そこは欲望渦巻くの迷宮の入り口
どうもアゲインストでございます。
ようやくダンジョン、の前の拠点へ。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
少女たちの追求から逃れつつ馬車で移動すること数時間。
中で話しをしていると、進行方向の先から人の叫び声のようなものが響いてきた。
とは言っても、助けを求めるようなものではない。どちらかと言えば……そう、街でよく聞いていた客寄せのためのそれだ。
「どうやら近づいてきたみたいだな」
「そのようですわね」
この声はダンジョンから持ち出した魔物の素材などを買い取る商人たちのものだろう。
武器や防具、その他消耗品などを売買するために市場のようなものが開かれているのだろう。ここに滞在できるような設備があるのかもしれない。大きな団体ならそのくらいはやってのけるだろう。
「もうすぐ、なんですね?」
「まあな。街で見ることのなかったような奴等がうじゃうじゃいるだろうな」
「……良い意味で、ですよね。それ」
「いいや、悪い意味で、さ」
「おおふ……」
中には悪どい連中がいることだろう。そういう連中が邪魔をしてくるのもまたこういう催しの醍醐味と言えば醍醐味である。そんな悪党どもを欺いて利益を掻っ払うのがお楽しみだったなぁ。まあ後で怒られたけど、あんときゃ若かったわ。
「大丈夫だよライド君。そのために準備してきたんでしょ」
「そうよ! 私たちもいるじゃないの!!」
「前線は私もお供いたしますわ。これでも集団戦の経験は積んでおりますので頼りにしていただいて構いませんわ」
昔の出来事が頭をよぎる中、周りの仲間たち元気付けられるライド。対面にいる彼の両隣にはマールとセルーナが、俺の隣にはシェルフィーが座っており、それぞれの場所からライドに声を掛けている。
そのおかげかライドも立ち直り、悪かった顔色も元に戻っている。
「まあ、そこらへんはなるようにしかならんだろうさ。どうしたって他人にゃあ他人の都合ってもんがあるからな。それに善悪の程度こそあれ、同じような目的を持ってるんだ。
どっかでぶつかるのはしょうがないことなんだよ。まあ、覚悟はできてんだろ?」
「……ちょっと、早まったかもしれないなぁ……」
そんなライドに向かって、これから向かう場所で出会う相手にどういう思惑があっても頑張ろうぜ、ということをいうと俺のその軽い口調のせいか少しばかり後悔したような台詞を吐くのだった。
そんなライドの様子に若者の初々しさを感じながら、丘の一つを越えるとようやく人工物の影が見えてきた。
様々な色の構造物が円を描くように形成されたそれは、もはや一つの町とも言えるような規模となっていた。
―――サベクダンジョン攻略の要衝、通称『砦』
人の欲望を形にしたかのようなその巨大さが、まるで大口を開けた魔物のように見えるのは、その奥に存在している奴の正体を知っているからだろうか。
挑戦者たちを飲み込んで、一体何を目論んでいるのだろうか。
分かりやすい利益よりも、不鮮明な企みの方が恐ろしいものだ。だがそれも、挑んでみなければ何もわからないのだからやるしかあるまい。
そうして俺たちは、遂にダンジョンの入り口へとたどり着いたのだった。
簡易的な柵を越え、馬車ごと内部へと進んでいく。
一応の検問のようなものが存在していたが、冒険者であることを示せば比較的簡単に入ることができた。
共有スペースのような場所に行くように指示された俺たちは、先に来ていた同業者連中に見られながらも空いているところへテントを設営し始めた。
「おいあれって……」
「ああ……」
「最近冒険者のなった新米どもだろ……」
「見たことない奴もいるが……」
「あっちのは確か有名な神官の娘だったはず……」
「じゃああの娘の主導ってか……」
若年層で構成された俺たちのパーティーはダンジョンに挑むような実力があるという風に見られることはないのだろう。それがこうして現れたものだから注目されてしかるべきか。
そういった視線を無視しつつ、俺たちはあシェルフィーの従者たちのおかげでかなり容易にテントを建てることができた。
それなりの大きさのものが三つ、俺とライド、女性陣、従者組といった配分となっている。
「とりあえず、拠点ができたな」
「はい。どうします、これから?」
「そうだな……予定通り地図を買いに行こうと思う。装備については一旦現状のものでやってみるつもりだから店があるのなら今日のところは場所だけ覚えておこうか」
「食料も買い込んできたし……やることといえばそのくらいね」
「では我々の方で『砦』は探っておきますのでリーズ様たちは地図の方を。拠点のこともお任せください」
「そうですか。それでは頼みましたよ、ヘレン」
「はい、シェルフィー様」
ひとまず当初の予定通りの行動をしようと話しをし、従者たちとの役割分担によってそれぞれの行く先を決める。
シェルフィーの従者たちならば悪徳商人などに引っ掛かることもないだろう。商人相手はこいつらに任せてしまって大丈夫かな。
「一応言ってくが、こっからはできるだけ離れないようにしてくれ。一見秩序だって見えるが、ここは金の香りに誘われたような連中が犇めく場所だ。
ダンジョンの外だからって気を抜くな。敵は何も魔物だけって訳じゃあないからな」
はしゃいでいる、という表現はあまりしたくはないのだが、ここで気を緩めてはその後のことに響く結果となるやもしれん。
別に戦闘を意識しろ、とは言わないが周りがいつ敵になるかもしれないという意識することはダンジョンという遭遇戦の多発する環境においてはかなり有効な心構えとなるだろう。
こうもあからさまな敵意というものに晒されれば、暗闇からの悪意などから対応できるだろうからな。
「さあ、初アタック前のお散歩だ。ご近所さんへの挨拶がてら、そこらをぶらっとしてこうぜ」
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