第二十九話 「しりうす」こうぼうせん4
地球国連軍は、L4を守護するために残した第五艦隊の巡洋艦2隻以外のL4制圧艦隊をL1へと投入した。
SHI-03シリーズ、特にダイチ達のようなエース級の集中投入は、戦況を一気にひっくり返すには十分だった。
「うぉー!」
叫びながら弾をばら撒くシンゴ、
「ふ!」
的確に敵機を撃破するカズアキ、
「よいしょ!」ひらひらと避けて蜂の一刺しならぬ強烈な一撃を撃つダイチ、
「いってらっしゃいませ、貴方達。ってこういう言い方でいいのかしら、上品って」
首をかしげながらもドローンを展開して、情報支援するマイ。
他の皆も大活躍して、もう艦載機は大半を撃破していた。
「うーん、お姉さんが遊んであげるのに、どこに行ったの、悪い子ちゃん達?」
ジェーンに掛かれば、無人機は「悪い子」らしい。
「Romeo11より各機、後は有人艦落とせば終わりだ」
「Romeo22、Romeo31、Romeo24、やってくれるな」
「了解!(ラジャー)」
「じゃあ、いくね、システムコマンド:ゲートバースト!」
ダイチがコマンドを宣言すると、トゥーイ、カズアキもバーストモードへと突入した。
カズアキは一旦後方により、近くにあった小惑星に機体を固定する。
ダイチとトゥーイは、輝く機体を帝国軍有人大型艦へと向けて突進していく。
ハリネズミのような砲撃の「雨」を掻い潜って、二人は敵艦に密着し、通常の攻撃の他にDC魚雷をどんどん打ち込む。
カズアキは、敵艦装甲の薄いであろう地点をバースト砲撃でどんどん貫く。
他の皆も周囲の無人機や無人艦を撃破していく。
「ここで活躍しないと出番ないかも」
愚痴りながら情報支援しつつ無人機を落とすナム、
無言でマイ達を狙う無人機を落とすジョー、
ここが暴れ時とバーストして無人艦に挑むトム。
「うぉー!!」
ダイチの突撃、密着気味の胸部LSP砲+盾フォースカノンが機関部に叩き込まれた時、有人大型艦は内部から爆発を始めた。
そして弾薬誘爆の後、1km以上の大型艦は消し飛んだ。
「CPよりRomeo中隊へ。お疲れ様です。皆さんは一端補給に戻ってください」
バーストを中断し母艦からの帰還命令を受けて帰ろうとした瞬間、ダイチは急に背中に寒気を感じた。
「これって殺気?」
急いで機体を反転したところ、前方の空間が歪んで何かがジャンプアウトしてくるのを見た。
そこから感じるのは強い殺気。
明らかに有人機体がそこにいる。
「おいおい、たかが田舎猿共に有人艦が苦戦していると聞いて来てみれば、もう全滅かよ」
「情けねぇなぁ。やっぱり植民星のボンクラどもじゃ当てにならんか」
今までの有人機とは違い、一回り大きい上に機体全体が金色に着色された「太ったザリガニ」1機と赤色に塗られた無人機が30機ほどジャンプアウトしてきた。
「こいつらは「人形」で戦うのかよ、おもしれーな。じゃ、お手並み拝見とするか」
帝国兵(?)の乗るザリガニ(仮称)は、近くにいたSHI-02Cに襲い掛かる。
「うわー!!」
一瞬の間に間合いに踏み込まれたSHI-02Cはハサミに捕まれ、真っ二つに押しつぶし切られた。
「Romeo11より各機、油断するな。コイツは今までとは違う」
「各機の判断でバーストしろ。無人機も強い。油断するな!」
トムは敵機から放たれる殺気を感じて、各機に命令を下す。
「あれ? これってオレ気配読んでんじゃね?」
まあ、こういうところがトムらしいけどね。
迫り来る無人機に苦戦するダイチだが、自分に迫ってくるザリガニに気が付いた。
「やるしかないか、保って頂戴ね、ボクの03。システムコマンド:ゲートバースト!!」
ダイチは、前回より殆ど時間をおかずにバーストした。
「この羽根付きのヤツはどうかな?」
帝国兵はハサミアームを振り上げてすれ違いザマに目の前の機体に叩き付けた、……筈だった。
