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24:異世界滞在9日目-1

旅行者、お礼状を書く。の巻

 ペルジェスのユーグ王子から私あてに大きな木箱で3箱もの果物が来ていると知らせがあったのは朝10時のお茶をアニーと楽しんでいる頃だった。

 外見はリンゴみたいな形で、色は薄いピンク。さわると桃のような感触でちょっと柔らかい。

「これはペルジェス特産のマルチェビですわ。美味な高級品として有名なんですよ」

「こ、高級品?!」

「もらっておきなさいよ、ミオ。返却なんてしたら問題よ。ペルジェス産のマルチェビが食べられるなんて嬉しいわ」

 アイノさんから聞いてびびっている私に対してアニーは嬉しそうだ。

「アニー、問題ってなんで?」

「王子からのお詫びの品を送り返したら、下手すると不敬罪に問われるわよ。打ち首よ、打ち首」

 ひえええっ、打ち首はいやあああ!!

「アニー様、冗談が過ぎます。不敬罪はせいぜい罰金ですむはずです。ミオ様、お礼状を送れば大丈夫ですからね?」

 ヘルガさんがアニーを諌めて、アドバイスをくれる。

「な、なるほど。お礼状ね。でも王子様相手に何て書けばいいの?」

「ミオ直筆の“大変結構なものをいただきありがとうございました”程度の簡単なやつでいいわよ。

あ、そうだ。ノアにアドバイスしてもらったらどう?」

「えっ」

「私がアドバイスしたいところだけど午後は公務が入ってしまってるし、お礼状はすぐに出したほうがいいわ。

 今日ノアに教わりながら書いて、明日のペルジェス便に乗せればいいわ。そのへんの手続きはライナスがしてくれるし。大丈夫、私が頼んでおくから。ね?」

 アニーはこれで解決と喜んでるしヘルガさんも異議を唱えず、午後になってノアさんの部屋に行くとすでに便箋と封筒の用意がされていた。



「えっと・・・このたびは結構なお品をありがとうございました・・・・早速王女殿下や王宮の皆様といただきました・・・」

「味の感想なども書いたらいいだろうな」

「なるほど・・・・う~ん、甘いけどさっぱりして食感が面白かったんだけど正直に書いていいのかな」

「・・・面白いはないだろう、面白いは。それにしても、大きな箱で3箱とは。よく昨日の今日で集められたものだ」

「んー、そこはやっぱり王子様パワーじゃないの?でも、驚いたよ」

 私は自分の部屋に届いた大量の果物を思い浮かべた。うん、あれはまさに王子様パワーとしか言いようがないじゃないか。

「ミオ、王子様パワーってなんだ。・・・・それより、本当に私の母へこれを贈るのか」

 ノアさんはそういうとサイドテーブルに置かれたカゴに入った5個ほどのマルチェビを見てため息をついた。

「だってさー、王宮の女性たち全員にいきわたるわけじゃないし。といって私やアニーだけじゃ全部無理だし。だったら、王妃様や公爵夫人に贈ろうって話になってね~。だからノア、お届けよろしく~」

「・・・・ますます家に招待するように催促されるではないか・・・・」

「?ノア、なんかいった?」

「・・・いや、なんでもない。礼状は書けたのか?」

「うん、なんとか。見てくれる?」

 私が差し出した紙を見せると、ノアさんは「まあ、いいだろう」と言い今度は宛名を書くようにと封筒を渡してきた。

「私の書いた見本どおりに書けばいい」

 なるほど。そりゃ間違いはないわな・・・私はノアさんの言うとおり宛名を書き、それを受け取ったノアさんが封蝋をし、ライナスさんに手渡す。

「はー。これですっきりだよ」

「ミオは礼状を書いたことがないのか?」

「んー、仕事の書類は作ることがあっても、お礼状ってないなあ・・・電話やメールで済ませちゃう場合が多いし」

「デンワとメール・・・異世界の通信手段か。さて、今日はどこか行きたい場所はあるか?」

「昨日やらかしちゃったし、おとなしく王宮内を散歩する」

「それは賢明な判断だな。じゃあ私も同行しよう」

「えっ!?ノアさん、別に来なくても大丈夫だよ??」

「ほう・・・私の同行は不服か」

 ひえええっ、ノアさんの顔が怖い!!ライナスさんのほうを見ると苦笑いして首振ってるし。

「それでは・・・同行していただけますか」

「最初から素直にそう言えばよいのに」

 ノアさんの表情が少し柔らかくなったような・・・気がする。でも、私が素直じゃないって言い方はなんかむかつくものがある。

 どっちかというと、言わされたような気がするのですが。

「ミオ、散歩に行くのだろう?」

「う、うん」

 私はノアさんに促されて椅子から立ち上がった。


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