたという『鍵』か。よくやったぞ、スピカ」
「いえいえ。そんなことはございません。開発も佳境だったものをくすねて改造しただけですから」
「そうか。では使ってみようじゃないか。ジョンソン!」
魔王に呼ばれたジョンソンはスピカの横にある扉から大剣を携えて入ってきた。
「……お呼びでしょうか」
「ああそうだ。ジョンソン、お前に任務だ。世界〇〇〇一にある地球の七王子という街にいるセルア・レイズとその一派を殺してこい」
「はっ」
「スピカ、『鍵』を」
「『世界〇〇〇一 天の川銀河 太陽系第三惑星地球 ユーラシア大陸 日本国 東京都 七王子市』開錠」
そう言ってスピカは目の前の何もない場所へ鍵を差し込む動作をすると、なんと空気中に鍵が刺さったのだ。
そこからメキメキと静かな音をたてながら扉が生成された。
「さあ、行ってらっしゃい。ジョンソン。ってそうそう、これを」
スピカはポケットからもう一つ鍵を差し出した。
「奴らの近くに着いたら『荳也阜縺ョ迢ュ髢 魔王城』と唱えて扉を作りたい場所に突き刺しなさい。そうすれば強力な助っ人を出せるから」
「……そうか」
鍵を受け取ったジョンソンは扉をくぐり、カナタの住む世界へと旅立った。
「では魔王様、私は彼らの最終調整に入りますのでこれで」
「決戦の日は近い。急げよ」
「承知いたしました」
スピカは礼をして玉座の間を後にした。
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扉をくぐったジョンソンは深夜の大通りの真ん中に出た。その後ろで扉はボロボロと消滅していっている。
「ここが……異世界というもの……か……」
街を見まわしていると、向こうから大きな排気音が聞こえてきた。暴走族だ。
「どけどけぇ!」
そう叫んだのは先頭を走る三輪バイクにまたがった暴走族だ。このままではぶつかってしまう事を悟ったジョンソンは、大剣の鍔部分に付いているボタンを押して刃を回転させ始めた。そう、彼の持つ大剣はチェーンソーだったのだ。
ジョンソンは自らの真横を走り抜けるバイクに乗る不良たちの首を一振りで切断した。
制御を失ったバイクは建物の壁や中央分離帯、バイク同士で衝突して停止し、切断された不良たちの頭部は道路に転がっている。
────それよりここは……七王子で会っているのか……?
そう思いつつ見あげた先には青看板があった。
「七王子……ここからまっすぐ行けばいいのか」
確認したジョンソンは看板通りに道のど真ん中を歩き始めた。二キロほど歩いた頃だろうか、今度は深夜パトロールをしている警察官に見つかった。
『お兄さん、道路の真ん中歩かないでくださーい。危険ですよー』
パトカーのスピーカーで警告された。だがジョンソンは聞く耳を持っていない。
『お兄さん聞こえますかー? 道路、危ないですので寄ってください』
するとジョンソンはパトカーめがけて走り出した。繰り返される警告に腹が立ったのだろう。フロントガラスに飛び乗ったジョンソンはチェーンソーを起動し、それをそのままフロントガラスに突き立て、警官を殺害した。車内は血で真っ赤だ。
「……うるさい」
殺した矢先に、スピカから魔法石を介して連絡があった。
『ジョンソン、「鍵」にどうやら不調があったようでね、出現場所の設定にずれが生じてしまった。そんな訳で、悪いが君の今いる場所はおそらく「ニ鷹市」だ。七王子ではない』
「……どれくらい……離れている」
『君の今いる場所から直線距離で二五キロ。ひたすら西へ歩けばその内着くから頑張ってくれ。それじゃ』
ここで通信は切れた。
「……フン」
そこからまたジョンソンは歩き続けた。途中、腹を空かせた彼は二四時間営業のスーパーを見つけ立ち寄った。ここでは夜勤の店員三名を殺害し、食べ物を奪ったのだった。
日が昇り、人々が起きてくる時間帯になると
「暴走族頭部切断事件」「警察官パトカー殺人事件」「スーパー強盗殺人事件」
の三つの事件は朝のニュースで特集が組まれ、全国で大々的に放送された。




