リーズ・ナブルの発狂スイッチ
どうもアゲインストでございます。
ベンとの対話を切り上げたリーズ。
しかし、彼はほぼ全裸だった。
いったいどうなるリーズ・ナブル、彼は股間の秘密を守れるのか。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
負傷した剣士、ベン・ブリッチとの対話を切り上げた俺は、本来であれば用意されているはずの着替えが見当たらず、しょうがなくそのままで格好で教えられていた部屋を探していた。
無論、腰にタオル一枚だけのなんとも変態的な格好である。
格好つけて出てきたはいいが、さすがにこれはどうにも言い訳がたたない。こんなところを誰かに見られたらそれこそ大騒ぎだ。
「……そんなわけなんで、隠れてないで出てきてくれませんかね」
誰もいないはずの暗がりの廊下に向かってそういえば、目の前の闇の中から聞こえてくる音。少しして足音となり、こちらの様子を伺っていたであろう人物がその姿を現す。
「……お前、流石にそれはないだろう」
「文句なら面白くもない話をもってきたあいつにいってくださいよ。幼馴染みなんでしょう?」
まあ、恐らく協力者のあんたにいってもしょうがないことだが。
俺を待ち受けていた人物、まあまず間違えることはないだろうその姿、なんとなく顔が赤いのがどうしてだろうかと思うがそういえば全裸同然の格好をしているんだと、改めて自分の格好のおかしさに気付く。
「寒いんで部屋に案内してもらえます?」
「……いいだろう。話が進まん」
ついて来い、というマチルダ・ボータンの先導に従って、ぺったらぺったらと歩みを進めるのだった。
それなりの距離を連れられてきた部屋は、なんというか倉庫のような物置のような、とどのつまりは人の寝起きするようなところではないのだが。
まあこんなもんかと、それなりに納得する。野宿でないだけマシだ。
部屋の見分もそこそこ、俺は部屋の隅にポイとおいてある寝床にあった衣服をいそいそと手にとって着替え始めた。
「あ、ていうか俺の服剥いだの誰だよ」
「部屋の感想より先にそれなのか気になるところは!」
案外ツッコミ気質なのか、それともこの部屋のことについて何か反応してほしかったのか、何にしてもずいぶんとテンションが高いことだ。
「舐めるなよ俺を。王都の貧民街で一時期を過ごした経験から言わせてもらえば雨風凌げてるだけ随分とありがたいもんだ」
「やめろお前! 何か可哀想になってくるだろ全裸のくせに!!」
「安心しろ、逞しく一人で生きてきたから」
「なんたることだっ……!?」
どうやら感動屋でもあるようだ、忙しい人である。
瞳を潤ませて口を手で押さえているのは溢れそうになる声を防ぐためであろうか。
長身でありマッシブな彼女がそのような仕草をすると違和感があるが、やっぱり女性なのだと、いくら戦闘力ばかりがたかくてもそういうところはきちんと残っているのだと安心する。
しかし、いったい俺の服を脱がしたのは結局誰なんだろうか。下着も取られていたということは少なくとも俺のセクシャルな部分を見たはずである。
「下着……着替え……う、頭が」
何故だ、この二つのことを考えると頭痛が生じる。
まるで思い出すことを脳が拒否しているかのような、これは……女? 女の顔? 誰だこいつ? 嫌、待て覚えがあるぞ。
これは……そうだあの屋敷、リティアのところで…………
「おい、大丈夫か?」
「……おいもう一度聞くぞ、誰がやった」
いきなり動作が止まった俺のマチルダが声を掛けてくるが、それに答えることはなく再びさっきの質問を繰り返した。
それに眉をひそめるようにして、それでもそこまで気にすることでもないと思ったのか特に何もなく答えてくれた。
「……別の隊員だ」
「どっちだ」
「は?」
「男か女か、どっちだって聞いてんだよ」
そんなことをどうして聞くのか分からないだろうが、こっちとしてはどうしてもその問題を解決しないわけにはいかない。
なぜならこの下着に何かされていないかが分からないからだ。
この、なんだ、何故こうも警戒してしまうのか自分でも分からないのだが、どうしてもこの布切れに何かがあったのではないかと思ってしまうのだ。
それがもし……もし女性であったならば、あったならば……ああ、ああ……!!!
「男だぞ」
「よかった!!」
本当によかった……!!
あまりの安堵にその場に崩れ落ちてしまったが、そのくらいに緊張していたものだからそれから解放されたらそりゃこうなりますわい。
いやーよかった、男で。
こんなこというのもどうかと思いますがね、それだけこの悪寒が俺にとってヤバイものだったということなのだ。
「……本当に大丈夫か、お前?」
「大丈夫なわけあるか! 共犯者の癖しやがって、てめぇもどうせ一枚噛んでたんだろうがこの人でなし!!」
「人聞きの悪いことを言うな! というかなんのことだ一体!?」
「うるせぇ馬鹿野郎!! こっちがどんだけ頑張ったか知りもしない癖に…辛かったんだぞマジで!!!」
「だから何の話なのだ!?」
ああ! 地獄のマナーレッスンの記憶がすぐそこまで来ている!!
奥底に封印したはずのあの悪夢がまた、またあああああああ!!
「もう嫌だ! 間違える度に衣服が消えていくのはもう嫌だぁああ!!!」
「落ち着けリーズ!! というかなんだそれは!? 何の催しなのだ!」
「罰ゲームの類いを催しと言うな!」
「何故そこだけ拾うんだ!? お前実は正気だろう!」
頭を抱えて転げ回る俺、突然のことで大したことができないマチルダは慌てながらも俺を落ち着かせようとしてくるが、体への接触がトリガーとなってさらに暴れだすことになる。
そうやって、夜も深まるというのに騒がしくなる小部屋。
これが収まるのにそれなりの時間を要したのは言うまでもないだろう。
何とか正気に戻った俺が話ができるまでに回復したのさらにその後となるのだった。
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