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異世界に転生したのでタイ料理店を開きます!   作者: ファースト
転生

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第1話:平凡な青年と深き森の謎の食材

「うーん……」


俺は喉の奥で低く唸り声を上げた。最初に感じたのは、地面の湿り気と、鼻をつく青臭い葉の匂いだった。ゆっくりと目を開けると、視界に映ったのは見慣れた狭くて白い部屋の天井ではなく、頂上が見えないほど高くそびえ立つ巨大な木の天蓋だった。その葉は奇妙な水色をしている。隙間から差し込むかすかな陽光が、周囲の風景をまるで夢の中のように見せていた。


俺は四つん這いになりながらも、なんとか上体を起こした。そして、昨夜寝る時に着ていたお気に入りのグレーのTシャツとスウェットパンツについた泥や草を払い落とす。


「ここは……どこなんだ?」


俺は一人つぶやいた。その声は静寂に包まれた森の中に響き渡った。試しに自分の頬をつねってみる……。痛い。どうやら夢ではないらしい。


最後の記憶は、休日に牛すじ肉の煮込みクイッティアオ・ヌアトゥンを作ろうと思って、牛すね肉を煮込んでいた時のことだ。ダイニングテーブルでうっかり寝落ちしてしまい、次に目覚めたらここにいた。神様が転移させてくれたわけでも、女神様が祝福を与えてくれたわけでも、天からのアナウンスがあったわけでもない。すべてがわけの分からないまま起きていた。


俺は一つ、深大なため息を吐き出した。そして、自分の状態を注意深く確認し始める。武器もない、財布もない、スマホもない。あるのは自分の体と、今履いているビーチサンダルだけだ。幸いだったのは、体が元の俺のままであることだ。子供になっていたり、奇妙な魔物になっていたりすることはなかった。


暇な時によく読んでいた異世界小説を思い出してみる。もしかして、ステータスウィンドウみたいなものがあるんじゃないか?


「ステータス」


俺は宙に向かってそう口にしてみた。


ピコン……。


すると突然、目の前に半透明の青いボードが本当に現れたのだ! 俺は驚きで目を丸くし、そこに書かれている文字に視線を走らせた。


【 名前:パーキン 】

【 種族:人族 】

【 レベル:1 】

【 職業:なし 】

【 HP:100/100 】

【 MP:10/10 】

【 固有スキル:料理 (Lv.1)、食材鑑定 (Lv.1)、解体 (Lv.1) 】


ああ……。身の毛がよだつほど、あまりにも平凡すぎるステータスだ。MP10なんて、一体何に使えるっていうんだ? お湯を沸かすために火をつけることすらできるか分からない。持っているスキルも料理に関するものばかり。この世界は、俺に料理人になれとでも言っているのだろうか? 身を守るための戦闘スキルの一つくらい、くれてもいいだろうに。


グゥゥゥ〜。


これ以上文句を言う間もなく、俺の胃袋が激しく抗議の声を上げた。そうだ、昨日の夜から何も食べていないじゃないか。急激な空腹感に襲われ、俺は思わずお腹を押さえた。


「よし、文句を言っても始まらない。まずは何か食べるものを探そう」


俺はそう自分に言い聞かせ、慎重に周囲の探索を始めた。この森は非常に豊かで、どの木も異常なほど大きい。道中、頭に小さな角が生えたリスや、虹色に輝く羽を持つ鳥など、見慣れない奇妙な動物たちが走り抜けていくのを目にした。しかし、彼らは俺を怖がっているようで、姿を見るなりすぐに逃げてしまったため、俺も深く気には留めなかった。


しばらく歩くと、俺の目はある低い茂みに釘付けになった。それはギザギザした縁のある深緑色の葉っぱで、小さな白い花が混ざっていた。その香りは、鼻腔を強烈に突き刺す。この香りは……まさか……。


俺は手を伸ばして葉っぱを一枚ちぎり、軽く揉んで匂いを嗅いでみた。


【 スキル『食材鑑定』が発動しました 】

【 蒼色のワイルドガパオ(ホーリーバジル):独特の強い香りを持つ野生のハーブ。ガスを排出し、体を温める効果がある。風邪薬として煎じて飲まれることが多い。 】


「おい! これ、完全にガパオじゃないか!」


俺は歓喜の声を上げた。その香りは元の世界のガパオの葉と全く同じで、いや、むしろそれ以上に香ばしく強烈だった。俺の脳は猛スピードで回転し始めた。ガパオがあるなら……あとは肉と唐辛子が少しあれば……。


バキッ……。


後ろから乾いた木の枝を踏む音が聞こえ、俺はビクッと体を震わせて勢いよく振り向いた。そう遠くない場所に、ゴールデンレトリバーほどの大きさの生き物が俺をじっと見つめていた。イノシシのような姿をしているが、燃え盛る炎のような赤い体毛に覆われ、唇からは鋭い牙が突き出ている。


【 フレイムボア (Lv.2):低級の魔物。森の浅い場所に生息することが多い。肉は硬く獣臭いが、適切に調理すれば濃厚な味わいになる。 】


その目は真っ赤に血走り、前足の蹄で地面を蹴り上げている。まるで、今にも俺に向かって突進してこようと準備しているかのようだ。


やばい……。俺のステータスはまだレベル1だぞ。こんな巨大なイノシシと、どうやって戦えばいいって言うんだ!


俺はゴクリと固唾を飲み込み、一歩、また一歩と後ずさりした。しかし、そのイノシシは俺を逃がすつもりはないらしかった。喉の奥で唸り声を上げると、信じられないほどのスピードで俺に向かって猛突進してきたのだ!


「うわっ!!」


俺は本能に従って横に飛びのいた。イノシシは俺の後ろにあった木に激突し、木の皮が粉々に飛び散った。やつはフラフラと頭を振っている。今しかない。俺は、地面に落ちていた手頃な太さの木の枝に目を留めると、慌ててそれを拾い上げ、しっかりと握りしめた。


イノシシが再び俺の方に向き直った。大きく口を開け、噛みつこうとしてくる。俺は突進してくるタイミングを見計らい、ありったけの力を込めて、手に持った木の棒を奴の眉間めがけてフルスイングした!


ドゴォッ!!


「ギィィィッ!!」


イノシシは甲高い悲鳴を上げ、地面に転がった。二、三度ピクピクと痙攣した後、完全に動かなくなった。目の前にシステムウィンドウがポップアップする。


【 フレイムボア (Lv.2) を討伐しました。経験値を 15 獲得しました 】

【 レベルが Lv.2 に上がりました 】


俺はヘナヘナと座り込み、激しく息を荒げた。心臓が胸から飛び出しそうなほど早鐘を打っている。ったく……危ないところだった。初日からいきなり洗礼を受けるハメになるとは。だが、動かなくなったフレイムボアの死骸を見つめていると、さっきまでの恐怖は綺麗さっぱり消え去っていた。無意識のうちに、俺の口元に笑みが浮かぶ。


「新鮮なイノシシ肉……それに、野生のガパオ……」


俺はペロッと唇を舐めた。体の中にある『解体』スキルがウズウズと震え始めている。どうやら俺の異世界での最初の食事は……『イノシシ肉のガパオ炒め』になりそうだ! こうなったら、ガツンと刺激的な辛さにしてやる。疲れなんて吹き飛ばすくらいにな!

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