リーズ・ナブル、イナナキに立つ
どうもアゲインストでございます。
昨日の夜にレビューをいただきまして、一気にPVが増えてそれはもう驚いております。
この機会に感謝しつつ、より多くの人に読んでいただけるよう努力していく所存です。
さて、お話の方ですが、ようやく次の街「イナナキ」に到着したリーズ。
まずは入るところから、すでに出会いは始まっているようで。
それでは続きをお楽しみください。
さて、久しぶりに語ろうか。
俺がこれから行く『イナナキ』という街についてだ。
このイナナキ、名前の通り馬に関したある特徴がある。
それはこの街が、様々なところから王都へ行くまでの交流点であるということだ。
いろんなところから人が来る。
このご時世よほどの馬鹿か備えがなければ集団行動は当然である。
集団で動くなら馬車がいいよね。
よし、馬買おう。
ということで、人の集まりに比例するように馬が多くなり、それによってどんどんと街が大きくなり、馬を置いておく馬小屋が作られるわけである。
そうなると護衛の依頼やらが増え、それにともなって警備の仕事も増える。依頼には事欠かないわけだから冒険者たちもこぞって集まるというわけだ。
それによってさらに増える各施設。
衣食住、治療院、鍛冶屋、ギルド、その他諸々。
そういう理由があってこの街の名前には馬の、そして人の威勢のいい声が響くところということで、『イナナキ』ということになったというらしい。
それはこうして外から来た俺にも聞こえるくらいに、大盛況な声が響いている。
大部分は街に入ろうという奴らのものだが、それに負けないくらいに中からの声が聞こえてくる。
「…もう暫し時間がかかるかと」
「それよか防音どうにかしろよと小一時間」
外はともかく中からこんなに音が聞こえるとか、迷惑以前になにがあるんですかと訪ねたくなるんですけど。
壁か?
壁が薄いんか?
「こんな外壁で大丈夫か?」
「…ご心配なく、この街の防備は人が主体ですゆえ」
人。
人、ねぇ。
「まあ、確かに壁だわな」
外壁に群がるようにして早く入れろと囀ずる奴らを相手に一歩も退かない、同じような格好をした連中に目を向ける。
体格、技量ともになかなかのものとお見受けする。
装備もよし。大盾に長槍、副武装の短剣。
それがずらりと並んで威圧している。迫力がすげーもんな。
「それで馬鹿騒ぎできる神経がわからんね」
あいつら、良からぬ輩に対して容赦がないタイプだぜ。
そいつらの前でこうもごねるなんてな、よほど危機感がないということだろうか。
「繁栄も善し悪し、ってな」
「…進みます」
「ああ」
まあ、いい。
俺が関わりを持とうとしなければいい。
あいつらが関わらなければいい。
それでも問題が起きたなら、そんときはそんときだ。
道中で続けていた作業を再開しながら、馬車に揺られるのに任せてこの時間を楽しむことにした。
大きな体に見合った大口のような扉に誘い込まれるように、ゆっくりと馬車は進んでいく。中から響くのは腹鳴りが如く、喧騒を飲み込んでいき自分をさらに大きくするために、もっともっとと人を己の内に招き入れる。
それは好き嫌いなどなく、毒であっても飲み込むだろう。
そしてそれは、病のように広がっていることだろう。
人とは、綺麗なばかりではないのだからな。
だが俺は付与士。
毒すら、病すら利用して己の力に変えて見せよう。
その使い方を誤らなければ、いかようにでも薬に変わるのだから。
馬車の中に会話はなく、物が立てる音ばかり。
贈り物のお陰で作業も楽にできるようになった、集中していればそれなりの時間が経っていたらしく気が付けば俺たちの番になっていたうようだ。
御者が係りのものと会話をしているのが聞こえ始め、誰かが後ろの俺がいるとこ所までくるのがわかった。
重い足取りは装備故か、しかし引きずるようなものではなく実に軽やかなものだ。相当な鍛練を積んでいるのだろう。
そんな強者ぼ気配をさせた者が、俺がいる馬車の扉を叩く。
「―――すまないが、顔を見せてもらえるか」
……こりゃ驚いた。
どういうわけだかその声、女のように聞こえるぞ。
あり得ないわけではないが、こんな近くにこんな強い奴が、それも女でこれか。
驚愕するこちらの止まった思考は、外にいる彼女のもう一度の呼び掛けにより始動する。
「……っああ! すまない!! 今開ける!!」
あぶねぇあぶねぇ。
余計なことをして警戒させちまうところだった。
広げていた作業のあれこれを片付けて、さっさと扉を開けて外へと出た。
「あいや失礼」
「なに、大したことではない」
外に出て、その人物と相対する。
そして確信する。
気配が伝える力量のほどを。
「私はこのイナナキの警備隊の者だ。お客人、名を聞かせてもらおえるか」
身長、およそ190。
「リーズ・ナブルという。一応冒険者だ」
相貌、鼻高く碧眼きらびやかに。意思強きものなり。
「一応とは?」
「何せ一度しか依頼を受けてないもんでな。それも今受けてるやつだから達成していないのでね」
体格、スラリとしてしなやか。柳が如く。
「それはまた、お一人のようだが」
「故郷から送り出されましてね。いっちょ旗揚げようってんでね。まあ、連れはぼちぼち見つけまさぁ」
「ふむ。腕に覚えがおありのようだ」
獲物、長槍は変わらず。しかし大盾はなく腰には鉈剣らしきものあり。
「それはまあ…それなりに」
「ふふっ。面白いご仁だ」
総評。
至極侮りがたし。
これで警備隊の一人だと? この街の警備は化け物か。
「どうやら問題のある人物ではないらしい。―――歓迎しよう新たなる冒険者よ」
「お心遣いに感謝を」
「どうかよい関係となれることを願うぞ」
「こちらとしてもそう望みます」
でも今は。
そう今は戦うわけではなく、そんな関係ではない。
敵対など、冗談でもするべきではない。
それが妥当だ。
「隊長、確認終わりました」
「分かった」
御者のほうを担当していたも奴がこちらへきたようだ。
やっとと言うべきか、いや、そんなに時間は経っていないだろう。
俺が勝手に緊張してただけだ。
「それではまた」
「ええ、それでは」
それを最後にして、この女傑とは別れることになった。
どうせ中で生活していればまた会うことになるだろう。その時にまた、どうにかなるに任せよう。
そうして、俺を乗せた馬車は壁の内へと進みだした。
股とも言うべき門を潜り抜け、影を越えた先。
石畳に包まれた地面を叩く音で、ようやくこの街に入ることができたのだと実感できた。
さあ、さっさと面倒片付けてゆっくり休みたいもんだ。
こうして俺はイナナキの地へと到着したのだった。
読了ありがとうございました。
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