34:異世界滞在11日目-3
旅行者、王子様と散歩の巻
ノアさんがライナスさんとともに王宮に戻り、また私とユーグ殿下だけになった。
「さてミオ。これからどうする?」
「どうするって・・・ユーグ殿下を読書につきあわせるなんて出来ません。図書室に本を返却してきます。だから・・・」
「そうか。それでは私も図書室に行こう。公爵に頼まれたからな。約束を守るのは騎士の基本だ」
私に付き添わなくていいですよ、と言おうとしたらユーグ殿下に先んじられた。
ユーグ殿下は、ノアさんより少し背が高い。だけど私の歩くペースに合わせてくれるのはノアさんと一緒だ。
「ミオはどんな本を読んでいたのだ?」
「歴史に恋愛が絡んだ物語です。登場人物が多彩で話の内容も面白いです。そういえば、ユーグ殿下も図書室で本を読んでいましたよね。どのようなものを読むのですか?」
おそらく政治経済か兵法の本だろうな~。それ以外の本は“実戦に何の役にも立たん”とか言いそうだ。
「あのときは・・・確か詩集だ」
「えええっ!まさかの!!!」
「ミオ、それはどういう意味だ」
私の驚きっぷりがユーグ殿下には不快だったらしく、じろりとにらまれる。
「す、すいません・・・あの、てっきり政治経済とか兵法あたりがすきなのかな~と」
「それらも読むが、詩集は心が落ち着くからな。偏見だな、ミオ」
私ったら、人に偏見を持っちゃいけないって心がけているのに・・・まだまだ人間できてないな。
ちょっと落ち込んでいると、ユーグ殿下が私を見てフッと笑う。
「じゃあ、私の願いを聞いてくれたら許してやらないこともない」
さすが王子様・・・・上から目線の言動がよくお似合いで。でも、ビセンテ王子みたいな高圧的な感じじゃなくて、ちょっとふざけている感じなので、私も思わず笑ってしまう。
「願い事ですか・・・うーん、私にできることなら」
「簡単だ。私のことはユーグと呼ぶように。ミオにユーグ殿下と言われるのは・・・好きではない」
「そそそそれは無理です。好きではない、といわれても。王子様を名前を呼ぶことなんてできません」
「公爵のことは名前で呼んでいるではないか」
「そ、それは、ノアさんが“公爵命令だ”って・・・それにオディロンさんからも頼まれたし」
「オディロン先生からの後押しもあったのか・・・まあいい。ミオ、王子命令だ。私のことはこれからは“ユーグ”と呼ぶように」
「む、無理です!!ノアって呼ぶのだってなかなか慣れなかったのに、王子様を呼び捨てなんて無理です、無理!!」
慌てふためく私をユーグ殿下はなんだか楽しそうに見てるし・・・やっぱり、この人王太子と血がつながってる!!堅物かもしれないけど、似てるところがちゃんとある!!
それに、もしユーグ殿下をユーグって呼んだりしたら、絶対王太子をエルネスト呼びするはめになる。絶対なる。そしてノアさんが眉間にシワをよせてますます不機嫌に。
「せ、せめてユーグさん、にしてもらえませんか。ユーグ殿下」
「・・・・・」
私の妥協案も聞こえないふりをするユーグ殿下。
くそう、王子様といい公爵といい指図しなれてる人間は・・・・まったくもう。
「わ、わかりました。努力します。ユーグ殿下」
「努力というのは、すぐに始めないと意味がないと思うぞ?」
「うううう・・・意外と意地悪ですね、ユーグで・・・ユーグは」
すると、ユーグ殿下はさも心外だという顔をしたあとに笑った。
「意地悪?私は真面目だとはよく言われるが、意地悪と言われたことはないぞ」
だけど、最初に会ったころよりだいぶ互いに打ち解けたのは間違いなくて、私はユーグ殿下と散歩を結構楽しんだのだった。