しかし、地球の「人形」はフィールドの光に包まれ、瞬間移動のように移動して横に回りこみ、逆に帝国機へと剣を叩き付けた。
「なんだと!!」
帝国兵は、予想を遥かに超えた「人形」の動きに驚愕した。
「こいつが、強えーヤツか」
帝国兵はヘルメットの下で舌なめずりをした。
ダイチは叩き付けた剣の感触がえらく硬くて、敵機が装甲も普通じゃないのを実感した。
「こいつ硬いし、早いよ。火力もありそうだし、正直有人艦よりも手ごわいよぉ」
少し泣き言いいながらでもダイチは果敢に敵機に挑んだ。
ザリガニ敵機も、何故か執拗にダイチを狙ってくれるので、他に被害が広がらないのはダイチも助かる話。
「なんか、この人(?)、戦いを楽しんでいる。殺気も感じるけど、楽しいってのも感じちゃう」
敵機から伝わる感情を不思議に思うダイチ。
「Romeo11よりRomeo23、24へ。なんとかダイチの援護できないか?」
「こっちは無人機で手一杯なんだが」
「Romeo23よりRomeo11、こっちも無人機に集られていている上に近所に味方がいるから、同士討ちが怖くてフルバーストできないし、ダイチの位置は遠くて手が出せない」
「Romeo24よりRomeo11、ザリガニの動きが早すぎて射撃不可能」
「とりあえず無人機の足をスマート散弾で止めるので、先にそちらの片付けを願う」
誰もが手一杯だ。
「Romeo21よりRomeo11へ、ワタシとスーちゃんを守ってくれるなら、試してみたいのがあるんだけど」
「Oh!、『カワイイ ハ セイギ』攻撃ね! ワタシが二人のカバーするわね」
マイの通信に割り込むジェーン。
「Romeo32、33よりRomeo11へ、オレ達もスーを守るぜ」
「おー」
双子も割り込む。
「Romeo11から各機、お前ら通信規則くらい守れよ」
「じゃあ、それであのザリガニをエビフライにしてしまえ!」
「了解!」
「なかなか歯ごたえあるな、この「人形」」
「どんなヤツが操縦しているのかツラ拝んで見てぇ。タコとかウマ面じゃないだろうな」
戦いを楽しみに来ている帝国兵。
「でも、こいつばかりと遊んでいてもしょーがねぇから、勿体無いけど、仕留めるか」
帝国兵は、武装ハッチを開放して勝負に出る。
「Romeo21よりRomeo22、『カワイイ ハ セイギ』やるから、決着つけて!」
マイの怪しい(笑)通信で何をするのか理解したダイチ。
「Romeo22よりRomeo21、いいんちょ、やっちゃえー!!」
「Romeo21よりRomeo34、スーちゃん行くね」
「うん」
「「システムコマンド:ゲートバースト!!」」
二人のコールが綺麗にハモる。
二人の機体とドローンは輝くフィールドに包まれる。
そしてドローン達は急速にダイチとザリガニを囲みこむ。
「なんだ、このチビっこいのは?」
機体の動きを制限するドローン達に翻弄される帝国兵。
取り除こうとミサイルやレーザーを撃つもドローンを包み込むフィールドに邪魔されてしまう。
バースト状態での通信能力及び精神感応能力向上を利用してマイとスェーミは一身同体の様にドローンをコントロールしてザリガニを追い込む。
「スーちゃん、もうちょっと」
「うん、マイ。ワタシ頑張る!」
「うぉ、動けねー!」
帝国兵は、まんまとマイ達に追い込まれた。
「今よ、スーちゃん」
「うん」
「「ショット!!」」
二人は同時に叫ぶ。
ザリガニを囲みこんだドローン全てからザリガニの腹側廃熱スリット及び背中側ミサイルハッチにLSP砲が集中砲火する。
一個一個はたいしたことが無くても集中した攻撃は易々と分厚いはずのザリガニの装甲を貫く。
『動力廃熱部破損、背部ミサイルサイロ融爆』
ザリガニAIが電子音声で冷静に被害を報告する。
『主スラスター破損、動力炉暴走、機体限界です。』
