ep.45 リア充回と思いきや実はここが初デート回だったりする
季節は冬休み。
願いを叶えてくれたお礼に、
満はTOWAの観劇チケットをもらう。
そこで満は、雲雀と共に
初めてのデートへ向かうことにー……
街のあちこちで、鈴のなる音楽が聞こえてくる。
今日という日を楽しみにしている人達が多いのか、見かける人達の多くが笑顔が見られた。
はぁっと吐く白い息が、空に消えてゆく。
何度も何度も手をこすりあわせながら、辺りをきょろきょろ見渡す。
「みっちゃぁん!」
そんな時、だった。
聞きなれた呼び名に、はいっ!と返事をしてしまう。
小走りでこちらに向かってくる彼女は、いつもと変わらない笑顔でー
「ごめんごめんっ! バスが遅れちゃって……待った?」
「い、いえっ!今来たところです!」
「え~? ほんとかなぁ~? 試しに手触らしてっ!」
「わあっ! ひ、雲雀しぇんぱい!?」
「あ、やっぱり冷たくなってる。やっぱりみっちゃんは嘘が下手だねっ」
えへへと意地悪そうに笑う彼女が、僕の手を温めるかのように包み込んでくれる。
そんな先輩の顔を見ないように、わざとそっぽを向いて見せた。
リアム先輩にチケットを貰ったあの日、僕は彼女―雲雀先輩を誘うことにした。
もちろん、TOWAが彼女にとって憧れであることを知っているからである。
話した時はすごい喜んでくれたし、僕がいいならと一緒に行くことになった。
そこまではいいんだ、そこまでは……
「こうしてみっちゃんとどこか行くのって初めてだよね? 彼氏なんて今までいなかったから、洋服とか選ぶの一苦労だったよぉ~」
「そ、そんな、雲雀先輩は何着ても可愛いじゃないですか」
「でもびっくりしたよ~まさかクリスマスに憧れのTOWAを見に行けるなんて! 最高のプレゼントをありがとうっ」
そう、これは僕と先輩が付き合ってから初めてのデートということ。
そして今日がクリスマスということ。
偶然とはいえ、よくできていると思う。
初めてということもあって、誘うか誘わないかですごく迷っていた時、二人から
「せっかくの会長のお礼でしょ?めいっぱい楽しんできなって」
「そうだぞ、満。俺達のことは気にしなくていいから、行ってこい」
と優しく言われたから、ようやく決断できたんだけど。
それにしても、雲雀先輩は本当にかわいいなあ。
丸いポンポンが付いた白いセーターに、赤いロングスカート。まるでクリスマスを意識したコーディネートだ。
僕も僕で、虹己君や恭弥君に手伝ってもらったんだけど……
「それじゃあいこっか、みっちゃん!」
そう言いながら、彼女ははいっと左手を差し出す。
慌てて手汗を拭き、自分の右手をそっと重ねたのだった。
有名な俳優、TOWA。そんな彼の舞台はやっぱりやっぱりすごかった。
観客席はほぼ満席で、彼目当てで来ている人がほとんどだった。
TOWAの演技はテレビ越しでしか見たことはなかったから、実際に見れるとは思わなかったけど……
初めて間近で見て、肌で感じて。やっぱり彼はすごいと思った。
一人だけ次元が違うくらいに上手で、見ているだけでその世界にひきこまれて……
「みっちゃん? みっちゃんってば、大丈夫?」
「はっ! す、すみません……余韻がすごくて……」
「あははっ、分かる。TOWAの出てるドラマ見てると、いっつもそうなっちゃってよくお兄ちゃんに怒られるんだよね~」
舞台観劇後、僕達は二人で最寄りのカフェに立ち寄っていた。
クリスマスの食事処は予約必須、という恭弥君のアドバイスのもと、よさそうなカフェを予約できたおかげだ。
案の定雲雀先輩は喜んでくれて、今もずっとTOWAの舞台の感想をしゃべっていたけど……
いやあ、本当にすごかった。他の作品、やっぱ見てみようかなあ。
「やっぱりTOWAってすごい……あのステージに、私もたってみたいなあ」
「先輩なら、絶対立てますよ」
「えへへ、ありがとう。みっちゃんのおかげで、なんか目標がさらに強くなった気がする。よぉし、頑張ろっと!」
おー! と拳を上にあげる。
そんな彼女に、頑張ってくださいと笑顔を向ける。
そういえば先輩は、卒業したらどうするんだろう。やっぱり演劇の道……だよね……
こんな疑問、聞いてしまえばすぐに解決する。
それでも口を開かないのはきっと答えを聞くのが少し怖いからだ。
知りたいけど、今は知りたくないような……情けないなあ、僕って。
「あ、そうだった! 今回誘ってくれたお礼に……雲雀サンタからとっておきのプレゼント!」
そんなことを考えていた時だった。彼女がはいっと、何かを手渡す。
それは赤色のマフラーで……
「プレゼントって……わざわざ用意してくれたんですか?」
「まあ、ね。買ったもので申し訳ないんだけど……」
「い、いえ! そんな、とんでもないです! むしろ僕がお誘いしたのに!」
「実はTOWAの舞台に誘われなくても、お出かけに誘おうって思ってたんだ。私、その……クリスマスにカップルで出かけるっていうの、ちょっと憧れがあって……」
そういいながら、彼女は照れるように頬をかく。
その動作が、言葉一つが可愛くて、愛おしくてどうしようもなくうれしくなる。
ああ、かなわないなあ。雲雀先輩には……
「ありがとう、ございます。このマフラー、大事にしますねっ」
「あはは、ありがとう。みっちゃんが嬉しいと、なんだか私まで嬉しくなっちゃう。そういうところが大好きなんだけど♪」
「なんか僕だけ貰うの、勿体ないなぁ……そうだ、先輩! せっかくですし、僕にも何かプレゼントさせてください! マフラーのお礼ですっ」
「え? いいの?」
「もちろんっ!」
「ありがとう、みっちゃん! じゃあ……一緒に選ぼっか」
初めて女の人と過ごす、クリスマス。
一秒一秒が楽しくて、嬉しくて……僕にとって、一生忘れられない思い出になりました。
(つづく・・・)
クリスマス、と聞くだけでリア充、爆発しろ!
と言いたくなりますが……
この子達、これが初デートなんです。
45話目にして初めてって、相当だなと思ったので
タイトルにもしてみました。焦れったい子達です
しかし、こんなに名前だけ出てくるTOWAって
一体、どんな人なんだろう……
と思っているそこの貴方!
『CLUB 〜きっとそれは伝説になる〜』
の作品を読めば、彼の正体に気づくはず!!
秋山先生の若かりし頃も見れるので、
きっとハマること間違いな……
え? 他の作品の宣伝するなって?
だってね、たくさんの人に二人の魅力を
わかって欲しいと思うのは
作者として当然じゃないですか。
……そう思いません?笑
次回は13日更新。
まさかのあのキャラのお話が…?
お楽しみに!




