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生贄として嫁いだはずが生き神さまに溺愛されてます!?  作者: 夕凪 瓊紗.com


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18/19

【18】side:棕櫚




――――side:棕櫚


すうすうと寝息を立てる牡丹を確認し、俺は眷属と落ち合う。


「安心しろ、牡丹は寝ている」

「ああ。知っている」

ぶっきらぼうなのは相変わらず。白鬼はふんと顔を逸らす。


「覗くなよ、もう人妻なんだから」

「……」

無言の、圧。


「過保護だぞ」

相変わらず妹離れできていない。

「お前が言うか」

悪態を吐く白鬼に苦笑する。


「こっちだ」

俺たちが入ったのはこの世のどこでもない、異界と呼ばれる場所だ。


「……夢幻門。夢の中か」

「ああ。アイツ調子に乗って他の門にちょっかい出すからな。いつも他の門守たちからの苦情がすごい。今回は夢幻門にも迷惑をかけた詫びをかねて」

そう嘆息すれば。


「ま、手のかかる子ほどかわいいって言うけどね」

俺たちの前に現れたのは真の姿は猫耳しっぽの女性で毛色は金茶だ。


「お前にとってはそうなの?夢」

「まぁねぇ。地獄門は分からないけど。でも白鬼門は同じかも」

「いやあながち地獄門も……」

白鬼を見やれば。


「何だ」

あからさまに威嚇はしてくるが……地獄に関連する鬼同士、どこか気心が知れているような気がするんだよなぁ。


「それよりもせっかく夢に夢幻門を借りたんだ。俺なら好きに開閉できるし眷属ならば入れられる」

「アイツもか」

そう白鬼が吐き捨てれば、その場にもうひとり現れる。牡丹によく似るが性別は男。その顔を見て白鬼が渋面を作る。


「その顔を今すぐやめろ」

「年長者に向かって態度がなっていないんじゃないのか?」

クスクスと口を三日月のようにして笑う様は本鬼(ほんにん)から見ても決してしない表情である。


「きっひひひっ。そのものの欲望を形どるのもまた我が力」

「ならばそれは誰の欲望だ」


「ひひひ、ひひひ。誰だろう。試してみたが違ったよ。彼女はそれを望むと思っていたのに」

「牡丹のことか。貴様……死んだ人間を望むと言うことがどう言うことか分かっているのか」


「お前がいくら経ってもその面を取らぬからだろう?だから遊ぶくらいは許されるじゃないか」

「ふざけんな!これは……牡丹が幸せになるためのものだ」

白鬼が拳を震わせる。


「兄の死に囚われずに棕櫚と幸せにか?」

おどけたように七門が首を傾げる。


「あの子はもうそれを乗り越えた。だから邪魔するな。あの子も死んだ俺など望まない」

白鬼は力強く足を踏み出す。


「そうだなあ。あの子は望むと思っていたこれを望まなかった。望むのならば叶えてやっても良かった」

「そんなことをすれば牡丹の命が……っ」

「望むのはあの子ではないよ。適任がいるだろう?」

ニヤリ、と七門が笑む。


「まさか……あの女」

「あの女ならば七欲門できっと息子を望むだろう?その代償にあの女は地獄門に即座に引きずり込まれるだろう。代わりにあの子はまた出会える」

「馬鹿馬鹿しい!俺がここにいるのに、誰が俺になるつもりだ!まさか……お前が?」

「それも愉快愉快。牡丹は愛(う)い娘だ」

「お前が牡丹の名を呼ぶな!」

しかし七門は相変わらずどこ吹く風だ。


「何のためにそんなことをっ」

白鬼が憤り七門に詰め寄ろうとするのを咄嗟に止める。


「七門、お前はどうして牡丹に近付いた。お前は気まぐれでどうしようもないやつだが、ある行動だけは一貫している」

彼に名付けた名を呼びながら静かに告げる。


「きっひひ。それは?」

七門は主がそれを言い当てるのを知っているようにケラケラと笑う。


「お前は俺に近付くもの、関わるもので相応しくないと見なしたものを七欲門に誘い入れ欲望を叶えて地獄門に落とす」

「それが俺、ずっとそれが俺」

クスクスと笑う七門は悪びれた様子もない。しかし今までの代では違ったんだ。

今までの七欲門とは異なる行動に時折ハテナを頭に浮かべる。


「実際失踪した花嫁の中には当主の花嫁の座を狙ったり、青霧のほかの花嫁や異能者を陥れようとする魂胆のものもあった」

「お前は欲望専門で何でも見通すからな」

そのものの真なる欲望を熟知しているわけである。


「ひひ、ひひひ。欲に溺れて堕ちたのは自業自得」

ニタリ、と気味の悪い笑みを見せる。


「確かに情状酌量の余地のないものもいるが……牡丹は違ったはずだ」

「きっひひひひ。ああ彼女が求めたのは欲望ではない不思議なものだ。その欲を俺に望まずに自ら手にすることを選んでしまったよ」

七門はふうと溜め息を吐く。


「ならば何故何度も牡丹に近付いた。俺が知らないとでも思ったか」

七門はひとの欲望を操る。欲望の本当の在り処は……ひとの心の中だ。


「ひひひ。独占欲、いいねぇ、ああ、いい」

代々に比べてコイツ、何か変態が加速してないか?いや、元々だったか。


「それは棕櫚がその鬼を拾ったからだよ。鬼は妹を守るため、現世への未練と怨念で怨鬼になりかかっていたそれを主が拾うとは」

七門は少し不満そうに嘆息する。


「俺は地上の人間の祈りを一番近くで聞く」

腕を組み、七門を見据える。


「その祈りを叶えるかは別」

それもごもっとも。


「だが拾うと決めたのは俺だ。俺は欲しいと思ったから手に入れたまで。お前が何と言おうと手を出すならケツ叩いてお仕置きだ」

「ひひひ……ひひひ。コワイコワイ」

恐いと言いながらも七門はケラケラと笑うのみ。白鬼は布面の下で怪訝な表情を隠せない。


「でも安心するといい。彼女に七欲門は相応しくない。彼女は俺が欲望を与えればきっと怒るだろうね」

「当然だろ」

白鬼が吐き捨てる。


「ひひっ。よく分かっている。それじゃあ話は纏まったろう?おれは次なる獲物を探しに行くよ。ツケもあるしね」

「待て!その前にその顔をどうにかっ」

白鬼が言い切る前に七門は姿を眩ませる。


「おい……アイツにあの姿をやめさせる方法はっ」

白鬼が布面の下で俺を睨み付ける。


「飽きればやめるだろ」

「……っ」

白鬼が沈黙する。

しかしアイツが牡丹の前で素顔を晒したのも気が付いている。

だからこそ、アイツは気に入ってしまったんだよ。


だからアイツが白鬼の前でそのお気に入りの姿に戻るのは……現状不可と言う結論であった。


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