本戦六日目(2)
「そんで最後はレジルの試合か。……心配か?」
「そ、そんな訳無いでしょ。あいつとは決勝で戦うって約束してるんだから」
「これはまた仲睦まじい事で。もう本格的に付き合っちゃえば?」
「そんな時期じゃないでしょ。それにそんなことしても意味ないわよ」
「意味があるかどうかなんて時間が教えてくれるし、自分が動かなきゃいつまで経っても時期なんか来ないぜ?特にお前ら二人はな」
この二人は俺以上に知名度が高い。まあ、俺は基本的にそこまで大々的に動こうとしないからなんだが。それでもその知名度を可能とするだけの力を持っている。
『四元素』に『黒銀鉄鎖』。この二人が恋仲である事を知っているのはそう多くない。
さすがに結婚の公表は自分達の知名度的に見て控えているらしい。もちろん知っている人間だけならばイチャイチャしているが。公私ぐらいはわかってるってことだ。
「それでも、よ。少なくとも、今の段階でそんな事をする気はない」
「ふうん?こう言ってるんだけどどう思う?城宮君」
「俺に振らないでくださいよ!そんなの答えられる訳無いでしょ!」
「ま、そりゃそうなんだろうけど。でも、君よく夜中に外に出て女の子っぽい名前呟いてんじゃん。
あれか?恋人でも残してきた口か?」
「……違いますよ。俺の師匠にして幼馴染です。きっと心配してるんだと思います。まあ、俺も負けちゃいましたけど」
そうCブロックの最終試合で城宮君も負けてしまった。後は準々決勝を経て準決勝、そして決勝戦。そして優勝した奴が一桁数字への挑戦権を得る。
それでも、相手が悪かったと言うべきなのか城宮君は勝てなかった。ま相手が『闇姫』ともなれば仕方ないことなんだけど。
「闇に対抗できるのは光のみ。炎や氷なんかじゃ効かないよ。まさかこんな初歩の技術を知らないとは思わなかった」
「俺の世界には闇使いが稀なんですよ。だから教えなかったんだと思います」
「それでも、だろう。まあ、君にとっては面白い物になるかもしれないな。この試合は」
あいつは四元素――――つまり火、水、風、土を自由自在に操る力を持っている。四種の精霊と契約している唯一の存在だ。それ以外は多くて二種類、できないなんてのもざらだ。
ちなみに俺はできない。できなくても問題がある訳じゃないけど、できた方がその種類の魔術の威力が上がる。だからできた方がいいって類だ。
レジルの試合が始まった。相手は彩夏だった。ああ、可哀そうに。レジルは女性には手加減する奴だけど、それでも実力的にもまだ足りないな。
『それじゃあ、よろしくお願いします。』
『こちらこそ。その腕輪を外す時間ぐらいは待ちますけど?』
『あ、そうですか?ありがとうございます』
彩夏が腕輪を外すと、服の色が全体的白くなった。他の色を知らない雪のように。
『さあ、始めましょう。「最終元素」!』
『「最終元素」か……。それなら僕も全力を出すとしようかな。
来て、我が契約せし精霊達よ!』
すると、レジルの周りに四体の精霊が表れた。炎を纏う者、体が水でできている者、土でできている者、風を纏っている者。
さて、これに一体どう対応するんだ?これは確かに今日を締めるのにいい試合だな。
『ジール、こいつ焼いちまっていいのか?』
『できれば焼くのは勘弁してあげてよ、イフリート。それに多分そこまで力は使えないよ。最終元素が相手じゃね』
『あ、ほんとだ。全てを『零』へと返すために作られた能力。それは私達と相性悪いしね』
『そうそう。それじゃあ、一気にフルパワーで行くよ。準備は良いかい』
『別にいつでもいいぞい』
『あたしも―。楽しめればそれでいいし』
なんか楽しい精霊たちだな。そんな事を思っていると、精霊達を集めて魔法陣を作り出した。そして一気に魔力を込めて四種の力を込めたビームを放った。
対して彩夏が取った行動と言えば、右手を向けて何かをつぶやいていた。だが、その言葉を訊いて会場に居た有数の実力者は揃ってこう思った。
――――こいつはやばい、と。
『その力を零へ。終わりは始まり、始まりは終わり。さあ、始原の世界へ還れ。「最終元素」』
手袋から白い波動が流れ始め、光に触れた途端に光が気化した。おそらく、多分魔術としての効力を破壊されてマナに戻ったんだろう。
言っておくが、もうすでに魔術となった物をマナに戻すのはとある職業に就いている奴ら以外不可能だ。その職業は破壊師(ブレイカ―)だ。
まんまだろ!という声は無視する。その職業についてる奴らがするのは、基本的に呪いを受けた人の呪いを破壊する事だ。そういう意味では、解呪師と言った方があってるかもしれん。
まあ、裏稼業もしてる連中だからそんな不名誉な名前で呼ばれるんだけど。それはどうでもよくて。
『これが最終元素の実力……。なるほど、これが忌み嫌われている理由か。敵だったら末恐ろしいけど、味方だったらこれほどいい能力はないでしょうに』
『あの……レジル様は私の事を嫌ったりしないんですか?』
『なんでさ?嫌う理由も恐れる理由も僕にはないよ。それは慎也だってそうだろうし』
『私の事を受け入れてくれたのは、両親と師匠と弟子の人たちだけだった。勝てないまでも一矢報いてみます!』
『もう突破口は見えたけどね。イフリート!ノーム!』
レジルは地面の柱を立てて、そこに一気に火炎をぶつけて砂埃を起こした。そして名前を呼んでいなかったが風の精霊でその砂埃を落ちないようにしていた。
そして一気に炎をぶつけて粉塵爆発を起こしていた。鉱山の事故とかで有名な現象だ。おそらく空間制御で鉱山と同じ状態にしてるんだと思う。
この事からもわかるように、ぶっちゃけ空間制御ってチートなんだよね。まあ、その技も最終元素によっては阻まれたんだけど。
掌に魔力を纏って強烈な、それこそ空気に振動が広がるほどの威力で掌底を叩きこんだ。唾液を吐きだして彩夏は気絶したようだ。
まあ、粉塵爆発をくらって重傷。なんて訊いたら俺は間違いなくレジルをぶん殴ってるけどな。まあ、これで今日の日程は終了だな。




