プロローグ・創壊魔のいる世界
辺りは物音が一切もし無い真っ暗な空間。
そんな空間にポツンと1人の少年が立っていた。
「……あれ?俺、確か……」
少年は辺りを見回す。
「……あ、そっか」
ふと先程までの出来事を思い出したように、
目を見開いた。
「俺……死んだんだ」
ーーーーーー
数時間前。
ーーーチュンチュン。と外から
穏やかな小鳥の鳴き声が聞こえて来る。
小鳥の鳴き声とは別に、ある部屋からは……
ーーーー ヴゥゥゥッ!!ヴゥゥゥッ!!
荒立た強い、アラームの音が
部屋に響き渡っていた。
「……んぁ、朝ぁ?」
黒髪の少年がスマホを手に取り、
アラームをポチッと止めてしまった。
「……休みなんだから、もう少し」
小鳥の鳴き声と共に少年は再び
ゆっくりと目を瞑った。
ーーーードダドダドダドダドタ。
部屋の外から階段を駆け上がる
足音が部屋まで響き渡って来る。
次の瞬間。
勢い良く部屋のドアが開かれた。
ーーーーバタン!!!
「創! あんたそれ何度目のアラームね!!」
部屋に入って来たのは、髪を低めの一つ結びにした母だった。
「全く!もう昼の1時だって言うのに!あと一週間で高校生なんだから、早起きくらいしなさい!」
怒鳴りつつ、部屋の締め切ったカーテンを
勢い良く開ける。
ーーーーザッ!!!
「まぁ、そんなカッカしないで、まだ一週間もあるんだから大丈夫だってばぁ……」
母を横目に呟き、もう一度目をゆっくりと瞑ろうとしたが、母が少年"創"の掛け布団を引っぺがした。
「早く起きなさい」
「……ハイ」
ーーーーーーー
数分後。
創は、リビングのダイニングテーブルで
朝食……ではなく昼食をゆっくりと食べていた。
『ーーー次のニュースです。昨日午後八時頃、
イカのような姿をした“創壊魔”が……』
ふとテレビのニュースが目に入った。
テレビには、イカのような姿をした者が
大きな足を使い、車や電柱を薙ぎ倒している様子が映されていた。
「あれ、ここ隣の県じゃん。怖いねぇ〜」
他人事のように呟きながら
洗濯がパンパンに入った
カゴを持った母が、創の後ろを通って行く。
創壊魔と言う言葉に、
創の頭の奥にあった記憶が蘇ってくる。
(創壊魔か……そういえば……)
ーーーーーー
それは、まだ創が7歳の頃の記憶。
草が生い茂ったボロボロの公園。
そんな子供1人も無い公園内に、全身が真っ黒、顔には黒い霧で出来た仮面を付けた小柄な
創壊魔がベンチにポツンと座っていた。
仮面には、黄色く丸く光る目が二つ。
黒い体には、複数の傷が残っており、
赤黒い血が流れていた。
「……だいじょうぶ?」
そんな創壊魔に声を掛けたのは、
虫あみとりを持った創だった。
「……」
創壊魔は何も言わずに、顔を背けた。
「……ちょっと待ってね!」
すると創は、ポケットから大量の
絆創膏を取り出した。
「これ貼ったらね、痛いの止まるんだよ!」
創壊魔は、されるがまま絆創膏を
何ヶ所も貼られた。
「ほら! 痛いの、見えなくなった!」
嬉しそうに言う創に釣られて、
創壊魔も少しだが笑ったような声を出した。
「ねぇ?君の名前は〜?」
「………」
無口のまま創壊魔は、顔を横に振った。
「……無いって事〜?」
創壊魔は軽く頷いた。
「じゃあ〜……僕が決めてあげるよ!」
元気良く言うと、目を細めながら
創壊魔へ顔を近付ける。
「君の名前はね〜……そうだ!!」
その瞬間、顔を離し興奮した声で叫んだ。
「カゲ!カゲにしよ!!!」
そこで記憶が途切れる。
ーーーーーー
(……あの創壊魔は、どこへ
行ってしまったんだろうな)
そんな事を思いつつふと下に目を向けると、
手元には空になったお茶碗が残っていた。
(……早く片付けて部屋戻ろ〜)
ーーーーーーー
夕方5時頃、創が部屋でゲームをしている最中。
ーーーガチャ。
「創〜、今から買い物行くからついて来て。」
母だ。
「ごめん、今日はぐうたらするのに忙しいから〜」
創は母に顔を合わせもせずに答える。
「あんた昨日もそう言って
付いてこなかったでしょ」
「……どうでしたかなぁ?」
少し焦りを見せつつ、テレビ画面に顔を近づける。
「分かった。来なくていいからそろそろ
前貸した500円返してくれない?」
ため息を零し、部屋のドアを
閉めようとした瞬間。
「オカン何してんの?ほら早く買いもの行くよ!」
いつの間にか出かける準備を終わらせていた
創が母の目の前に立っていた。
「……500円はいつか返してもらうからね?
