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ep.23 ここまで不器用だと、逆に萌えてきませんか・・・

半ば強制的に告白をさせられてしまった満。

そんな彼を気づかい、恭弥と虹己は海に連れてゆく。

遊びに混じっていた春夜から恭弥の素顔を知り、

彼らは楽しい時を過ごしていく・・・

日差しが、窓からさしてくる。

扇風機で運ばれてくる風を固定しても、額や顔に汗がたらりと流れ出る。


「あっづい……」


赤羽満、ただいま絶賛夏休み中。夏の暑さにやられています。

もうすぐ八月とまで行くと、どうも暑くなってきてしょうがない。

実家に戻れるとはいえ、この暑さをしのぐ対策の一つでもほしいものだ。

クーラーでもつけようかなあ。でもお母さん達に電気代がもったいないって言われちゃうし……


そんな時、自分の携帯の着信音がバイブとともに聞こえる。

着信主を確認すると、それは虹己君からだった。

虹己君から電話なんて珍しいな、何かあったのかな。

そう思いながら、通話ボタンをゆっくり押す。


「はい、もしもし?」


『……満君さ、今夜予定入ってなかったよね?』


「えーっと、特にないけど……」


『君……じゃなくて主にあっちに言ってほしいんだけど……夏祭りに、ついてきてくれない?』


虹己君らしくない弱々しい声だ。

聞いただけできっと、何かあったんだと悟ってしまう。

どうしたの? と聞くと、彼はまた困ったような声で話し出した。


『いやほら、宿題あんじゃん? 書かないと退学っていう』


「ああ、彼氏彼女になった人と何かした記録を二つ出せっていう……」


『多分それのため……なんだろうけど……鳳先輩から、誘われちゃってさ』


「へぇ~……ええ!? 誘われた!?」


意外だ。連絡先を交換したとはいえ、先輩と虹己君がつながっていたとは。

きっと虹己君も初めてのことだったのだろう。

困っているようだし、ここは僕が何とかしてあげないとなあ。


「え、えーっと一緒に行くのはいいんだけど……それって先輩からわざわざ誘ったんだから、二人で行った方がいいんじゃないの?」


『いうと思った。彼女、男性恐怖症でしょ? あんな人ごみに行かせて大丈夫かーとか、オレと二人で行動できるのかーとか色々考えてんの』


ああ、なるほど。そういうことか。

確かに鳳先輩の男性恐怖症は、かなり重症みたいだったし……普通に行くのじゃ、さすがに難しいのかなあ。


ん? 待てよ、最初虹己君が主にあっちに言ってほしいって言ってた……もしかして……


「虹己君、ひょっとしてミミルの力を借りて女の子になっていくの?」


『は?! ちがっ……! オレが女装趣味あるみたいに言うな! しょうがなく! しょうがなくなんだから!!』


照れているのか、若干怒ったような口ぶりで声を荒げる。

やっぱりいつもの虹己君だなと思い、少しうれしくなってしまった。

でも、ミミルもミミルだな。虹己君が困っている時くらい、行ってあげてもいいのに。


「誤解しているようだから言っておくけど、俺は契約者のもとでしか活動できないよ。満」


声が、聞こえる。

見上げるとそこには、いつから聞いていたのかミミルがいた。

相変わらず、僕の頭上にふよふよ浮いている。


「契約者のもとって、僕がいないとってこと?」


「そ。まあ虹己が困ってる声は聞こえたけどね~面白いからほっといた」


『ミミル~そろそろ殴っていい~?』


そういえば虹己君と会話がつながったままだったなと思いながら、ミミルのかわりにごめんと謝ってみせる。

ミミルは大きなあくびをすると、僕に


「行けば? 虹己は恭弥も誘ってるみたいだしね」


と聞いてもいない情報をさらりと言ってのけた。

この行動が吉と出るか、凶と出るか。

こうして僕は虹己君のために、夏祭りに行くことになったのです!



