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Log: 11

Log: 11


≪SEAL食料配布場≫に入ると、深夜にもかかわらず混雑していた。


医療部隊と戦闘兵が、

制服のまま食堂の半分の席を埋めている。


調理アンドロイドと配膳サービスドローンが高速で稼働している。

荒々しい調理音と、空腹を誘う香りが満ちている。


周囲は通常より会話音量が高い。

戦闘後のアドレナリン分泌の持続と判断。


「あーー! 桐生!」


見知った二人が視界に入る。間宮と長谷部だ。


二人ともSEAL兵の能力保持者。


先月、交際契約を交わしたペアだ。


「桐生、こっち来て飯食おうぜ」


彼らは上層居住区の住民だが、

戦闘後は二十四時間稼働区域で食事を取ることが多いらしい。



桐生は私を見る。

判断を委ねている。


「どうする? 一緒に食うか? 嫌なら二人で食う」


私は反射的に答える。


(桐生の親友である彼らを無視して、

二人で食べるのはマナーに反する)



「桐生。用事を思い出した。食事は三人で行うとよい」


桐生はため息をつき、私の頭を軽く叩いた。


「そういう”構ってちゃん”は止めようねナズナちゃん。一緒に飯だ」


「……彼らは嫌がる」


「誘ったのは向こうだ。いいから、堂々としてろ」



桐生はわたしの手を掴んだまま席へ向かう。


「こいつも一緒で良いよな?」



間宮と長谷部は一瞬だけ黙り、それから笑った。


「ああ、もちろんだよ」


「うん。一緒に食べよう」



私は椅子に座らされる。


奥側。逃走経路が一方向に限定される位置だ。



配膳ドローンがIDを確認し、メニューを展開する。




桐生が私に確認する前に注文する。




「ラーメン肉大盛り。こっちのチビガリは梅おにぎり。


ドリンクはプロテインヨーグルト一つ、日本茶二つ」




私は発言の機会を失う。




「あ、アイス食うか?」


「……チョコミント」


「チョコミント一つ追加。以上だ。よろしくねドローン」


<オマカセ(*'▽'*)b クダサイ>


配膳サービスドローンは陽気な機械音を出しながら、注文処理に移行した。


三人は会話を続ける。


話題の変換速度が速い。


会話理解の処理が追いつかない。

わたしは沈黙を選択する。


内容は分からないが、時折頷く。

そうすることで、社交性と共感性を得る。



配膳ドローンが食事を運んでくる。

私は黙っておにぎりを口に運ぶ。


(……美味い)



桐生が、私の二つ目のおにぎりを奪う。

最早、予測済みの行動。


「ラーメン食うか?」


「……問題ない」




アイスを口に入れる。


冷却刺激。甘味。脂質。


非常に好ましい味覚反応が発生する。



次の瞬間、桐生がスプーンで大きく削り取って食べた。


エメラルドグリーンのアイス山が崩壊してしまった。


(……なんてことだ)


彼はこちらを見ている。


反応を観測している。

桐生は、ニヤリと悪意のある笑みを浮かべた。


――挑発行動。



「ナズナちゃん。92%ってどう思う?」


「高い数値だ。比較対象によるが……」


「俺のログにはないから、ナズナのログを見たらいい」



桐生はまたアイスをすくい、

スプーンを口に咥えたまま、ニマニマと笑う。


私は数秒考え、理解する。



――あの通知だ。




SEALの適合率。


私は答える。


「……わたしもわからないな」


わたしは桐生のラーメンを奪い

反撃した。


わたしは、麺の下に

隠された秘宝チャーシューを全て平らげた。


「あー! 俺のラーメン!」

「わたしのログには何もない」


間宮と長谷部が視線を交わし、

わたしと桐生のやり取りを見て噴き出した。



二人の距離は近い。会話は少ない。


それでも成立している。



彼らは恋愛を経て

交際契約を交わした二人だ。


数値の提示もない。

適合率も確認していない。


それでも、彼らの関係は安定していると判断できる。


(幸福値が高そうで何より)


私は初めて認識する。

相性値は関係の証明ではない。


だが、無関係でもない。


「桐生も早く、いい人が見つかるといいね」


長谷部が笑いながら、桐生を揶揄った。



私は同意して頷く。


彼には伴侶が必要だ。

情動の強さ、危険選好、行動傾向――


支援個体がいれば生存率は上昇する。



――その瞬間。


桐生が、私の頭を軽く叩いた。


「そうだな」


桐生の声は穏やかだったが、先ほどまでの調子とは違う。

表情がいつもより沈んでいた。



私は数秒考える。

行動の意図が特定できない。


――なぜ叩かれたのか、分からない。


わたしは首をかしげながら、再度思考を巡らせた。


(理解不能な理不尽な暴力だ)


桐生と目が合うが彼は、まだ不機嫌を露わにした表情だった。


≪SEAL食料配布場≫の出入口付近の人が

騒めきはじめる。


長谷部と間宮が何かに気が付いた。


「ねぇ、あれって……」

「……なんで中間層区域に、天上層の人間が来るんだ?」


桐生は、何故か気配を消すように、

低く座った。


彼の行動はまったく理解できない。

一体、なんだというのだろうか……?

~ふんわり観察メモ~

≪SEAL食料配布場≫


配膳ドローンは忙しくなると

「ラーメン」と「水」しかオーダーを受けつない場合がある。


彼らを怒らせてはいけない。

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