リーズ・ナブルと歓迎する者
どうもアゲインストでございます。
イナナキのギルドから上手い具合に金を掻っ払ったリーズ。
懐の寒いところに嬉しい事態、そして御者からのお話が。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
実のところ、王都近辺から出たことのなかった俺はこの旅をするにあたって、最低限の知識しかなかったりする。
せいぜいが目的地に行くまでの道中有名な土地についていくつか、といったところで実際に見たことがないものがあったりすることも少なくない。
機会があればできるだけ調べるようにはしていたのだが、なんせ雑用係の支援部隊でひいこらしていたもので、なかなか時間が取れないでいた。
それでも隊の連中や上司、ハンスとかと話す内にこの王国内の各都市の大まかな位置、世間一般的な常識や何かは把握している。
まあ、世間知らずに代わりはないが、あの癖の強い奴らと暮らしていたらまともな知識を頭に入れるよりも、ボケた言動に対処することのほうが多くなるのが必然であった。
「いやーいい感じに儲けられましたわー!!」
そんな連中と、目の前にいるこの男には何か似通ったところを感じずにいられないでいる。
どうにも俺はこういうタイプを引き寄せてしまうらしい、できれば類友とか言われるような質でないことを祈りたい。
そんな男に連れられて、俺は日が傾き出すには早い内から酒場へと来ているのだった。
青ざめた顔のギルド員から掻っ払った、締めて二十枚の金貨。
お互いに納得のいく結果になったというのに、この世の終わりでも来たかのような彼に見送られ、暖かくなった懐の重みを確かめていたところだった。
ギルドの館から退散しようというところで、あの御者に発見されたのだ。
一階で待機していたようで、今回の顛末について肝心なところをぼやかしつつ報告を行った。
あまりいい顔……いや、顔は見えないから声というべきか、まあともかく感心しないということの言葉をいくつかもらった。
真に受けていない俺の様子にため息を吐かれつつ、彼の話の続き聞けば、
・自分は一度王都へ帰るということ
・先に行くならば伝言を残しておくこと
・二三日したらまたくるので、その時にまた利用したいならば乗車を優先してくれるということ
など、なんとも気遣いに溢れたことを話してくれた。
正直何故そこまでしてくれるのかと問えば、これもまたユルゲンからのお達しだそうで。
何でも、依頼のついでではあるが国境を越えるまでは乗せていってくれるらしいのだ。
御者の彼は一応、ギルド間の物資を運ぶ仕事をしているらしくその護衛という扱いで依頼を頼むことがあるそうなのだ。
その枠に俺を使ってくれるらしく、何よりここで断る理由もない。
元々どれだけ時間が掛かるか分からん旅路だ、してもらえることは素直にしてもらおう。
こうして明確な協力者となった彼、改めて名前を聞けば何でもジンクスがあるようで。
『また会ったときに教えましょう』と。
そのジンクスについては教えてもらえず、妙な雰囲気を醸し出しながら立ち去っていくのを眺めて見送るしかなかったわけである。
そして、その後。
望外にも小金持ちになった俺は、同じく懐を膨らませたベン・ブリッチに連れられて馴染みの店だというところへと来ていた。
で、冒頭の台詞である。
正直言い過ぎである。
ここに来るまで、それはもう言いまくっていた。口からこぼれまくっていた。何なら口から生産していたといっても過言ではないくらいには口にしていた。
そんな至極上機嫌なこの男は、席についた途端に店員を呼び矢継ぎ早に注文を繰り返している。
「早く座れ! お前も何か頼めよぉ…売り上げに貢献しろ!」
「…メニューを渡してから言えよ」
マイペースゴウマイウェイ、な感じで好き勝手にやってくれる。
抵抗するのも疲れそうなので素直に対面の席についてやる。
「こいつ新顔だからいつもの出してやってくれ」
「分かりました、以上でよろしいですか?」
「おう、また頼むからよ。食うぜぇ~今日は」
「そう言って前に食べきれずに倒れたの、忘れてないですよね」
「大丈夫だって! 今回はもう一人いるからよ!!」
「勝手に話進めないでくれます?」
うわー、なんだろうこの感じ、すごく馴染みがあるんですけど。
具体的に言えば元部下であるハナセとまるで性質が違わないんですけど。あいつ食い物頼んだはいいが、食べきれずに俺とかに任せてなんてことがざらにあった。
「まあまあ、今日はがっぽり儲かったんだ。後何日かここにいるんだろ? ならここの店員に顔を覚えてもらえりゃいろいろよくしてもらえんぜ。上が宿になってるから便利だしな」
「元は宿屋だけだったんですけど、ついでにやってた食堂が繁盛しちゃいまして。今では儲けがとんとんって具合なんですよ」
それじゃあ料理持ってきますねー。
と、そういって厨房に引っ込んでいってしまった。こいつもまるで人の話を聞いてくれない。どうなってんだこの街の人間は、出会った半数の耳が悪いんだけど。聞く耳を持っていないんですけど。
「……もっと考えて動けばよかった」
「そんじゃまあ、歓迎するぜ! 乾杯!!」
いつの間にか配られていた酒の入ったジョッキを前へと掲げられる。そのマイペースさにいちいち反応するのは疲れる、俺は諦めてそれに応じることにした。
音を立ててぶつかり、ベンからは歓迎の意を受け、俺はそれに返答する。
とりあえず、俺は現地の冒険者に受け入れられることができたようだった。
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