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番外編 Let's have a tea break in volcano!

リクエストの番外編です

 城の一角で、モンスター達が群がっていた。それも数体ではなく、このカンザラ城全体のモンスターを集めたかのような数だ。俺は気になって、その群れに近づいた。何体かが俺に気付き、ザッと道を空ける。その道の先にいたのは―――上機嫌にしっぽを振って座り込み、何かをしているアクアだった。


「あ、フィルバー様だ。何か用?」

「お前は一体何をしているんだ…」


俺の呆れかえったような声音を気にすることなく、そいつは「秘密ー。」などと言いながら作業に戻る。困ったような表情をしながら、小鬼が説明する。


「これはフィルバー様。実はアクアのやつめが散歩の途中でトイラを持ち帰るなどと言い出しまして…我々の制止も聞かず大量に持ち帰ってきたのです。それ以降、目的を問いただしても答えようとしないのです。」


見れば、アクアの傍らには大量のトイラの実が積まれている。そいつはナイフでトイラの固い殻をむき、中の果肉をすりつぶして粉末状にしていた。粉末は別の器に入れられている。さらに奇妙なことに、どこから持ってきたのか大量の水も汲んできたようだ。



 こいつの行動は謎なことが多い。第一、トイラの実は渋みとアクが強く、食用にも適さない。だからといってそれ以外の活用法がある訳でもない。だがこいつは鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌で何かをしている。




 トイラの実を粉末にし終えると、器に水を注いでこね始めた。はじめはただの粉と水だったが、こねるにつれて両者はなじみ、一つの白い塊へと変わっていった。その様子を、俺も含めモンスター達はじっと見つめていた。慣れているのか、その手つきは軽い。手品でも見ているかのようにトイラの実は変貌を遂げていく。やがて、手のひらくらいの小さな球状にちぎり、丸めていった。




 どこから用意したのか、アクアは三脚のような物と大きな鍋を持ち出した。その鍋に水を入れ、もう一段上に底に穴が開けられた奇妙な鍋を重ねる。上の鍋に、丸くなったトイラの実団子を鍋に入れていった。


「あ、誰でもいいから炎獣はこの下に入ってくれないか?」


そう言って、アクアは鍋を載せた三脚の下を指さした。訳も分からぬまま燃えさかる毛皮を持つ獣の一匹が、三脚の下に潜り込む。しばらくすると、しゅんしゅんと音を立てながら水蒸気が鍋蓋から上がる。


「…お前、本当に何してるんだ?」

「それはできてからのお楽しみ~」


嬉しそうにしっぽを振りながら、アクアは俺の質問をかわした。まったく、何を考えているのやら。俺には到底理解できない。





 器に、蒸気に当てられた団子が盛られた。…要は食べろという事なのだろう。しかし、誰もがトイラの実のまずさを知っているがゆえ、手をつけようとはしない。その一つを、アクアは二本の細い棒(箸というのだそうだ)でつかみ、俺の目の前に差し出した。


「フィルバー様、あ~ん」


正直、食べたくはない。だが、ここまでしておいて食べないのは失礼な気がする。俺は意を決し、口を開けた。弾力ある歯ごたえと、ほのかな甘みが口の中に広がっていく。


「うまい…」


思わず、そんな言葉がこぼれた。それを聞いたアクアはそりゃあもう大喜びでしっぽを振る。


「だろ?お袋には敵わないけど、おれだって練習したんだぜ!」


満面の笑みを浮かべる姿は、どこか微笑ましい。俺はもう一つ取って食べてみた。やはり、うまい。そんな俺の様子を見て、他のモンスター達も興味深そうに食べ始めた。どの顔も驚きに満ちているのが分かる。


「ありがとな。」


俺はアクアの頭をくしゃりと撫でた。そいつは耳を倒して甘えるようにすり寄ってくる。そんな顔を見ながら、俺はまた団子に手を伸ばした。

ブログの方に頂いたリクエストで、『フィルバー様とアクアちゃんでほのぼの』ということでした


 これはほのぼの…かなあ?

しかしまあ、モンスターがみんなして団子をほおばっていると考えるとシュールだよね

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