五回戦 side ベン
どうもアゲインストでございます。
五回戦、ベンの戦い。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
今の俺の心情を言葉にするのなら、度肝を抜かれた、というのが正しい表現になるだろう。
おそらくだが、これはあのケインと同じ感想だろうと俺は思っている。
それほどまでに、フードの男ジョンの戦いはヤバかった。
まるで体の調子を確かめているかのような動き、簡単にやってのけてはいるがあそこまで刃に身を晒して一太刀も当たらないなんてこと、それこそ相手の攻撃を完全に見切っていなければできようはずもない。
それができるだけの実力を、あの男は持っているのだ。
(……)
だが、それがどうしたというのだ。
先の先にいる相手に警戒して、目の前の相手に全力を出せないようじゃ勝てるわけもない。
今俺がすべきことをする、それだけだ。
四回戦の戦いが終わり、遂に俺の番となった。
相手は重斧を使う魔鉄級のマゲン、一撃の重さはフードの男と戦った奴よりも格段に上だろう。
それを扱うだけの筋肉は耐久力でも俺を上回っている。その分俊敏性は若干低いが、ウルフ系の素早い動きに勘で対応できるくらいに空間の認識に長けている。
攻守においてそこまで隙と呼ばれるもののないが、直ぐにでも上位に行けるだけに実力があるだけにその粗暴な性格が邪魔していることが惜しい逸材だ。
協調性のなさが周りとの軋轢を起こし、問題になることもしばしば。
そんな奴が、俺の初戦の相手か。
「悪いなベンさん。勝たせてもらうぜ」
「勝ってからいいな、ブンブン君」
「てめぇっ……!」
斧をブンブン振り回すしか能のない奴、という意味である。仲間内でそう言われて乱闘騒ぎをしていたことを俺が知らないとでも思ったか?
これでもギルドのことには精通してるんだぜ、いろいろと知ってるさ。
怪我をして、いろんな奴を見てきた、見るしかできなかった日々がある。
勿論知ってるさ、お前のことも。
「それでは始めぇえ!!」
簡単に挑発に乗ってきたマゲン、赤い顔になって斧を振り上げ駆けよってくる。
長剣を構えた俺は、そのあとにこいつがどうするのかを知っている。
斧の範囲内に入ったと見るやいなや、両手で豪快に振り下ろしてくる。それはこいつのお決まりともいえる初撃の動きだ。
俺はそれを余裕を持って後ろに下がり回避する。
「おらぁああ!!」
振り下ろしの勢いのまま斧は地面に突き刺さるがそんなことお構い無しに土塊を撒き散らしながら追撃が迫る。
しかし大振り。
軌道も分かり易いもの、足の具合も合わせて余裕で避けられる。
「くそっ! 当たれやこの野郎!!!」
「おいおい死んじまうだろ、脳筋のブンブン君には分かんないかね」
「馬鹿にしやがって!!」
「馬鹿にしてるんじゃなくて、馬鹿だという事実を告げてんだよ」
「ウガァアアアア!!」
よしよし、上手い具合に頭に来てくれて嬉しいよ。そうじゃなきゃお前に勝てそうもないんでな。
怒りでさらに攻撃が激しくなるが、左右振りの単調なものとなっていてこれでは初心者の攻撃を避けるのとそう変わりはない。
そして、
「はぁ……はぁ……っ!」
当然何も考えずにこんな攻撃を繰り返せば、息が上がるのは当然と言えるだろう。
腕もそうだが、重い斧を掴む指先の力も弱くなる。
そんな状態でさらに振ろうとするものだから、
「くぉっ!?」
―――斧がすっぽ抜けそうになるのは、まああり得ない話ではない。
さすがにそのまま取り落とすということはないが、体勢が崩れるのは止められない。
振り下ろしの勢いを殺せず、またもや地面へと突き刺さる重斧。
しかし今度はすぐさまに次の動きに移ることはできない。
そこを見逃す俺ではない。
「……終わりだ」
「ち、ちくしょう……」
首筋に突きつけた剣により、勝敗は決した。
まともな勝負ではなかったが、今の俺ではこの戦い方でなければ人相手に連戦なんぞできやしない。
それでも勝ち上がらなければならない理由が俺にはある。
俺の勝利を告げる宣言を聞きながら、門の方へと帰っていくのだった。
読了ありがとうございました。
感想など大募集しておりますのでよろしくお願いいたします。
評価、ブクマも御一考!




