グルメデートは異国の香りと
PV2000越え記念の投稿、十九話
デートの続きはどうじゃろな?
そんなお話でございます
この世界の成人の年齢について、今回は話をしよう。
男女に違いはなく、十五になったら成人として扱われる。一人前というより、正式に働きに出れるという目安みたいなものだが。
さて、俺がこんなことを話始めた理由としては簡単で、目の前でハグハグと食事をしているこのお嬢様について少し考えていたからだ。
改めて、ハンスの食事処に来た目的について、俺は考えを巡らしていた。今こうして珍しい料理に気を逸らさしているが、これは時間稼ぎに過ぎない。問題解決のための術をこの食事会が終わるまでに考えつかなければ、このお嬢様はただの気晴らしに連れてこられただけになってしまう。それではわざわざ連れてきた意味がない。
「(というか、このお嬢は一体いくつなのかね?)」
騎士として部隊を率いていたということは、十五は越えているはず。だが同年代、俺と同じ二十を越えているようには見えない。というかそもそもラインホード家の詳しいこととかよく知らんし。こいつの話だけでは分からんことが多すぎる。
だからこそ、家族関係で改善を目指す案はあまり効果があると思えないんだよなぁ。
「…むぐ。なあリーズよ」
そんな風に考えていた俺なのだが、リティア嬢は長瓜の和え物が気に入ったのか、飲み込んだ次にはフォークに長瓜を突き刺して構えている。そのままの体勢でなにやら聞きたいことがあるようだった。
「どした?」
「あのハンスという店主とは親しい関係のようだが。一体いつぐらいからの付き合いなのだ?」
どうやら彼女はハンスとのやり取りから、そんなことが気になったらしい。あれは、そうだな、軍に入ってから何年目だったか…。
「確か…ああそうだ、十八の時だな。その時にここに話を聞いて来たんだ」
「今の私と同じ年だ!!」
「おお! そいつは何とも偶然だな」
そうか、このお嬢様十八才なのか。
それで騎士の部隊を一つ任せられるとは、見た目以上に能力があるみたいだな。まあ公爵家ともなれば素質は十分だろうしな。
「確かお前は二十二だったな」
「まあな。…そうか四年以上の付き合いになるのか、こことも」
そう思えば名残惜しい。
近い内に出ていくのだ。次にここの料理を食べられるのは事を為してから、それも戻って来られたらの話になるわけだからな。
「そうなのか…少し、憧れるな」
「行き着けの店とかないのか?」
「貴族の娘にそんな自由はないさ。家族で行くところは格式を重要視されるようなところだし、父と共に食事をするのは……な。いつもは姉と一緒か一人で、家で食べている」
「あんたの部隊の連中は?」
「あれらは下級の貴族が大半だ。任せられてはいたが、どうにも馬が合わん連中だったし」
視線も、な。という彼女の顔には隠そうとして消しきれていない嫌悪感が見てとれる。そうか、あいつら男ばっかだったし、下級の貴族からしてみれば雲の上の人物である公爵家の人間が手の届くところにいるのだ。それが女ならば尚更、もしかして、とか思ってしまうこともあるわけだ。
「悪い。嫌なこと思い出させたな」
「いやいい。でもそうだな、お前にはそういったことを感じない。不思議な感覚だ」
はむっ、とフォークを口に入れ、長瓜の食感と味に顔を輝かせる。そうやって話を切ったのかと思ったが、そういうことをするような娘ではないことはこれまでのことで分かっているつもりだ。
たぶんただ食べたかっただけだろう。
「むぐむぐ」
「……」
でも、ちょっと踏み込み辛くなったのもまた確か。そういったことを分かった風にいうのは、なんだか違う気がするし。
「―――待たせたな」
少し会話が途切れてしまって手持ち無沙汰になっていたところに、タイミングよくハンスが来てくれた。ここは店長以外は店の人間は来ないようにしているので、お通しと同じくこの男が給士役をやっている。
両手には湯気を立ててかなりいい香りをさせている料理が御盆の上にそれぞれ乗せられている。飲み物もそれに乗せられていて、こちらに対する配慮も完璧にできているようだ。
「お待ちどう。『魚のハンバーグ』二人前、熱いうちに食べてくれよ」
「待ってました待ってました!」
今日のメインディッシュがようやく来てくれた。
この何とも言えない独特の香り、空きっ腹には堪らんぜ!!
「どうぞ、お嬢ちゃん」
「い、いただこう!」
「へいへい! 早くおくれよ店長!!」
「やらんぞ」
「ゴメス!(ごめんなさいすいません)」
「いい大人がはしゃぐな、みっともない。これでも食ってろ」
「あざーす」
軽いおふざけを交えつつ、ついにそれは姿を表す。
お互いの目の前に置かれたのものは、形こそまんまハンバーグそのものだが全くの別物と言っていいほどの匂いによってただのハンバーグでないことを強烈に主張してくる。
焼き魚のようでありながら、その匂いのはそれだけではない複雑さがあり、それがまた食欲をそそるのだ。
「ソースはこの当店オリジナルのものを使ってくれ。お好きなようにな。では、お食事が終わりましたらまた伺いますので、それまでごゆるりと当店の裏メニューをお楽しみください」
ハンスはそういって盆にあったものを置いていき、似合わないような仕草をして個室から出ていくのだった。ありゃこの娘のことバレてるな。露骨に売り込みにきてやがる。姑息なやつめ!
でも許そう。この料理にはそれだけの価値がある。
「さあ、いただこうぜ」
奇っ怪極まる存在を前にして固まるお嬢様を尻目に、俺はさっさと食事の準備を始める。それに吊られるようにして、彼女もナイフを構え出すのだった。
食事はまだ続くが、着々と終わりは近づいている。
俺はその間に、どんな言葉をこの娘に残せるだろうか。
笑顔で彼女を見るなか、そんなことを頭の片隅で考え続けていた。
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