リーズ・ナブルの身の丈に合わない謁見
お昼に投稿十五話
今日はまだ投稿していないにも関わらず見に来てくださっている方々には本当に感謝しております。
さて、国の最高権力者トリオを前にしたリーズの選択やいかに!!
そんなお話でございます。
だから俺、来たくないって言うたやん。
やべーよやべーよ。
こっちを睨む御偉い方の視線で胃に穴が空きそうなんですけど。ちらっとしか見たことがないような将軍とかなんか殺しに来そうな感じなんだけど俺そんなに気に入らないことしましたっけ?
「どうなのだ、リーズ・ナブルよ」
「……」
いやどうっていいましても。
ちくしょう、こういう時どうしたらいいんだ。一応とはいえ俺元軍人だし、ここで下手なこと言ったらどうなるかわからん。最悪いらん因縁付けられてもおかしくない。
「不敬であるぞ! 早く答えぬか!!」
「止さんか将軍。あの者もまた頭を抱えておるのだ。そう急くものではない」
「しかし…」
人格者だわー。
なんつう人格者なんだこの王様。なんでこんなに御優しいのに亜人領域に出兵なんてしているんだろう。真面目に疑問なんだけど。
でもどうするかなー。
どういう条件なら面倒にならずに済むんだろうか。
ていうか将軍かよー。早速いちゃもんつけてきたの将軍かよー。めっちゃめんどうじゃないすかー。
「宰相よ。お主もどう考える」
「はい。確かに陛下の御考えの通り、あまり大きな褒賞では他の者との軋轢を生むかと。調べたところこの者は平民の出、今回の討伐にも間接的な貢献ときております」
「支援魔法であったな。討伐、救助両方で力を発揮したとか。なかなかに有能ではないか」
「決定打とは言えますまい。討伐に関してはユルゲンの攻撃力がなければ効いていたかどうか」
「将軍よ、そのようなことは結果論に過ぎん。今は成した功について話しておるのだ」
「それにしたとしても、かような平民を重用したとなれば陛下のためになりますまい。
おいお前! 褒美は儂のほうからくれてやる! それを持ってとっとと出ていくがいい!!」
好きで来たわけじゃなぇよクソボケ爺が!
あのマッシブ絶対許さん! ガチめに面倒が過ぎるんですけど!!
ああもう、予定が狂いまくりング。スゴいテンション下がるんですけど。こうなんのが嫌だから来たくなかったのに、どうないせぇっちゅうねん。
って言ってますけどまあ、考えがないわけじゃないんだけどさ。
「それでは発言を御許し頂けたこと、将軍閣下には感謝いたします。何分育ちの悪い平民の出身です故、高貴なる陛下の御前にこの身を晒すことができた望外の栄誉に口を開くことができずにいたものですから」
まずは自身の身分をはっきりさせよう。俺はここでは元軍人とも新米冒険者ではない。どっち付かずの中途半端なものより、明確に下の身分の者として立場を主張する。
「そしてまた、私は将軍様に謝らねばならないことがございます」
「なんだと? 儂のいう褒美が要らぬと申すか」
「私が今回の討伐に参加いたしましたのは、私のいた部隊の者たちを救うためにございました。そこに利益や打算などございません」
そうじゃなきゃ誰が金貨二百枚をポンと出すものか。命あっての人生、そこに他人の死を背負っていくような選択を、俺はしたくないだけだ。いうなれば俺の勝手、それを他所様にどうこう言われて評価されては堪ったものではない。
「では褒賞は要らぬと申すか!」
「それもまた、陛下方の御心遣いを無下にしてしまうことでしょう。そのようなこととてもとても…」
「ではどうすると言うのだ!! はよう申せ!!!」
ううん、いいのかなぁこんなすんなり進んで?
ほぼほぼ思惑通りに進んでいるんだけど、一国の将軍がこんなに乗せやすい訳ないだろうし。あれかな、わざとなのかな?
なわきゃないか。
「高位の魔物を討伐したとなれば国を挙げての式典を行うこととなるでしょう。民衆に軍の力を理解してもらうもってこいの機会ですからね」
「当たり前だ」
「この王城でも、さぞや盛大な催しがあるのでしょうなぁ」
ちらりと将軍に視線を向ければ、自分の意図に気付いたのか、はっとしたような顔を見せる。そうだ将軍、落とし所はそこにしようぜ。
それならあんたもそこまで面倒はないだろう?
「それは…いや、それが目的か」
「いやいや、邪推されるようなことはなにも。ただ卑しい平民の私としてはまたとない機会。生涯にたった一度でも、貴族方の集まる式典に参加できたとなれば死ぬまでの語り草となりましょう。
どうか、私をその催しに」
賞金でも賞品でもなく、栄誉によって報酬とする。
いうなれば騎士に対する勲章のようなもの。形のないものでも、それを尊ぶ意思さえ示せればいい。
なんせ俺は平民ですから。
「…よいのではないですかな?」
考え込む将軍に先んじて、まず最初に俺の申し出を許可したのは宰相だった。
「確かにその者のいうことには筋が通っている。式典への参加であれば、協力者ということにしてやればやっかみも少なくなるでしょう」
「…別に否定などしておらぬわ。こやつが問題を起こさぬかを考えておっただけよ」
「双方落ち着かんか。我を置いて話を進めるでない」
将軍もしぶしぶとだが肯定的な意思を見せてくれている。二人が少し言い合いのようになってきたところを陛下が仲裁し、最終的に陛下から正式な決定が下された。
「二日後の式典にリーズ・ナブルの登城を許可する。これは国王としての正式な命である。これを妨げることは国王に背いたとして厳罰を下すものである。皆の者、それでよいな」
「ありがたき幸せ」
「はっ、承知いたしました。部下への周知を徹底いたします」
「これが終わり次第、式典の準備に取りかかります」
そしてひれ伏す俺にさらりと目をやった後、広間にいる全員に対してそう命令した。実にできた御人である。こんなことならもっと上をめざすんだったな。
そんな俺の内心の戯れ言をよそに、陛下との謁見は此れにて終了となった。陛下たちが居なくなり、ぞろぞろと退出する人の波の最後尾にいた俺の背中に誰かの視線が突き刺さっていたのだが、あいにくそれに構っている時間はなかった。
頭の中が他のことで一杯な俺は、どうすっかなー、とそれを特に気にすることなく謁見室から退出したのだった。
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