ep.21 フィオーリ全面監修! 『ここから始める恋の物語』
夏休みになり、予定が何もない満は
ふとしたことから、雲雀が演劇の大会だということを知る。
ミミルの計らいのもと、大会がある会場へ向かったが
そこで聞かされたのは強豪校である四葉高校が「銅賞」という結果だった・・・
外は、雨が降っていた。
泣きながら喜ぶ生徒、悔しいと泣いている生徒……様々な光景が見られる中、聞こえてくるのはどこも同じ話題。
あの四葉高校が、銅賞だということだった。
四葉高校の演劇部は、すごく強い。
それは一年生の僕でもわかる。
受付の時に渡されたプログラムに去年だけでなく、一昨年などの優勝校が書いてあって必ずうちの高校が入っていた。
だからきっと観客側も承知の上で、やっぱりすごいという声が多いと思っていたのに。
「ごめん、赤羽君……せっかく新勧、頑張ってくれたのに……」
やっと見つけた演劇部の人は、どの人も涙を浮かべていた。
本番には、魔物が存在する。弓道をしている恭弥君がよく言っていた。
それはきっと体験した人にしか、わからない光景だったのだろう。
気が付くと僕は、彼女の姿を探していてー……
「あれ? みっちゃんじゃん。どうしたの、こんなところまで」
みんなが集まっているところより先のところに、彼女―雲雀先輩はいた。
誰もみな、涙を流して悔しがっていたのに先輩が見せてくれたのは笑顔でー……
「もしかして応援に来てくれたの? みっちゃんって、ほんと優しいんだね」
「……先輩、最後の大会だったのに……」
「仕方ないよ。それだけ今年はレベルが高かった~ってことだし、私は満足してるよ? 今までで最高の演技が出来たんだから」
「……さっき、他の先輩に聞きました。先輩が他の人のミスをカバーしようとして、それが逆手になったって……」
銅賞の原因とも思われたのは、一人のミスがどんどん広がっていったこと。
今までしなかったようなミスばかり多発し、結果思いどおりの演技ができていなかったらしい。
なんとかしようって雲雀先輩が必死に頑張っていたって、同級生の子が泣きながら教えてくれた。
だから僕はー……
「どうして無理に笑うんですか! 悔しいなら悔しいっていえばいいだけじゃないですか!」
「今いったところで結果はかわらないんだよ!! 大会はもう終わったんだよ!? 私は自分が情けない! みんなを全国に導けなかった……部長だったのに!!」
感情をさらけ出した彼女の泣き顔は、いつにもまして新鮮で心をうたれて。
笑顔しか見たことなかった僕にとって、彼女の本音が初めて聞けた瞬間だった。
雲雀先輩は、強い。
僕がいなければ、私のせいでって一人で泣いていたのかな。
あんなに信頼されているのに……
「誰も、悪くないんです。先輩が責任を感じることなんて、ないんです。みんな頑張った……でも届かなかった。それでいいじゃないですか。人生、なんでもうまくいくわけじゃないんですから!」
「……みっちゃん……」
「一人で抱え込まないでください、雲雀先輩。もし泣きたくなったり、弱音を吐きたくなったら僕を頼ってほしい」
ん、あれ? 僕今、何を言ってるんだ……?
「好きです、雲雀先輩。僕じゃ、あなたの力になれませんか?」
!!!?!???
「み、っちゃん? 急に、どうしたの?」
そうですね、そうなるのも無理ないですよね。
当然です。だって僕自身も、意味が分かってないんですから。
先輩の力になりたいと思ってここまで来たはずだったのに、なぜか僕は言うはずのない好きの二文字を口にしてしまった。
当然、僕自身の意思ではない。現に今でも、自分の体なのに全くいうことを聞かない。
この経験は、初めてではないためすぐにわかる。
ミミルが、また僕に何かしたんだって。
確かに僕はこうやって自分の気持ちを言うのは苦手だし、操ってもらった方が助かるかもしれない。
でもさすがに今は違うんじゃないかなあ、とも思う。
演劇の大会の結果が悪くて責任を感じている先輩に向かって、さすがに好きなんて言う場面じゃ……
「勢いで仮の彼女と彼氏になっちゃいましたけど……いつの間にか僕、本当に好きになってしまったんです。先輩の笑顔は優しくて、元気をもらえて……」
あ、あれ?? おかしいな、なんでまだ続いてるの???
もしかしてミミル、勝手に話進めようとしてない??
どうしよう、そんなつもり全然ないのに!
「だから先輩、僕でよければ力になりたいんです! 彼氏になってほしいなんて、ずうずうしいことは言いません! 泣きたいときとか、言いたくても言えないときとか……頼れる後輩って認識で充分ですので!」
「……みっちゃんは、それでいいの?」
「はい!!」
つらつら言葉が出てくるのは、ミミルの影響なんだろうか。
それにしても僕が思っていたことすぎて、すごいを通り越して怖くなってくる。
ミミルは一体、僕に何をさせたいんだろう……
「分かった。でも告白には、ちゃんと答えないと失礼だから。考えておくね」
雲雀先輩は本当にやさしくていい人だ。
優し気な笑顔を見ながら、僕も笑ってみせる。
こうして僕はなんだかんだで、告白をしてしまったのですー
(つづく・・・)
まだ先ではありますが、二日後の24日は
雲雀ちゃんの誕生日だったりします。
なのでこの話を合わせてみたりしています。
ちょっとした裏話です。
好きになってからを考えると告白展開が結構早くない?
という意見もありそうですが、
私からするとまだ、この段階なんです。
部数で言うと21話なんですよ。
数字だけみると遅っ! ・・・と思いません?
あ、そうでもない? それは失礼しました・・・
次回は26日更新予定。
夏休みはまだまだ続く!




