表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/30

 いつ頃からだろう。受領から文が来るようになったのは。

(都人はいくらでも噂するから、私が父も母も亡くして、貧乏な暮らしをしていると聞いて、受領も、私の身分が欲しくなったのかしら)

 たいてい都人の噂は千里を駆ける。近辺の地方役人たちには即日届いて不思議ではない。高貴な娘が貧しい暮らしをしているのは、下級貴族らの好機の的だ。

(付き人の中年男の伝言ぐらいしかないから、相手の意図が分からないまま、なんとなく、物を受け取ったり、返事を書いたりしてきたけれど、・・・)

 相手の目的は分からない。受領の家の父親がそう言うのだろうか。

(どこのどなたか知りませんが・・・)

 受け取った文の数はかなり多かったけれど、嫌なものはなかった。連絡事項の伝達ばかりで、付き合うとか結婚の話はぜんぜんそういう、遠慮したというか、ぜんぶ、気を使った文だった。でも、藤の花が添えられた紙で書かれたものや、良い匂いのついた文だったから、嫌な気になることはなかった。

 なるはずはない。気を使われて。何か不足はありませんかと優しい言葉をかけられて。

(いったい、どういう目的で、私に近づいたのだろう?)

 顔も知らぬ、目的も知らぬ人の元へ歩んでいく道で、美香子の胸は相手の想像ばかりだった。

 痩せた背の高い人と、勝手に想像して、橋のたもとできょろきょろと探すが、どこにもいない。

「姫様、受領、来ていますか?」

「分からない、どこかにいる?」

 美香子の想像するのは、風格があり、凛々しい若者の姿だ。

 だが、その日、その時刻、反り橋では誰も若い人は通りかからなかった。日が暮れて、どんどんと人通りは少なくなっていく。

(果たして、自分が受領のもとに嫁ぐことで、受領の家は納得するだろうか)

 待つ間、いろいろな考えが頭をよぎった。世間の評判はどうなるだろう。

 受領も生活が決して裕福ではないのに、美香子の家に資金を送るのは負担だろう。旅の路銀はあったのだろうか。

 朝廷から位階を与えられているから、日々の努めがあるはず。なのに、わざわざ来てくれるとは、どういう風の吹き回しだろう?何かあったのか。

 それほど、美香子の姿を見たくなったのか。

(いきなり、変だわね)

 きょろきょろと周りを見る一瞬の間、美香子は考えつくかぎりのことは考えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