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46:公爵様はいつも・・・

-3ヶ月後-

「永代供養に変更ということでよろしいですか?」

「はい、遠くで就職が決まって・・・永住することになりましたので」

 私は少し離れたところで待っているノアさんに視線を移した。話をしている墓地の担当者の方もノアさんのほうを見る。

「・・・あの方はどなたですか?外国の方のようですが」

「え、その・・・し、知り合い・・・です」

 祖父母と両親のお墓がある寺は永代供養墓も持っていたのが幸いして、お墓の変更はスムーズに進んでいく。

 本当は異世界に持って行きたかったけれど、今まで眠っていた場所のほうが安心できるだろうと思ったら永代供養にしてもらうことで決心がついた。私は位牌と遺品を持っていければそれでいい。

 諸々の手続きをすませ、ノアさんのところに戻ると頭をなでられた。

「終わったのか?」

「うん、終わった。もう心残りはないよ」

「・・・・そうか。カールに頼めば、連れてきてもらえるから」

「うん、分かってる。ノア、手をつないでもいい?」

「ああ」

 ノアさんが差し出した手をそっと握ると、強く握り返してくれる。


 私のマンションの部屋は、なんと王国が買い上げてくれることになった。オディロンさんやカールさんが、私以外の異世界人に秘密がばれるのは困るからと言い、かけあってくれたのだ。

 だからアニーの部屋と私の部屋はこれからは王国と異世界とつなぐ部屋として存続していく。

「ミオ、どうした?」

「もうすぐこの世界ともお別れだなあとちょっと寂しくなったの。でも、向こうの世界にはアニーがいるから大丈夫」

「・・・そこは恋人の私がいるから大丈夫というとこではないのか?なぜアニーなのだ」

 ノアさんが小さい声でぶつぶつ言ってるけど、それはスルーだ。

「それに向こうに行ったら仕事が待ってるし」

「ミオ、本当にあそこで働くのか?」

 ノアさんがちょっと微妙な表情になる。私の就職先、ノアさんが見つけてきたのに・・・変なの。

「だって私、チョコレート好きだし。セルマさん、いい人だもん」

「確かにセルマは人柄がいい・・・ミオのことも気に入ってる。実際、私が話を持ち込んだら喜んで承諾してくれた」

「じゃあ何で微妙な表情をするの?」

「・・・セルマが私に関して何を言うのかわからないので、恥ずかしい」

「あ~、小さい頃から知ってるんだっけ。じゃあノアの子供の頃の話、聞いちゃお」

「セルマの話す私の子供の頃のことは、話半分に聞くように」

「はいはい」

 私がそういうと、ノアさんの眉間にシワがよって不機嫌そうな顔になる。だけど、それも可愛く見えてしまう私。


「ノア、これからもよろしくね」

「ああ。こちらこそよろしく・・・さあ、もう部屋に戻らないと。カールが来てしまう」

 私たちは改めて手をつないで、柔らかな日差しのなか駅までの道をのんびりと歩いた。




-------------------------------

 カルナステラ王国の「顔無し公爵」ことノア・クロンヴァール公爵は、最愛の女性を恋人にした頃から、以前よりは表情が柔らかくなったと評判になった。

 甘いものが苦手なはずなのに、彼は仕事の合間を見て必ず王都にある「セルマの菓子工房」に足を運んでいる。なぜなら、そこに彼の最愛の女性がいるから。

 よその地域の出身だというその女性は、王国出身の女性に比べると小柄で華奢だが、楽しそうによく働き、たちまち周囲に溶け込んでいった。公爵としては余計な虫が増えるのを心配していたらしく、牽制の意味もあって店に足を運んでいたらしい。

 公爵の周囲は2人がいつ結婚するのかやきもきしていたようだが、そんな2人が結婚したのはそれから2年後のことだ。

 結婚してからの公爵は、家族や友人以外の前でも少しだけ笑顔を見せるようになり、いつの間にか誰も彼を「顔無し公爵」とは呼ばなくなったのである。

読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


これで「公爵様はいつも不機嫌」は完結です。

恋愛タグをつけたものの、なかなか恋愛に発展しなくて

「タグ詐欺になるのでは」と常に心配な作品でした。

また、ノアは無愛想・無表情なので読者様に受け入れてもらえるかも

どきどきしながら更新していました。

幸いにも「ノアがかわいい」という感想をときおりもらえて

ちょっとホッとしております。


お気に入り登録していただいた方、感想を書き込んでくれた方

この作品を楽しんでいただいた方全てにお礼を言いたいです。

長い間お付き合いいただいて、どうもありがとうございました。

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