第九十八話 嫉妬
え、なに?
突如聞こえたミランスとルロの悲鳴に身を構える。
……嫌な予感しかしない。
悲鳴が聞こえていいことなんてあるもんか。
ごくりと唾を飲み込み身震いひとつ。ディートの方へ向かおうとした、その時。
「レンーっ! 大変だZE! ミランスたちが落ちたYO(;´゜д゜)ゞ」
ディートが僕の方に駆け寄ってきた。
「ディート、なにがあったの?」
僕の質問に、彼は苦虫を潰したように顔をうつむかせる。
その仕草になぜかとてもイライラしてきた。
「えぇっとだな、手がかりがありそうな本があったから……、その、なんていうか、本を手にとってみたんDA! そう、ミランスたちのためになると思ってNA? だからオレは本を手に取ったんDA卍」
ディートのしゃべり方はたどたどしい。
その上、どこか自分を正当化しているようにも聞こえた。
「で、なにが言いたいの?」
「だからNA!? オレが本を手に取ったんDA! みんなのためになると思ってだZE! で、ほんのレイコンマ目を離してたら急にミランスとルロがたってたところに穴が空いたんだYO! オレビックリだったZE! まぁ、もちろん二人は落ちてNA……(笑)」
「笑えねーよ」
ディートはこの重苦しい空気を明るくしたくてちょっとおちゃらけたのかもしれない。
しかしそんなことより僕は反省した態度を見せてほしかった。
大切なミランスとルロを傷つけたかもしれないのに、のんきに笑うのは不謹慎にもほどがある。
なんだかとても怒らなければいけない気がした。
「能天気なのもいいところだ! お前はミランスのお供なんだろ? それなのにどうして彼女を護ってやれない? どうしてお前はそんなにも自由なんだよ」
「それは悪かった」
「悪かった、じゃない。ごめんなさい、だろ!? 非を認めるだけじゃない。謝るんだよ。ごめんなさいがどういう意味かもしらねーのか? 自分が悪かったと非を認め、相手を敬うんだぞ。そうしてもうしませんと誓うものだ。それが謝罪って言うものだよ」
口からどんどん責め立てるような言葉が出てくる。
そしてどんどんトゲトゲした口調になっていく。
ディートは黙っているだけだ。
「お前は自分の立場をわかってない。ミランスのお供だぞ。まず第一にミランスからレイコンマも目を離すなよ。なんで目を離す? あぁ、これのせいか」
僕はイライラした衝動に任せてディートのつけていたサングラスをはずした。
なんならついでにマスクも取った。
「……っ!」
思わず息を飲んでしまう。
素顔の彼はとてつもなくスマートだった。
黒の目が澄みすぎていた。
きれいだ。男の僕がうっとりと見惚れてしまうくらいきれいだ。
少し切れ目で美しい雰囲気が漂っている。
鼻も高く唇も血色がいい。
この人はダレがなんと言おうと「イケメン」に分類されるだろう。
今にも彼の濁りのない透明で凛とした瞳を見ていると引き込まれてしまいそうだ。
「レン?」
彼は僕を心配するように上目遣いをした。
とても嫌悪感がした。とても腹立たしかった。とても悔しくなった。とても怖かった。
……上目遣いが似合う男なんてイケメンだけだ。
お腹の下から黒いものがあがってくる。
「……とにかく! ミランスをどうしてくれるんだよ」
「すぐに探す予定……」
「予定、じゃねぇ。探すんだ」
ディートの澄んだ瞳は悲しげに細くなっていく。
なんだかそれがちょっと快感だった。
悦楽に浸っている僕は、目つきは悪いまま口角があがる。
「ミランスのお供なのに、どうしてミランスを守れない?」
僕の怒った口調には優越感がはりついているのかもしれない。
しかしそんなこと僕もディートも気がつかない。
彼はうつむいた。
なんだかもっと苦しめたくなってきた。
「やっぱりミランスのお供は僕のほうがてきめんみた……」
「ミランスのお供はオレDA!」
ディートは僕の言葉をさえぎり、大声をあげた。
普通にビックリした。
だってディートは僕の勢いに飲まれて反抗できないと思ってた。
「オレはクズでポンコツでとんちんかんかもしれないが、ミランスのお供DA(*`Д') レン、いい加減夢から覚めろYO!」
ディートは僕の肩をゆすった。
彼の黒い瞳には、僕の狂気に満ち満ちたブサイクな顔が映っている。
ディートの言葉のせいなのか、僕の表情のせいなのかはわからないが、急にハッと現実に引き戻された。
心臓がドキンと重苦しく脈打つ。
ディートは憂虞し、僕を温かくにらみつける。
「レン! ミランスはお前のお供じゃないZE! 今も、これからもDA!」
「……っ」
焦燥感が身体中を駆け巡る。
脳内が熱くなっていくのが感じられた。
「お前が望んでる未来は、悪いが来やしないYO!」
ディートは僕のために言ったのかもしれない。
しかしその言葉が僕に火をつけた。
こんにちは風音です。
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