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ep.31 この作品、脇役ほど目立ってるってお気づきですか?

季節は秋。校内はすっかり文化祭モードに!


様子がおかしい虹己を助けるため、

共に文化祭の実行委員になる恭弥と満。

そこで、結愛が触れられるという男がいると

聞かされる。


ミミルからの情報が少ない中、

彼らは真実を求めるため、ある人の元へ……


「きょうちゃんからお昼のお誘いだなんて、嬉しいこともあるんだねぇ~こうきんと満ちんも一緒じゃなきゃ、もっとよかったのになあ〜」


購買で買ったパンをほおばりながら、彼女は容赦なく思っていることを口にする。

なんかすみませんとばつが悪いように、僕は浅く会釈してみせた。


あれから翌日。一緒にお昼を食べようと、恭弥君が春夜先輩を呼びだした。

彼女は二人きりだと思っていたのか、僕達のことをよくは思ってないみたいだけど。


「すまないな、春夜。だが、こうして二人がいるのにはわけがあるんだ」


「ほほ~~~わけですか~~。春夜ちゃんのことで聞きたいことでも?」


「春夜のことではないのだが……鳳先輩は全員の男子が怖いんじゃないのか?」


食べようとしていた口が、ぴたりと止まる。

彼女は思い出したように「あ~」と声を漏らすと、またパンを食べて……


「それってもしかして、演劇会であったすみちゃんのこと言ってます~?」


「す、すみちゃん?」


小谷真純(こたに ますみ)~~結愛ちんのいとこさんなんだよ~あ、これ写真~」


初めて見せられたその人の姿は、みるからに怖そうで眼力だけで負けちゃいそうな気がした。

この人が鳳先輩のいとこ、か。


彼氏じゃなくてよかったと思うのは、僕だけなんだろうか。

同時にこんなに怖そうな人はいいのに、虹己君や他の人がダメなのはどうしてなんだろう……


「ふーん……いとこねぇ……身内はオッケーなわけ? あの人、そんなこと一言も言ってなかったけど」


考えていることは一緒のようで、虹己君が僕の心を代弁したかのように質問を繰り出す。

春夜先輩はん~と首をかしげ、思い出すようにゆっくりとした口調で話し出した。


「すみちゃんくらいだと思うなあ。結愛ちんにとってすみちゃんは救世主でもあるけど、ああなった元凶でもあるから~春夜的には複雑~」


「ああなった元凶?」


「すみちゃんって、ここらじゃ有名の不良さんでね~泣く子も黙るほど喧嘩強いの~」


ひえぇぇぇ……どうりで怖いと思ったわけだ。

確かにこの人と戦ったりなんかしたら、僕絶対勝てる気しないなあ。


「ちょうど一年前かな~結愛ちんがわる~い人につかまっちゃって~すみちゃんが助けに行ったんだけど……学校側に見つかって停学になって~結愛ちんもその時の恐怖で男の人ダメになっちゃって」


それが鳳先輩の、男性恐怖症の元……

確かに不良みたいな怖い人がいっぱいいたら、怖くなるのは当たり前だ。

僕が想像している以上に、いっぱい怖い思いをしたんだろうな。


「おかげですみちゃんは一年年上なのに今じゃクラスメイト~~春夜ともすっかり仲良しだよ~?」


「なるほど……そういう事情があったのか……」


「……だったらその小谷って先輩と彼氏になりゃいいじゃん。停学期間、終わったんでしょ?」


「生徒会の人は校則に従わなくてもいいんだって~特別ルールらしいよ~?」


せ、生徒会なんだ……不良なのに。

春夜先輩はいっぱいしゃべって疲れたのか、ジュースおごってと恭弥君におねだりをしてみせる。


虹己君も何か考えているのか、ずっと黙ったままだった。

これから僕は、どうすればいいんだろう。

そんなもやもやが晴れることはなく、ただため息をつくばかりだったー。




「やはり、生徒会関係者か。そうなんじゃないかって思ってたよ」


その放課後。僕は、早速ミミルと話をしたくて屋上に来ていた。

屋上にしたのは、誰にも見られなさそうな場所だったからである。

ミミルのことだからきっと話さなくてもわかってそうだなとは思ったけど、このもどかしい気持ちを吐き出したくて仕方なかった。


「ミミル、何かわかったの?」


「どーも俺はここの生徒会と相性が悪いらしい。お前が鷲宮との接触を避けられなかったのはおそらく、奴が生徒会に入っていたからだろうな」


鷲宮先輩が、生徒会に?

