第十三話 これは聞いてない!
【駒沢悠人視点】
俺様の名前は駒沢悠人。
物心付く頃には父ちゃんに母ちゃんもろともお金だけ渡されて捨てられた。
物事が少しわかるようになってからわかった事だけどうちの父ちゃんは、妊娠限定の愛人契約ってのをお金が困ってる複数の女性と交わしてるらしく、うちの母ちゃんも父ちゃんの愛人だったらしい。
俺様が男の子だったからもしかしたら正妻にしてもらえるかもと欲を出した母ちゃんは、ボロ雑巾のように捨てられた。
母ちゃんは、俺様を育てるために貧乏な生活は送りたくないって、朝も夜も働いてて、俺様は毎日1人で遊んでいた。
そんな時だ…綺麗なお姉ちゃんに話しかけられた。
「君、駒沢悠人君だよね?いつも1人で遊んでて寂しくない?良かったらうちの幼稚園に来る?」
「なんだよババア。俺様が幼稚園なんて行くわけないだろ?」
「え〜。楽しいよ?1人で居るよりは騙されたと思って、ほら」
勝手に手を掴まれて連れていかれる。
「おい!こ、これ犯罪だぞ!ゆ、誘拐って言うんじゃ」
「はいはい。言って聞かない子は…それにどうして私が君の名前を知ってると思う?君のお母さんから君のこと頼まれたからなんだよなぁこれが」
はっ?
母ちゃんが?
幼稚園に通わせる金が勿体無いって言ってた母ちゃんが?
それから俺様の人生は大きく変わった。
愛美とかいう綺麗なお姉ちゃんのナイト気取りの龍牙とつくし。
普段は地蔵のように静観してるのに龍牙とつくしが暴走しそうになったら身体を張って止める武則。
愛美の後ろを付いて回る日向。
幼稚園の時間の大半を寝て過ごす大和。
好司に付き纏う美結。
今日のおやつにどら焼きを要求する茜丸。
毎日のように木を買って緑をとか言い出す信太。
俺様の退屈な時間に確かな彩りが生まれた。
その日も倉間幼稚園に居た。
急に現れた六芒星の魔法陣に吸い込まれて、愛美に全員抱きしめられて、気が付いたら変な世界。
俺は真っ先に辺りを見回して母ちゃんを探した。
でも目の前には、王冠被ってふんぞり返る知らないオッサンが1人、後は愛美と倉間幼稚園の皆んなしかいない。
愛美が呼ばれて、ペンと紙を持たされて、ペンが勝手に動いて何かを紙に書く、それをみたオッサンが舌打ちするのが聞こえた。
次に龍牙が呼ばれて、止めに入った愛美の頬が打たれる。
あのオッサン、愛美のこと虐めていいのは俺だけなんだぞ!
絶体絶命の俺様たちの前に女神が…。
そのメイド服を着た女神は圧倒的な力で、愛美のことを殴ったオッサンを殴り飛ばして、俺様たち全員を抱えて、洞窟に避難させてくれた。
そしたら、今度は喋る兎?
もうわけがわからない。
ここが異世界だと説明されて、俺は母ちゃんも巻き込まれてるんじゃないかと気が気じゃなかった。
父ちゃんに捨てられた母ちゃんのことを守れるのは俺様だけだ。
でも、この考えは無謀だったことは直ぐにわからされた。
ビスマルクダンジョンとかいうここから外に出ようとした時、目の前には鎌を持った死神が…。
俺様の首は呆気なく刎ね飛ばされた。
その時…。
『強制スキル人形身代わりを発動します。表示される制限時間内に破損部位を見つけ出し、速やかに嵌め直してください。そうすれば、今起こったことを無効することができます』
はっ?
これがさっき説明を受けたギフトとかいうやつ?
俺様のギフト強すぎじゃね?
だって、死んでも蘇るって事だろ?
その制限時間とやらは…はったった1分!?
やばいやばいやばい、俺は腕を外して、腕だけを動かして、刎ね飛ばされた首を持ってくる。
幸いどこに飛ばされたか分かってたから制限時間ギリギリまでには、嵌め直すことができた。
無敵の俺様を簡単に殺して見せた死神に対して、俺様の女神は圧倒的武力であの世へ送り返した。
それを見て、俺様が師事するべきはこの人だと直感した。
「か、カッコいい!弟子にしてください!姉御!」
だから、俺様の口から自然にそんな言葉が出た。
この後、師匠のお陰で愛美とも仲直りできた。
俺様は愛美が母違いの実の姉だって知ってた。
いや、それを知ったから仲良くしたらダメだって意地張ってた。
俺の素直な気持ちを聞いて、師匠も俺様を弟子にしてくれた。
「師匠!本日も宜しくお願いします!」
姉御呼びは怒られたので師匠と呼ぶ事にした。
「昨日、どこまでやりましたか?」
「確か、俺の生存能力を上げるために人形状態で動ける時間を増やすと」
「そうでしたね。では今日は、綾子にも協力してもらいましょう」
綾子は、防衛部隊の隊員の姉ちゃんで、師匠が鍛えてるらしい。
俺の姉弟子になるのか?
いや、師匠は弟子は俺だけだって言ってるし、違うのか?
「浄瑠璃綾子です。君がメアリー様の弟子?」
「は、はい!俺は、駒沢悠人って言います!本日は宜しくお願いします!」
「うん。それで君のギフトって何?メアリー様が私との相性が抜群だろうって言ってたんだけど」
「俺のギフトは人形変化です!」
「嘘!マジで!やってみて!やってみてよ!」
綾子姉が前のめりで言うからやったら、糸みたいなの付けられた。
「私のギフトはねぇ。人形使いなんだ」
ちょっと師匠!
これは、これは流石に聞いてないです!
あー、腕を反対側に回さないで!
足が変な方向に!
そんなに振り回したら飛ぶ…飛ぶーーーー!
師匠からこの練習方法は間違えてたと謝罪された。
綾子姉は、俺のことを獲物を見るようなキラキラとした目で見ていた。
師匠、お願いだからその怪物をもう近付けないでくれぇぇぇぇぇ!!!
そうか、これが昔の俺がしてきたことの報いか。
ガックリ。
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それでは、次回もお楽しみに〜