ちょっと?聞いてるの!?」
創は逃げるように階段を降りて行った。
ーーーーーーー
1時間後。
買い物を終えた創は、母の背中を追うように
スーパーのドアから出てくる。
スーパーを出る頃には、空は薄暗くなっていた。
「……あ、ちょっと俺トイレ」
創は、母に買い物袋を手渡した。
「えぇ〜、じゃあ先に車乗っとくよ?」
そう言うと母は、駐車場に停めた車の方へ歩き出す。
「んじゃ、ちゃちゃっと終わらせて……」
創も、母の背中を見送るとトイレへと向かって足を進ませた。
その時。
ーーーードゴォォォォン!!!!
いきなり、壮大な音と共に地面が大きく揺れた。
「うぉ!?なんだ!?」
創は、直ぐに音のした駐車場へ目を向けた。
「……えぁぁ!?」
駐車場内には、昼間ニュースで見た巨大なイカが駐車場内の車を次々と足で踏み潰し移動していた。
「イカ!?デッカ!?」
イカに目を取られていると、
先程車へ向かって行った母の事を思い出す。
(……おかんは!?)
とふと慌てて自分の車の方に目を向ける。
そこにはイカの足の下敷きになる寸前の母が見えた。
「ーーーおかん!!!!」
創は考えるよりも先に足が動き
ーーーードンッ!
気が付けば母を突き飛ばしていた。
創の真上に影が落とされ
ーーーーーグヂャッ!!!
鈍い音と共にそのまま創は
イカの足に叩き潰された。
ーーーーーーーーー
……
……
「………あ?」
ふと創が目を覚ました所は
何も無い真っ暗で物音一切しない空間。
「俺、確か……」
気づけば、着ている服も変わっている。
上下ともに、やけに真っ白な服だった。
「そっか、俺……死んだんだ……」
そう言いその場に、伏せてしまう。
伏せる中、母への心配が頭に積もる。
「おかん、突き飛ばしちゃったけど、
怪我して無いかなぁ……。
あの後、逃げれたのかなぁ……」
心配だ。
すると、前方の方が少し明るくなった。
「何だあれ?」
顔を上げると暗闇の先が光り輝いていた。
「……そういえば、俺死んだのに、こうやって
まだ自分の意思は残ってるよな?……つまり?」
その瞬間、創は目を見開き
勢い良く立ち上がった。
「……もしかしてコレってよくある
異世界転生ってやつぅ!?!?」
一気にテンションが上がり
そのまま光の方へと歩き始めた。
「記憶を持って転生するなら、まずお金に余裕がある優しい両親の子になりてぇぇぇ……。それで、顔もスタイルも良くて、美女に囲まれて寝るんだ!!!」
口角が上がる。
「いや!とりあえず剣と魔法が混じり合う異世界に行って俺も力を使って……んふっ、んふふふふふぅ〜……」
妄想が止まらない。
1人の妄想でテンションが上がり、
ニヤけが止まらない創。
「いや、次の転生先は……豚だな」
「……は?」
一瞬にして、妄想が止まる。
創はとっさに後ろを見ると、そこには黒い服に黒い霧のお面を付けてる人らしき生物が立っていた。
「あ〜悪い悪い、豚じゃねぇな。犬……いや、虫かもな?」
「おい!そこの黒い奴!勝手に俺の転生先を予知すんじゃない!本当にそうなったらどうするんだって、誰だお前!?」
その瞬間その生物のお面を見て記憶の中に
あった物が一気に浮かび上がって来た。
「その仮面……まさか、"カゲ"!?」
小さい頃公園で絆創膏を使って
助けてあげた創壊魔を思い出した。
「お前、いい加減その名前で呼ぶのやめろよ……」
「いや、だってカゲはカゲだろ?」
創が当たり前のようにいい返す。
「にしてもカゲ、背伸びた?俺超えてるじゃん……」
「そう言うお前は昔と余り変わらねぇな?」
「うるせぇよ!一をこう見えて、平均男性の160cmには行ってるんだよ」
不貞腐れながら呟く創。
