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 貴族の結婚は男が女の家に入る通い婚だ。

 結婚は男が女の家に忍びで通い続けて、三日した後、いつの間にか仲良くなっているのが発覚したという前提で、親族家族を呼んで披露宴をする。

 その後は、正式な夫婦として、男は女の元に通い、結婚を続けるという形になる。

 そこは偶然結婚したように見えるが、たいてい結婚相手選びから話は決まっていて、単なる形式だ。

 それが美香子ではなく、美香子が居候になっている右大臣家の娘だと言う。

(まさか)

 にわかに外が騒がしくなる。確かに大勢、庭に人が出ている。誰かが来たのだ。大勢で出迎えるとなると、右大臣家にとって大事な人物だろう。確かにただの客人ではない。

「地方官吏が、出世を求めて、上級貴族の娘と結婚するのも、落ちぶれ姫が適当な相手にもらわれる話を同じく、世間ではよくあることよね」

「姫様、あまり悪く考えなされるな」

 松風は頭中将を推薦しているが、結局、美香子大事の忠義の家臣だった。

「出世がしたくて、高位高官の婿になろうと、気に入られようとする若者が世間には多いわ」

「それは・・・」

 落ちぶれ姫が下級官吏の家に嫁ぐのはよくあることなのだが、下級官吏が上級の家に入り、出世することも、また、通例よくあることなのだ。

 下の身分の者は出世するには、位階を上げるしかない。が、そこは身分の差、家柄の差などがあって、能力があっても出世しにくい。だから、上級貴族の婿になり、取り立ててもらうのは、出世の手っ取り早い方法なのだ。そのために、わざと高貴な姫君を狙う男たちもいる。

 美香子の苦悩が深くなった。

 受領が出世のために、美香子に近づいたのではないと思っていたから。

(でも・・・)

 相当に右大臣のために働いて、気に入られたかもしれない。

 でも、自分もいる家の娘亜子様との結婚などと、このような偶然があるだろうか?

 松風も不穏な顔つきで、外を見ようとする。

「ちょうど、今、東中門に到着したようでして・・・」

(折に触れて送られてきた文の時宜を得た色合い、そつのない文の文章や、格式ばった文字を見て、到底高位を望むような人間には思えなかった・・・なののに)

 受領が世間の若者と同じく、高位高官の娘を求めてやって来た?など、到底美香子には信じられなかった。何度考えても。

「とりあえず、見に行きましょう」

「はい」

 右大臣家の中を出歩くのは、止められていない。まだ、本心も目的も分からない。見たこともない男だ。松風といっしょに受領を見たかった。

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