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ある所に不思議な犬がおったとな

カズキと田所と一緒に頑張ります。

 夏の暑い日差しを受けて今日もまたオレは歩いている。

 毎日毎日決められたらエリアを黙々と歩いている。

 何の為?


 ーー生きる為かな?


 今のオレの仕事は一日8時間歩く、そんなお仕事。

 休憩時間はもちろんあるけれど、はじめの頃はかなり大変だったなぁ……

 毎日のように吐いたりしていたし、行くのも嫌な日があったっけ。

 仕事をはじめて三年……だいぶ筋肉質にもなってきて、昔の知り合いに会っても、誰かわからないんじゃないかな?

 今から4年前、オレが22歳の時に就職に失敗したのがそもそものはじまりだった。

 それまでは何でもそれなりに出来る子だったし、特に勉強らしい勉強はしないでもそこそこ出来た。

 体も大きく育って、バスケ部でレギュラーになる位には運動も出来る。

 将来の夢は『お医者さん!』と小さいころから憧れていたんだ。

 だけど、ある時になってふと気付いてしまう。


「あぁ、オレは医者にはなれないな」


 確かに頭は悪くないけれど、ずば抜けて良いわけではない。

 それでもコツコツ頑張れればいいのだけれど、その大切なやる気が欠如していた。

 周りには「やれば出来る子なのにもったいない」と言われていたけど、仕方ない。

 無いものは無いのだから。

 いつもいつも、楽な方に流されてきた。

 思えば、高校を選んだ理由も同じだった。

 先生との最初の面談の時のやりとりが、まさに楽な方に流される自分の生き方そのものだった。


「今から1年、しっかり勉強すれば○○高校も行けるが、今の成績だと●●高校……」


「じゃあ●●高校で!」


「じゃあって……そんな簡単に自分の進路を決めるんじゃ~ない!」


「どこに行ったって、結局はその学校で勉強するかどうかですから。入った先で、余裕を持って勉強をしていきたいんです」


 もちろん、余裕があれば勉強するなんて大間違いだ。

 余裕があれば、その分で楽をしたい、のんびりしたいとなってしまう。

 万事がこんな調子で、良い未来に手が届くわけ無いんだ。

 楽な方へ楽な方へ流されていれば、当然のように肥え太っていきました。

 就職試験に落ちて何か仕事をと考えたけれど、太っている、それだけで出来る仕事は限られていた。

 わかるかな?

 ユニホームのサイズが無い。

 だから、コンビニやらなんやらの店員すら出来ない。

 就職浪人に限らず、売れない芸人やミュージシャンはアルバイトしながら夢へ立ち向かうもの。

 それすら叶わないなんてとあの時はショックはかなりのものだった。

 痩せなければならない。

 痩せる為に必要な事は、運動。

 生きる為に必要な事は、仕事。

 運動しながらの仕事。

 更に、ユニホームの無い仕事。


 そして、一年間の何もしていなかった時間を経て、今は「ポスティング」の仕事、仕事歴3年となりました。

 ポスティングは、広告チラシを一般家庭のポストに入れる仕事。だからポスト+ingで、ポスティング。

 やってみて知ったことだけど、ポスティングは家に広告が届いて近隣に配るものだと思っていたが、その方式以外にも存在していました。

 決められた集合場所からみんなで車で移動して配布する。

 時間を決めて集まったらまた車で移動して配布。

 主婦や定年後のおじいさん達がやるイメージだったけど、意外にやりがいも感じられる仕事で自分の想像とは大きく違っていた。

 この仕事をはじめた頃を思い出していて肝心なことを思い出した。

 就職先を探していない。

 就職活動までのつなぎではじめたこの仕事が意外に楽しくて、だんだんと逞しくなる体型が嬉しくてすっかり忘れてしまっていた。

 そろそろ、これからどうしていくか真剣に考えなくてはいけない。

 このままじゃ毎日同じ時の流れるまま生きていくだけ。

 収入で考えてもずっと出来る仕事ではないこともわかっている。

 刺激のないおよそ人が羨ましく思わないどうでもいい一生の完成となってしまう。

 どこかに刺激は落ちていないかな~

 高収入の仕事もどこかにないかな~

 ついでにお嫁さんも~

 楽に生きられるならその方がやっぱりいいのにな……


~~~~~~~~~~~~


 さてと、もう一踏ん張り、早く広告を配って集合場所に戻らないと集合時間に遅れてしまう。

 最後は、この先にあるマンションに……

 目指した先のマンションとオレの間にこちらに向かって来る影が一つ。



????????




 ここは、日本だよね?

 周りの看板や標識がちゃんと日本語だ。

 間違いない。

 と、するとあの犬? は何だろうか?

 そもそも犬か?

 オレの頭の中の辞書にはあんな犬は居ないけれど、犬に決まっているのか?

 モコモコした全身毛むくじゃら。

 耳は頭の上にあってしっぽも見える。

 柴犬に近いか?

 近所に住んでる柴犬はもっと茶色だったような……白に近い?

 ただ、犬だとしてなぜ本を読んでいるんだろうか?

 いや、読んでいるかは疑わしいにしても、本を開きながら、ブツブツ言いながらこっちに歩いて来るのは間違いない。

 間違いないのか?

 2本足で歩きながら本を読んでいる?

 ペットに服を着せている人は数多く居るし、帽子をかぶせる人も中にはいるだろう。

 服を着ているのだから、どこかに飼い主が?

 服を着て、歩いているからには、相手を犬と決めるのは失礼か?

 でも、人として考えるには体長…身長が60㎝位しかないしなあ……

 身長が止まってしまう病気か!?

 だとしたら、病気にも負けないで本を見て勉強している努力家か?

 努力家なのか?

 いや、そういうことではなくて、このまま、「不思議なものを見たな」で終わらせるのか?


 あれかな、刺激を探したから神様が寄越したサプライズ!?

と、すれば相手の好意には好意的に対応するのがベストだろう。神様どうもありがとうございます。

よし、紳士的に……オレは紳士……紳士……紳士……誰が見ても紳士……紳士……



「お散歩ですか? ステキな帽子ですね!」



【彼の名前は大場(オオバ) 六輝(カズキ)。年齢は26歳。子供の頃から、手が温かく『優しい手』を持つ『優しい子』と言われていました。その手で触れると傷口がいつもよりも早く治るような気がする……だから、転んで泣いている友達を放っておけないそんな優しい子供でした。これから彼が巻き込まれていくお話の中のお話は、彼が望んだ楽な世界なのか? この時はまだわからないのですが、少なくとも彼の新しい世界が今、はじまるようです】

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