わいわいと、はしゃぐ様々な人の声が聞こえる。

出店を楽しむ子供達、かき氷を食べて歩いている女子高生。

きれいに晴れた空には、満天の星がキラキラ輝いていて……


「お~~~きたきた。きょうちゃぁん、こうきぃん、満ち~~ん」


朝顔をあしらった黄色い浴衣で手を振りながら、彼女は笑みを浮かべる。

その夜。待ち合わせ場所にいたのは、まさかの春夜先輩だった。

彼女の姿を見た途端、あからさまにいやそうな顔を浮かべた虹己君はため息交じりに一言。


「なんであなたもいるんすか」


とつぶやいた。

その反応が分かっていたかのように、春夜先輩はにやりと笑ってみせた。


「きょうちゃんいるところ春夜ちゃんあり、なんてね~男三人に結愛ちん一人だと、大変だと思って~」


「わざわざ来てくれてすまない、春夜。ところで、その鳳先輩は?」


「ちゃんと来てますよ~? 結~愛~ちんっ、みんなきたよぉ~出ておいで~」


春夜先輩はなぜか一本の木に向かって、その言葉を投げかける。

その向こうから、うんと消え入りそうな返事をする声が聞こえた。

木の幹から恐る恐る顔をのぞかせ、ゆっくり体全体があらわになる。


「お……お久しぶりです……皆さん」


紺色の浴衣に、ちりばめられた桜の花。

きれいなかんざしを髪にさしている彼女の姿は、今まで見てきた先輩とは一味違うように見えた。


「ど~お? 春夜ちゃんと結愛ちんの浴衣姿は。かわいいでしょ~~?」


「は、はあ? 別に浴衣なんて誰が着ても一緒だし」


「虹己はこういっているが、二人ともすごく似合っている。な、満」


「うん! とてもかわいいです!」


「ちょ、ちょっと二人とも。あんまりそんなこと言うと、この人調子乗るよ?」


そう言う彼の頬はほんのり赤くなっている気がして、少しはかわいいと思っているってことがうかがえる。

まったく、虹己君は素直じゃないなあ。相変わらず。

僕と恭弥君がほめたおかげなのか、春夜先輩はえへんと胸を張り、鳳先輩は恥ずかしそうに縮こまっている。


「んじゃあ行きますか~」


「あっ、ちょっと待ってください!」


「およよ? 満ちんから言い出すのは珍しいですなあ」


「え、ええっと、鳳先輩に渡したいものが……」


そう言って僕はちらりと上空に目を配る。

すでにスタンばっていたミミルが、ほいよといってとあるものを渡してくれる。

その中身を確認することなく、僕はこれです! と堂々とみんなの前に出す。

なんともあろうことか、それはただのメガネだった。


「何を出すのかと思ったら……満君、何でメガネなんて持ってきてんの?」


「これはただのメガネにあらず! かけるとあら不思議! 男性が女性に見えちゃうっていうすぐれものなんです!!」


まるでどこぞのセールスのようにぺらぺら口が動く。

無論、これもミミルの影響だ。


もともと僕達はミミルの力で虹己君を女の子の姿にしようと、先輩二人より早めに来ていた。

それなのにミミルは「大丈夫」の一点張りで、あの時と同じことはしなかったけど……

でも驚いた。まさか、ただのメガネにそんな力をこめることもできるなんて。


「じゃあ試しに春夜ちゃんが~~おお~~~ほんとだ~~きょうちゃんがべっぴんさんになってる~~満ちんすご~~い」


「……ほんと、あの人って何でもありだね」


「これで虹己と二人でいても、問題はなさそうだな。それでは行きましょうか、鳳先輩」


「は、はいっ」


鳳先輩は春夜先輩からもらったメガネを顔にかけると、本当に見えているのか「すごい……!」と感嘆の声を漏らす。

やっぱりミミルってすごいなあと思いながら上を見上げると、彼は何を思っているのかふんと鼻で笑い……


「俺の力がこれで済むと思うなよ?」


すべてを握っているかのように、くつくつと笑っていたのだったー


(つづく!!)

さて、八月になりましたね。

本格的に夏になってまいりました。

夏といえば海に続き、やっぱり夏祭りですね。

今回の見どころは何といっても、虹己君です。

最初から最後まで女性陣の浴衣よりも、

ダントツに愛おしい・・・


このご時世。中止や延期で、

家にいることが多いと思われます。

今回のお話しで、一緒に行っているような感覚に

なってくれたら・・・

なんて、少しでも楽しんでいただけたらうれしいです。


次回は8日更新!

お祭りは、これからですよ♪

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