リーズ・ナブル、乾坤一擲
どうもアゲインストでございます。
今回は試合の決着というお話。
それではどうぞ。
突進、突撃と聞けば馬鹿の代名詞かのように思う奴らがいることだろう。
確かに、考えなしのものであればいくら数を揃えようと壊滅させることは難しくはないだろう。
しかし、これが自分と同じかそれ以上の体格を持つ生物が行えばどうだろうか。
質量の違いはそのまま威力の違いへと繋がる。
そして瞬間に加わる力は、その質量の差さえ覆すことがあるのだ。
一対一で。
体勢が崩れ。
対応ができず。
そんな相手に、十分な加速を加えた突進を加えるのであれば。
一歩どころか吹き飛ばすことだって、可能になるだろう。
まあ、そんなに甘い相手ではないだろうが。
鎖が絡まった剣を回収しつつ、すぐにでも体勢を立て直そうとしているマチルダ目掛けて加速を早める。
できて数瞬の猶予。
好機は長くはない、ならば。
さらに手を加えるしかあるまい。
「くっ!?」
制御の出来なかった剣鉈では防げないと考えたマチルダは、なんとその柄頭で鉄杭を弾き身を守ったのだ。
しかしそのせいで、こちらを迎え撃つには不安定となっている。
できれば体の前面に刃物を置いてほしくないこちらとしては、その姿勢がグッドである。
「チャンス! 片足貰うぜ!」
手元の戻ってきている長剣をキャッチ&リリースとばかりに振り投げた。狙いは足元、鉄杭で狙った下半身をもう一度狙うのだ。
一度アクションを起こしたために、次の動きに繋げるまでのどうしても出来てしまう隙、さらには杭とは違って質量のある長剣が回転して迫ってきているのだ。
当然、その不安定な姿勢では剣鉈で防御はできまい。
ならば回避の先は一つ。
「上空ならば逃げられまい!!」
「貴様、計ったな!!」
防御が出来ないならば、避ける。当然である。
だがそれは、この条件であれば、この状況ならば悪手である。
長剣は十分に跳ばなくてはならない位置に投げた、別にそのまま受けることもできただろうが、戦士としての本能は攻撃の脅威を感じて行動する。
それに、あの長剣に俺の付与が掛かっていないかをマチルダは判断できない。今まで見せたものはどんな効果があるかを認識しずらくしてきた。
動きを止めるような効果があれば、いくら頑丈な体であっても意味がない。そう無意識に考えてしまっていただろうからな。
その隙情け容赦なく、突かせてもらおう。
「我流!!」
「ちぃい!!」
突進の加速は十分。
腕の硬化もすでに済ませている。衝撃に負けるようなことはない。
そして想像するのは、あの時のユルゲンがやったような、何もかもを吹き飛ばすとでもいう剛腕の一撃。
それを成すには、全身の力を全て込めても足りないだろうがそれでもそういう気概で。
「―――破城槌!!!」
一気呵成、とばかりに折り畳んだ左腕、肩を支点とした体当たりを食らわせる。
イメージは体全体でぶん殴るように、だ。
地面を踏みしめる足から、間接全部を使って力を伝導させる。足首、膝、股関節、腰、そして肩に。そしてそれを全部ぶつかる相手に解き放つのだ。
「むぉおっ……!!」
防御をするマチルダ。
これが地上であれば、止められただろう。
だがこれは勝負だ。刃物があろうが、それが意味を成さないように戦う。
勝利条件があるのなら、それで勝てるように考え、策を講じて実行する。
小賢しいが、それが俺の戦い方だ。
「…………ふぅ」
「…………」
終わった。
作戦成功。損害、実に軽微。
お互いに始まりとは逆の位置にいる。
つまり。
「……勝った」
「なんだ、この納得のいかない感じは」
どれだけ彼女が納得がいかなかろうと、勝ちは勝ちである。
実際に彼女はこの地面に書かれて範囲から出てしまっている。これは完全に俺の条件勝利である。
不満そうな顔を隠そうともしない彼女は、傷を追っているわけではないのでピンピンしている。
その代わりの魔力やら体力、いろいろと消耗している俺はこの短時間でかなり疲れてしまった。やはり格上相手に準備もなく挑むものではない。鍛練ぐらいが身の丈にあっているな。
「爺さんいいよな。俺の勝ちだから何を言われようと俺の勝ちだから」
「必死すぎるじゃろ。元気みたいだしもう一本いっとく?」
「そのときはお前を使っての的当てになるけどいいの? 爺さんの命に直結するほど高得点の的当てになるけどそれでいいの?」
「はい。この勝負はリーズ・ナブルの勝利です」
よし。
「そんじゃ何を貰いましょうかね」
「あまり高いものは選ぶなよ?」
「これがいくら掛かるか聞くか? 一つでも金貨三十枚以上はするぞ?」
「いや……その、そこはちょっと容赦してほしいかなって」
「このリーズ・ナブル、容赦せぬ」
「やめんか」
あ痛!
「頭を叩くことないでしょうが、悪いのは俺じゃねえ!!」
「うるさい。もっと真面目に戦うかと思ったらあんな真似をして」
「あんたと真正面からやりあうとかないんで、本当に」
「まあいい。負けは認める、まさかあんな手段を使うとは思わなかった。勉強になったよ」
「やられっぱなしは趣味じゃないんでね」
「シャハトの爺様も、求めるものの大きさが分かったのならそれ相応のものを差し出すべきだぞ」
さすが姉御だ、説得力がちげぇーぜ。
諦めの悪かった爺さんも、戦わせた相手となっては言い訳も効かないと思ったのか、しぶしぶ納得したようだった。
「だがリーズ、そろそろ昼の仕事の時間だ。選ぶのはまた今度にしてくれ」
「まじ? じゃあ爺さん、また来るぜ」
「え? ちょっとおい、自由過ぎない?」
仕事は大事だ。
きちんとしないと飯も食えん。
唖然とする爺さんを尻目に、それまで戦っていたということを感じさせないような雰囲気で俺たちはその場を去る。
でも、何にしようかな。こんな機会は滅多にないぞ。
そんなことを考えつつ、俺はマチルダに連れられて次の仕事場へと向かうのだった。
読了ありがとうございます。
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