本戦七日目・試合開始前
「それで、午前中に準々決勝全部やって午後に準決勝だっけ?」
「そうだよ。多分当たるんだろうけど、僕は負けないからね?」
「そりゃ結構なこって。ところでジェルザ、そろそろ用意した方がいいんじゃないか?」
「そうですよ!いくらなんでも、もう時間がありませんよ?」
「わかってるわよ~。ああ、胃が痛い……」
まだ言ってるよ、こいつは。そんなこと言っても、もう後の祭りだろうに。
そう思ったら、レジルがジェルザを抱きしめて髪を撫で始めた。熱いなあ、ほんとこのバカップルは公私混合も甚だしいな。
え?前と言ってる事が違うって?この風景見たら誰でもそうなるって。つうか、めんどくさい風景だな。城宮君は顔が紅くなってるけど。結構初だな。
「そこのお二人さん?元気の注入は終わりましたかな?」
「な、ななな、何言ってるのよ?」
「もうその光景を見るのがうんざりだから早く行け、って言ってんだ。熱すぎなんだよ、お前らは。精々思い出して試合に集中できない、なんて事態にはならないでくれよ」
「当たり前じゃないか。それに僕は何も問題じゃないしね」
「開き直ってる奴って、なお嫌になるよな。もういいからさっさと行け。相手を困らせるな」
「分かったわよ。それじゃあ、行ってくるからね」
「うん、いってらっしゃい。頑張って、とは言わないよ」
「もちろん。勝ってくるから」
そういうと上機嫌で部屋を出て行った。しっかし面倒だな。この二人付き合ってから三年ぐらい経ってるんだけど、これは結構やばいよな。
「お前らほんとに結婚表明した方がいいんじゃね?」
「ああ、昨日ジェルに言ったらしいね?」
「当たり前だ。特に今のはもうひどい。結婚した人でもあそこまでひどくはないぞ?」
「え?そうですか?俺の師匠の両親もあんな感じですけど……」
君は一体どんな環境で暮らしてきたんだ?さすがにあれは一般的に見て異常だぞ?
そう思いはしたが、口にするのははばかれた。さすがに口にする勇気はなかったし、レジルがこっちをものすごく睨んでくるんだ。
「……なんだ?言いたい事があるなら、はっきり言え」
「いや?何か言いたそうだと思ったから、見てただけだよ?」
「そうかい。それじゃ、あいつも試合会場についたみたいだし、お前さんの恋人の力をもう一度はっきりさせてもらうとしよう。一昨日のはひどかった。
あんなの、あいつの半分程度の力しか発揮できてないじゃん」
「その前日にちょっとお酒を飲み過ぎてね。二日酔い未遂?みたいな状態だったんだ」
「もうそんな事は無い、と思いたいものだな」
そして試合を開始するホイッスルは鳴り響いた。今回こそはちゃんとやってくれよ?