「くそー、こんな手に引っかかるなんて、どうなってやがる!」
帝国兵は焦る。
動きが止まったザリガニを見たダイチ
「これでトドメだ!」
ダイチは剣にフィールドを集め、その上盾のフィールドカノンからもフィールドを放出して、大きなフィールドの剣を作り上げた。
そして両手と盾で持ったその剣を振り上げてザリガニの横腹から叩きつけた。
「ちぇすとー!」
「しょうがねえな、今回はこれまでだ」
「おい、聞こえているか、駐留部隊全部撤退だ」
「衛星は間に合わねえからシステム要所だけ破壊して、とっととずらかるぞ!」
そう帝国兵が言った直後にザリガニは爆散した。
ダイチの作ったフィールド剣は、ザリガニを真っ二つに切り裂くどころか、フィールドの余波で粉みじんにしてしまった。
「ふー、残心残心」
ダイチは油断しないように周囲を監視しながら、バーストモードを停止させた。
「あれ、逃げたよね、気配が爆発の前に消えたし。ま、いいか」
細かい事はいつもどおり気にしないのがダイチ。
「Romeo11よりRomeo22、よくやったなダイチ、これで正真正銘エース名乗れるぞ」
トムがダイチを褒める。
「Romeo22よりRomeo11へ、すいません。多分パイロットには逃げられました」
「それにまだ敵が残っているんですが」
「Romeo21よりRomeo22へ。ダイチ、どうやらさっきのザリガニが親玉みたいだったようよ」
「残っていた無人機はジャンプして逃げちゃったし、L3の方も敵が撤退しはじめたって」
指揮艦との情報リンクがあるマイ機には戦域の全情報を集めることが出来る。
ダイチ達が話している間にL1衛星の中央部で小さな爆発が起こり、衛星の機能が停止した。
「Romeo14より各機へ。各衛星の中央部で小爆発あり、その後機能停止を確認」
「どうやらこれで我々の勝利ですね」
「Romeo23よりRomeo22、ダイチ一体なんだよ、最後の雄たけびは?」
とりあえず落ちついたシンゴは不思議がってダイチに聞く。
「Romeo22よりRomweo23、あれは鹿児島に伝わる示現流という上段切りを一撃必殺技にしている剣術流派の掛け声なんだ」
「上段大切りの時に使ってみたかったんだよ」
バーストを終了しても、まだ興奮状態のダイチはネタを挟むのに容赦が無いのだ。
「おいおい、なんだよ、それ」
「いやー、『真っ向唐竹割り』、とか『天空Vの字切り』とか、剣を投げて『ソードビット』、とかネタは沢山あったんだけどね」
「Romeo11よりRomeo22へ、嬉しいのは分かるが、そういうバカオタク話は母艦に帰ってからしろよ」
「Romeo22からRomeo11、中尉って何で今のネタがオタクネタって分かるの?」
「う、いいから全機帰るぞ! いいですね、CP」
「はい、お帰りください」
CPの女性士官の声が笑っていたのはしょうがないだろう。
こうして、シリウス攻防戦は、ダイチ達の活躍で無事地球側の勝利に終わった。
とある部屋の中にある機械が静かな音を立ててハッチを開放する。
中から出てきたのは、まだ若い青年男性、凶暴そうだが整った顔つきである。
部屋に待機していた初老の人物が青年に話す。
「殿下、如何なされましたか?」
「いやー、やられちまったよ。まさか田舎猿があそこまでやりやがるとは。でもアイツら面白れーぞ。力押しじゃなくて策を弄して攻めてきやがる。そんな奴ら、今までの星に居やしなかった。しばらくは退屈しなくてすみそうだぜ」
青年は凄みのある笑いをした。
とりあえず、物語はここで一区切りとします。
自分の能力不足で、ダイチ達の物語を十分語れなかったのは悲しい事ですが、次回作までにもっと文才を上げて帰ってきます。
この作品も修正して、も少しマシな形で皆様のお目にかかれるようには致します。
では、一ヶ月の間、愚作にお付き合い頂き、どうもありがとうございました。