でも確か、生徒会は校則に従わなくていいって春夜先輩が言ってたのに……

そこまでして僕と雲雀先輩がくっつくのを防ぎたかったのかなぁ? うう、よくわからないなあ。


そういえば会長を見た時も、関与したくてもできない存在って言ってた気がする。

生徒会って、一体なんなんだろう……


「それで? あんた的にはどうしたいの? 虹己のこと」


「そりゃああれだけ悩んでたし……助けてあげたいけど……」


「お前と違って、あいつちっとも素直じゃないんだよねえ。言ってることと思ってること、真逆すぎるし……まあそれが面白いんだけど」


虹己君らしいなあ、と思ってしまう。

彼も彼できっと、心のどこかで鳳先輩のことが気になっているんだ。

それを認めたくないのかもしれない。だからどうしていいかわかんないんだ。

僕が何とかしてあげられたらいいのに……


「まあ、一応力は貸してやるよ。それが主である、お前の望みならな」


「あ、ありがとう……僕自身の恋は叶ったのに、次から次にごめんね……」


「望みは一個だけ、って決まりはねえしな。時間があるうちは何個でもかなえたい放題ってこと」


時間……? そういえばミミルって、いつまでいてくれるんだろう……?


「……うっせぇなぁ……静かにしろよ……人が気持ちよく寝てんのに……」


そんな時、だった。

ミミルじゃない男の人の声が、聞こえたのは。

屋上への入り口ドアを支えている小さな塔屋―その上に、人がいるのに気付いた。

ゆっくりと起き上がったその人は、僕に気付くと怪訝に顔をしかめ、


「……なんだ、一年生か」


とつぶやく。

軽い身のこなしでそこから飛び降りると、ようやくすべてが明らかになる。

なんともあろうことか、その人は……


「こっ、こここここ小谷真純先輩!?」


「俺のこと知ってんのか」


「ええそれはもちろん! すみません、お休み中だとも知らずにうるさくしてしまって! ああ、僕一年生の赤羽満って言いまして、そのおえっとお!」


「少しは落ち着け」


どうしよう、写真で見た人だ。

不良で、喧嘩ばっかりしてて、最近停学から帰って来て……

あわわわ、どうしよう! 僕、今日で人生終わっちゃうかも!


「なんだ……誰か他にもいたと思っていたんだが……一人にしちゃあ随分でけぇ独り言だな」


「あわわわわわ! 本当にすみません! 以後気を付けます!」


「お前、一年だよな? なら、相良虹己って奴知ってるか?」


いきなり彼の名前が出てきて、ほえ? と声が漏れる。

先輩は相変わらずの眼力でこちらを見据えており、とても知らないふりは出来そうになかった。


「ええっと、虹己君とはお友達、ですけどぉ~……」


「なら話が早くて済むな、そいつに伝えてくれ。あいつ……結愛を守れって」


鳳先輩を、守れ?

話が見えなさすぎて、はてなを浮かべることしかできない。

そんな僕の様子に気付いているのか、彼ははあっとため息をつきながら頭をかいてみせた。


「結愛から聞いたんだよ。強制恋愛法っつーのを守んないと退学で。その相手が、そいつだって」


「そ、それはそうなんですけど……守れ、とは具体的にどういう……」


「あいつは俺にしか触れられねぇし、近づけねぇ。そんな結愛が心を許してる相手なら、そいつに託すしかねぇんだ。俺が傍にいると、危険な目にばっか合わせちまうからな……」


怖かったはずなのに、話しているうちにその気持ちがだんだん和らいでゆく。

それはきっと、彼の目が優しいから、なのだろうか。

不良で根っからの悪い人だったら、きっと鳳先輩も身内とはいえ近づくことはできないはず。

きっと周りが思うほど、悪い人じゃないんじゃないかなあ……


「んじゃ、俺は確かに伝えたからな。あとは頼んだぜ、赤羽」


「は、はい! あれ? でもそれなら、虹己君本人に言えばよかったんじゃ……」


「こまけーことは気にすんな。じゃあな」


ひらひら手を振りながら、あっという間にその場を去ってしまう。

なんだか不思議なことばかり起こるなあ。

そんなことをしみじみ考えながら、彼の後ろ姿を見ていることしかできなかったー。


(つづく!!)

ついに満を持して、第三のサブキャラ!

真純君の登場です!!


智恵同様、初っ端から

インパクトしか残しておりません。

実はこの作品、サブタイトルにある通り

脇役の方がキャラが立ってたりします。


出したいキャラや性格を

プロット段階にわーっと書き出すので、

主役とか、役割・立ち位置が決まっていくと、

これほんとに脇役でいいのか…!? 

もっとでてきていいのよ……?

となることが多いこの頃です。


次回は30日更新予定。

真純の言葉の真意とは…!?

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