三回戦から side 警備隊の男
どうもアゲインストでございます。
三回戦は観戦している警備隊の一人からの視点です。
フードの男の実力やいかに。
それではどうぞ。
また、活動報告のほうでも言っておりました短編の方も投稿いたしますのでそちらもどうぞ一読のほど。
とはいっても最初も最初、プロローグみたいなものになってしまっていますがね。
ついに、奴が出てきた。
観客に混じってそいつのことを観察していた俺は、一体どんな奴なのかと思いを巡らせていた。
そのフードの男は、正に誰にも気付かれず、いつの間にかこの街にいた。俺は外壁の警備をしていた門番の一人なのだが、昨日の記録を遡ってもまったくもってこの男が街に入ってきたところを見ておらず、同僚も誰一人こいつが門を通過したところを見ていないのだ。そのため最初は彼の身柄を確認しようとしていたのだがギルド長に諌められ渋々静観していた。
正直言うと、いくらギルド長が言っているからといってこんな素性の分からない奴を街に居座らせるのには反対だ。
代々街の治安に協力してくれているギルドの奴らには頭が下がるが、時々こうした強権じみたことをしてくるのにはまいってしまう。こういったことに対する方針やらでぶつかり合うのは俺からしてみると無駄な労力だと思うからだ。
ギルド長は何かを隠しているのだと思うが、確証もないのに追求なんてできやしない。一警備隊員の俺にはフードの男がいくら怪しかろうと目の前で犯罪を犯していないのなら動くことはできず、こうやって警戒の目を光らせていることしかできない。
それに、ここまでの動向を観察していて分かったことなのだがどうにもこの男はそういった怪しいそぶりを欠片も見せることはなかった。余計な動きをすることなく、休憩のためなのか一度立ち止まるとそこから動くのに十分くらいは掛かっているのだ。そんなことがこの会場に来るまでに三回ほどあった。
一応の用心のためギルドから出てきたあいつを尾行して確認していた俺は、こんな貧弱な奴が大会に出るというのが納得できずに疑惑の目線をこうして向けている。
「それでは三回戦、東ジョン・ドゥニーム対西レイン・コートニー。始めぇえ!」
長い刀身を持つツバイヘンダーを扱うレインに対し、ジョンといういかにも偽名なフードの男は何の変哲もない長剣で迎え打つ。
重量を活かしたレインの上段からの一撃を、すれすれで避けるジョン。
最初はその動きがまぐれに見えていたその動きが、レインの攻撃が激しくなるにつれて俺の背筋に冷や汗をような凄まじいものになっていった。
これぞ紙一重。というのをまざまざと見せつけられているようだった。
最初でさえすれすれだった刃が後数ミリのところで辛うじて当たっていない。しかも奴は一度も剣で防ぐようなことをせず、すべてを最小限の動きで避けているように見える。
その動きはそれまで抱いていた貧弱そうなイメージはなくなり、熟練の戦士のそれであることが簡単に理解できた。
そしてあまりに攻めを急いだレインが息切れを起こした瞬間を狙って、ジョンはこの試合初めて剣を振るった。
握りの甘くなっていた右手の甲に向けて長剣の腹を打ち付けるようにして放たれたそれは、あまりにも無駄のない一撃。たった一振りで相手を無力化してしまった。
衝撃にツバイヘンダーを取り落としたレインへ向けて長剣を突きつけるジョン。目の前の強者に対して、レインは敗北を認めるようにうなだれている。
「勝負あり! 勝者ジョン・ドゥニーム!!」
司会の宣言を聞いたジョンは長剣を鞘に納め、戦った相手であるレインへと一礼して来た方の門へと帰っていく。
その姿を見ていた俺は、勝手な判断で奴に関わるべきではないことを胸に刻んだ。あんな相手に自分のような奴が敵うわけがない、正直レインとて決して弱いということはない。もう少しで魔鉄級に手が届くような将来を期待されている若者だ。それをああも簡単に……。
鮮やかな手並みという他ないが、だからこそその正体について気になってしまう。関わるべきではないと言ったばかりではあるが、監視だけはしておこう。
周囲の観客たちは先程の戦いに興奮を隠せないようで彼のことについて話をしている。フードの男、ジョンがこの大会の台風の目になることは皆の認識となっただろう。
三回戦にして恐るべき選手が出てきてしまった。これから戦う選手達はこのジョンという男をどうにかしなければ優勝はできないだろう。
俺は内心そんなことを考えながら、四回戦の様子を眺めているジョンへと監視を続けるのだった。
読了ありがとうございました。
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