リーズ・ナブルと未完の魔剣
どうもアゲインストでございます。
シャハトが持ち出したもの、それの正体とは、マチルダとの関係とは。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
シャハトに呼ばれて工房の奥へと足を運ぶことになった俺たち。
倉庫と思わしき場所に居た彼が抱えていた物は、反応を見る限りどうにもマチルダと関係がある物のようだった。
「懐かしいじゃろ」
「……まだ持っていたんですね」
「当たり前じゃ、儂の渾身の一振りじゃぞ」
二人だけで話を進めないでほしいが間に入るタイミングではないだろう。
シャハトがそっと木箱の蓋を開ける。
中から現れたのは言葉の通り、一振りの剣であった。
「っ……」
思わず息を飲んだ。
これはとてもではないが、こんなところでお目見え出来るとは思ってもいなかった物だ。
「儂の打った中でも新しい方の魔剣よ。それがこんなところで埃を被っておる。嘆かわしいことじゃ」
「ベンの奴はまだそれに相応しいとは考えていないようで」
「まあ、体があれではな」
ベン?
これをあいつが?
「リーズと言ったな、小僧」
「……ええ、まあ」
「お主にこれを見せたのには理由がある。分かるか?」
「いや、分かるわけないでしょ。これ、出すとこ出せばとんでもない値段が付くようなやべーヤツじゃん」
「そうじゃ。そのヤベーのがな、主もなくこんなところで眠ったきりなんじゃよ。可哀想じゃね」
「いや、使えばいいじゃん。別にベンの奴じゃなきゃいけないわけじゃないんだろ? 拒否してるんだったら強要することねぇし」
「話し聞いてたか? あいつに使わせるために作ったって言ったじゃん儂。ベンの奴以外に使わせるとかあり得ないから」
じゃあ何が言いたいんだよこの爺。
何か? 自慢か? 自慢がしたいのか?
「お主に頼みたいことがあると言えば受けてくれるかな?」
「ちょっとご遠慮したいんですけど」
「まあ聞くだけ聞いてみてはくれんか。悪い話しではないのじゃよ」
「えー、本当に?」
「マジマジ。爺嘘つかない」
「でもお高いんでしょ?」
「今なら何とこちらの戸棚の中からお好きな物をお選びいただけます」
「まあなんてお買い得なんでしょう! 皆さん今すぐ応募のご準備を!!」
ゴンっ!! ゴンっ!!
「茶番はやめろ」
「「はいっ……」」
ど突かれちゃったん。
二人してふざけるものだから頭に拳を頂いてしまった。というか滅茶苦茶痛いんですけど。
「……そうは言うがよ、こんなもん出されてお願いだなんて警戒するに決まってんだろ?」
「誤魔化す時間があるとでも? 昼の鍛練もあるんだぞ」
「爺さん、用件を聞こう。さっさと言いな」
不味い。
マチルダの機嫌を損ねて朝以上に厳しくなったら体が持たん。俺はこの女やケインの小僧のような身体強化が不得手なのだ。
貧弱な強化しかできんから今のような後方支援の戦闘スタイルを身に付けてきたというのに、こう何度の叩きのめされては堪ったものではない。
そういうわけで出来る限り早くこの用件とやらを解決しようそうしよう。
「うむ。快く受けてくれて嬉しいぞ」
爺さんもさっきまでのやり取りを無かったことにしつつ、こちらの話に合わせてくれている。
「実はな、この魔剣は未完成なのじゃよ」
「あん?」
どういうことだ?
先ほどベンの奴が使うということを言っていたではないか。
「未完成……というか、後からもっと良いものが出来るんじゃないかと思っての」
「良いもの、ねぇ……」
「これはこれとして、新しい魔剣を作るにあたっての指標というわけよ。これを越える魔剣を作るため、お主に力を借りたい」
―――傑作を越える傑作、此度の旅はそれを作るためのものだった。
なるほど、あの大量の魔鉄と素材はそのためのものだったか。
「何時までも一つの作品にこだわっていては向上などありえんわい。使うかどうかは使い手の勝手。鍛冶師の儂がいうことではない。しかしな、それはそれで分からんのじゃよ。
儂の武器はどれ程斬れるのか、それを扱う戦士はどれ程強くなれるのか。人剣一体を成したとき、奴を斬れるかどうかを、儂は知りたい」
「奴?」
「―――キリンじゃよ」
そう口にしたシャハトの顔は、弟子たちに向けていたそれとは違う種類の怒りで染まっていた。
何に対する怒りであろうか。
あまりにも理不尽なものに対する怒りなのだろうか。
「笑うか小僧。無駄なことだと」
「……笑えるほどの材料がねぇな、何せ出会ったこともねぇ伝説みたいな存在だ」
「そうじゃ。伝説級の魔物、災害の化身とも言われる奴を、もし倒すことができるのなら、それは前人未到ともいえる偉業と言えよう。
だがそんなことはどうでもいい。
儂の望みは一つ、街の英雄をあんな姿にしたキリンの奴をぶち殺す!! それだけじゃ、それだけが儂の生涯最後の望みよ!!」
そのために。
「力を貸せ、小僧。お前が持つという「ジャバオック」の素材で作られた武具を儂にくれんか」
なるほどな、ようやく合点がいった。
そりゃ鍛冶師が買い物っつったら、今の話題はそれに行き着くわな。
「生憎出掛けていたところが反対だったもので入手の機会を逃してしまった。だが実物がここにあるのなら話は早い。どうじゃ、欲しいものならいくらでも、じゃ」
いやはや、なんとも。
ベンから聞いたマチルダから知らされているのか。そういや装具はあのとき見ていたな。
だがなあ爺さん、そいつはいけねぇや。
「金で買えるものじゃない、ってことは分かってるか爺さん」
「ユルゲンからの物だと、そう聞いている」
「なら理解できるだろ。これは俺専用だぜ」
俺は腕を振り、装具の存在をアピールする。
「そこを曲げて、頼みたい」
「……平行線になっちまうなぁ、このままじゃよ」
どうしたもんか、頼まれたって困るんですけど。
素材として俺の装具が欲しいシャハトと、渡したくない俺。
俺たち二人の話し合いは、横でその様子を見ていたマチルダがこんんな提案をしてきやがった。
「なあリーズ、それ私との勝敗で決めないか。いい加減時間が掛かりすぎだ、そろそろ戦いたい」
「突拍子もねぇなあんた!? ていうかそんなことで決まるわけねぇだろうが馬鹿にしてんのか!! てかどんだけ戦いに飢えてんだ!?」
「よし、それでいこう」
「ふざけんな爺!」
「いうてもお主譲らんじゃろ、なら勝負で決めようというわけじゃ」
「いいわけあるか! 俺がこの女に勝てるわけないだろ!!」
「だから、ハンデをつけてやろうじゃないか。それならいいだろ?」
「いいだろじゃねぇ! あ、やめろ何すんだ―――」
そして首根っこを捕まれた俺は工房の裏にある広場に連行されてしまった。
こちらがまったく納得がいっていないにも関わらず、強制的に勝負によってどうするかを決めることになってしまった。
展開が早すぎてついていけない。どうしてこうなった。
あーあもう、まったく妥当じゃないね、最近は。
読了ありがとうございました。
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