第九話 メアリーの弟子
【メアリー視点】
坊ちゃまの優しさを無碍にして、エレベーターで逃げるだなんて、躾のなってないガキですわね。
親の顔が見てみたいとはまさにこのこと。
それでも助けようとなさる坊ちゃま、あぁん…なんて尊いのでしょう…それだけでキュンキュンしちゃいますぅ。
今の私は坊ちゃま成分大量補給を終えた天使状態、やさぐれのヤンキー状態じゃありません。
「テメェ、何者だ!」
ホプキンスにしては、珍しく怒ってる?
何かあったのでしょうか?
坊ちゃまも先程からそわそわしてますし。
エレベーターが開いて私の目に飛び込んできたのは、胴体と首を切り離された先程坊ちゃまに生意気な口を聞いたガキとなんか全身黒服に包まれた怪しい魔族?
成程、理解しました。
私の愛する坊ちゃまのダンジョンにカチコミをかけにきたって事ですか…自分の身の回りでは悲しい事は起こってほしくないと思ってる坊ちゃまの心をズタズタにして、この魔族は殺します。
跡形もなく。
あーあ、せっかく天使状態でしたのに、もうヤンキー状態に逆戻りかぁ。
まぁ良いや。
また後で坊ちゃま成分を大量補給させてもらおっと。
「ホプキンス、頭を下げろ!今のアタイはめちゃくちゃ機嫌が悪りぃぞ」
アタイの言葉でホプキンスが頭を下げる。
カチコミかけてきたクズが何か言ってるけど雑魚の言葉なんて、聞く耳もたねぇ。
アタイの首を一刀両断だぁ?
「できるもんなら、やってみな雑魚!」
雑魚と言われて激昂するような小物が、上には上がいるって学びやがれ!
アタイのケリに力負けした相手の鎌が吹き飛ぶ。
アタイを小娘だの、女に力負けしただの、そんなチンケな奴が紳士を名乗るんじゃねぇクズが!
坊ちゃまの優しい心を傷付けた罪、支払う覚悟はできてんだろうな雑魚?
「爆裂拳!」
爆裂拳、この技は相手の内臓を爆破させるような連撃を叩き込む、まぁアタイがやさぐれてた時に絡んできた奴に連撃を叩きこんでた時の動きをそのまま落とし込んだら、爆破するような拳になっちまった。
まぁ、坊ちゃまを守れるならアタイは何処までも人を辞めてやるよ。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アタイが殴るたびに身体が膨張し破裂する様は、アタイが大好きだった日本の漫画を彷彿とさせた。
「汚ねぇ花火だ」
だから、不意に口から出た。
「か、カッコいい!弟子にしてください!姉御!」
何だ、お前死んでなかったのかよ。
まぁ、坊ちゃまが罪悪感を抱かずに済んで良かったぜ。
って、このガキ今なんつった?
弟子だ?
あんな雑魚に一撃で首飛ばされるようなクソ雑魚が?
「テメェみたいな人様に迷惑かけるだけの弱いガキなんざ弟子にする価値もねぇ」
先ずは精神力から磨いて出直してきやがれのつもりで言ったんだが。
「師匠がそう言うなら、今日から真面目人間になります!だから、僕を弟子にしてください!」
いや、口先の言葉なら誰だって言えるってんだ。
先ずは、行動でだな。
「良かった。首と胴体が離れてたから死んじゃったかと思ったじゃない悠人!」
ほれ、テメェが毛嫌いしていた先生だぞ。
いや母違いの姉か。
で、坊ちゃまの前世の妻…はぁ。
堅物眼鏡が見守ろうとしたのがわかるぐらい人間できてんだろうが!
あーもう!
先ずは態度でさっき言った言葉を示してみるんだなクソ雑魚。
「愛美先生、姉ちゃん心配かけてごめんなさい」
へぇ、クソ雑魚にしては素直に謝れんじゃねぇか。
坊ちゃまの前世の妻…言いにくいからアタイがやさぐれてる時の呼び名は愛美でいっか。
天使の時は様付けで。
その愛美も目をパチクリさせてるじゃねぇか。
「ど、どうしたの急に素直になって」
「俺、母ちゃんのためにも姉ちゃんとは敵対しなきゃって意地張ってた。母子共々アイツに捨てられた仲間なのに」
「馬鹿ね。その貴方のお母様から貴方のことくれぐれも頼むって頭を下げられたの。それにアイツが悪いのであって、貴方たち母子が悪いわけじゃない。私には気を張る必要はないのよ」
「うん。うん。俺。俺。母ちゃんもこの世界に招かれてるかもしれないって助けなきゃって、片意地張ってた。あんな訳のわからないやつに首切られて、これで死ぬんだって、そしたら身体を人形にする技が発動して、必死に手で首を引っ付けて解除したら何事もなく治ってた。その時、初めてここは現実世界じゃないんだって心から認識したんだ」
「そうね。でも、不便よね。自分がどんな能力を持ってるか分からないなんて…」
「はっ?んなもん、ステータスオープンって言えば1発で解決だろ。な?堅物眼鏡?坊ちゃま?」
どうして、2人とも目を背けるんだ?
まさか、そんな肝心な事を集めて最初に話してねぇのかよ!
坊ちゃまはともかく堅物眼鏡さんよぉ。
テメェはそういうこと先に言ってやれよ!
それが仕事だろうが!
さっきまで恐怖で顔を引き攣らせていた子供達も口々にステータスオープンって呟いてる。
おいおい、しっかりしてくれよ!
己がどんな能力か知らなけりゃこの世界で何を為せるのかもわからねぇだろうが!
というか愛美の奴は驚いてねぇな。
「すみませんメアリーさん。私もうっかり子供たちに自分の能力の確認方法を教えていませんでした」
愛美は知ってたのかよ!
「まぁ、うっかりもたまには良いんじゃないでしょうか」
敵を排除し、すっかり天使状態に戻った私。
「そうだね。いつも花瓶や皿を割るメアリーよりはだいぶマシだと思うよ」
うぅ、坊ちゃま…それは言わないでください。
掃除をする際に邪魔な所にあるのが悪いんですぅ。
それに皿も割れやすいのが悪いんですぅ。
いっそのことプラスチックに変えれば割れないと思いますぅ。
にしても、母を助けるためって話ならこの子の師匠をしてあげるのも悪くはありませんね。
せめて、力の使い方だけでも。
「悠人様でしたね。弟子入りを認めましょう。私は厳しいので、覚悟してくださいませ」
「お、お願いします師匠!」
それにしても私が弟子取りですか…大丈夫か自分のことながら心配です。
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それでは、次回もお楽しみに〜