するとカゲは空気を変えるように真剣な表情を浮かべた。
「なぁさっきも言ったがマジで次は、人間以外に
なる可能性があるのに転生すんのかよ?」
「だからやめろって!?心配になってきた
だろ!?それに前世のぐしゃぐしゃの体に
戻るなら転生した方がマシだし!」
「完全に体が戻ってても、か?」
「だから、俺はもう決め……え?」
カゲの言葉に思考が止まった。
「今元の体に戻るならお前が創壊魔と戦えるぐらいの力をやる」
「そ、創壊魔と?な、何で?」
「今回見たいに創壊魔がいきなり、
襲いかかって来たら為す術がないだろぉ?」
そう言い、腕を組む。
「本当に嫌ならこの話は無かった事にするが……どうすんだ?」
カゲの圧に、押されてしまう。
「も、戻りたいです」
「決まりだな」
カゲは分かっていたように軽く頷いた。
「後、お前の事潰したイカは
黙らせてやっといたから感謝しろよ?」
カゲの言葉に創はふと疑問が湧く。
「……なぁ、なんで今になって俺の事
こんなに助けてくれるんだよ?」
「そうだな……」
少しの沈黙の後、カゲが答える。
「仮を返した、的な感じだ。あんま深く考えんな。」
「はい?」
次の瞬間。
ーーガクッ!!
考える暇も無く、落ちた感覚と共に
画面が暗転し意識が遠くなっていった。
ーーーー
……
……
「……あれ?」
目を開くとそこには、白い天井。
気が付けば創は病院のベッドに
横たわっていた。
「カゲ?」
だが、そこにはもうカゲの姿は無かった。
「あ、やっと起きた。」
声の方へ顔を向けると
隣には丸椅子に座る母がいた。
「えっと…起きて早々なんだけど、命貼って潰された息子に最初の言葉がそれでいいんですか?」
「……何言ってんの?あんた潰されてないでしょ?」
母がキョトンとした顔で語り続ける。
「創がオカンの事を助けようとして突き飛ばして助けてくれた所まで覚えてるんだけど……」
「はい?」
創は頭の中が整理出来ず、少しの沈黙が流れた。
やがて母は医者に呼ばれ、部屋には創1人だけになった。
「そう言えば力くれるとか言いてたよな……?」
カゲとの会話を思い出し疑問に思う。
創は片腕を前に出し「……ファイアー」と唱えた。
が何も起きなかった。
「……な〜んてな」
創は目を瞑り鼻で笑いながら腕を
戻そうとした時
「ん?」
手に何か重みを感じた。
ふと手元を見るとタガー2本の持ち手が
繋がって、弓のような形になっている武器を
持っていた。
「……何コレ?」
その後、創は特に体に以上は無く、その日に退院する事が出来た。
ーーーーーーー
あの日から、1週間後の朝。
ーーーー ヴゥゥゥッ!!ヴゥゥゥッ!!
いつものようにスマホのアラーム音が部屋中に鳴り響く。
「ん〜、もう少しだけな……」
アラームを消し布団を被る。
それと同時に
ドタドタドタドタ!!!
階段を駆け上がってくる音が響いた。
「ちょっと創!!今日から高校でしょ!?電車は間に合うの!?」
母が焦りながら部屋に入って来た。
「……は!?」
創は勢い良く体を起こし、スマホ画面へ目を向けた。
「やべぇ!!後15分しかねぇじゃん!!」
バタバタと準備をしながら玄関へと向かう。
「創!ご飯は?」
「時間ない!」
「忘れ物は?」
「多分ない!!」
荷物をまとめ玄関で靴を履き始める。
「創」
「だあもう!?何!?」
焦りながらも振り向くと、
母は優しい顔を浮かべていた。
「行ってらっしゃい」
唖然とする創だったが玄関の扉を開けると
「行ってきます!!!」
強く声を上げ手を振り家を出ていった。
プロローグ読んでいただきありがとうございます!
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