表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

「なに、心配いりません。なら、このまま私の家に行きましょう。私の家なら茶でもお菓子でも何でもお出ししますよ、部屋もたくさんあるのです」

 断ったというのに、息子はさらに上を行く解答をしてきた。

「え?あなたの、家へ?」

「言ったでしょう。私はあなたを離さないのです。もう会った以上、あなたを離したくない。私が良いというまで、あなたは私のものとなるのです」

「ええと、そう言われても、その・・・私は、私のことを大事に思ってくれる方の文かと思って、その方の文と信じてここに来たので」

「文?文ぐらい、誰でも差し上げる。その人が書いたのも文なら、私の書いたのも文です」

「でも、私は、その人と文を取り交わす仲なのです」

「だったら、私もあなたへ文を送った。私もあなたと文を取り交わす人間です。私もあなたの想い人です、姫、なぜそのように、区別なさるのです、後から来たのも、先もないでありませんか、この思いを取り交わす道は」

(確かに。文を取り交わしただけの関係なら、この人とも同じとも言える。先でも後からでも、違いはない。本当の恋人になれるのは一人)

 勝手に優しく思いやりがある人と思い込んでいるけど、向こうの目的は単に、上級貴族と結婚して、身分の高い縁戚になりたいだけかもしれない。そうだとしたら、受領こそ間違っては選んではならない相手だ。

 いったい自分は誰を思うべきなのか。考えたら分からなくなった。

「なに、単なる私の友達として、家に来たらいい。それとも、私をあの家に招いてくれるのですか?温かい飲み物など、飲みたいのですが」

「頭中将様が所望されておられるのを、断るのは失礼ですぞ」

 お付きの警護の男も加勢してきた。どちら側からも挟まれて、美香子は困った。

「いえ、うちは、その・・・」

 ぼろ屋で、とうてい、人を招くような用意はない。ましてや、位階の高い右大臣家の子息などに、お出しするものは何一つもない。やはり、貧乏は困る。来られては、飲み物一つすら出せない。

「ああ、腰も痛くなって来たな、少し休みたい。では、私の家に行きましょう」

「え、でも、しかし」

「言っては何ですが、あなたの家では私をもてなすものも出ないでしょう。ですが、私の家なら、飲み物も食べ物もたくさんあるし、部屋もいっぱいあります。あとの話は、私の家へ、夜も更けてまいります。警護の兵士に見とがめられたら、内裏への私の仕事にも支障が出ますから」

「それは、私が大変ご迷惑をおかけするお話ですけど、ですが、ご招待すべき私が、あなたの家へついていくなどとなると・・・」

「いいでないですか、私は構いません。とりあえず、私の家で、お食事などをしましょう。後の話は、うちでゆっくりと話し合いを」

(どう返事を返そう)

 これ以上断ると、上の身分の者だし失礼になってきた。

 松風を見ると、こくこくと頷いている。姫様、行きなされと言っているようだ。

 都で一番身分の良い家だ。受領でも勧めたのだ。都一など、黄金の山と同じ。松風にとっては垂涎の的なのだ。

(姫様行きなさいませ。相手は右大臣家の息子。金持ちになれます)

 でも、本当に、この人の家に行っていいのかしら?

 考えたら考えるほど、分からなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