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親子達の距離

 とりあえず、みんなで話し合った結果、ミーアとリルは今日は学校を休ませる事にした。こんな事件に巻き込まれてそれでも登校しろというのは酷である。


 『勉強できないなんて!』と、ミーアが不満たらたらだったが、ミメットに説得されてなんとか落ち着いた。きっと、夜に自習し始めるに違いない。それだけ勉強が好きなのだ。でも、クレオパスとの約束は守って欲しかった。


 みんなで家に帰る。話もしなければいけないので、アマーリャとシモンも一緒だ。クレオパスの保護者という事で父も着いてきてくれる。素直に嬉しいと思った。


「ごめんニャン、坊や。びっくりしただろうニャン」


 リビングに落ち着いてからシモンがまず詫びてくる。クレオパスは曖昧に頷いた。確かにびっくりはした。


 二人は改めてクレオパスに向かって自己紹介してくれる。きちんと、『ミメットの父のシモン』、『ミメットの母のアマーリャ』と名乗っているがなんだかいいな、と思った。

 そこからは初対面の人もたくさんいるので自己紹介タイムになってしまった。父が自己紹介する時は何故かクレオパスが照れてしまって、ミーアに微笑ましそうに笑われてしまった。自分の方が年上なのに恥ずかしい。


「確かおじいちゃんたちって、ママやリルたちの事、嫌いじゃなかったっけ」


 リルがさらっときつい事を呟いた。アマーリャが珍しく悲しそうな顔をしている。

 でも、これは交流を断ってきた自業自得なのではないだろうか。


 アマーリャとシモンがぽつぽつと孫達に事情を話す。ミーアとリルは時々質問を挟みながらもきちんと聞いていた。


 カーロとミメットが密かに付き合っていて、結婚しようとした時、犬獣人の街も猫獣人の街もものすごい大騒ぎになった。今まで、そんな事をしようとした人はいなかった。

 もちろん、シモン達も反対をした。でもミメットは頑固で別れろという言葉を聞きもしない。おまけにいざとなったらカーロをお婿さんにして猫獣人の街に連れていく、なんて言う。

 犬獣人の方の話では、カーロはこの土地を出て、別の場所で暮らす事も本気で検討等していたらしい。

 どちらもとんでもない事だと、シモン達も、カーロの両親も思った。連れ去り婚や駆け落ちなんてとんでもない。そう考えたのだ。

 とりあえず妥協案で、双方の土地の間にある場所に住む事を許す事にした。

 ただ、カーロの家族とも話し合って、二人とはあまり関わらないようにしようと決めていた。片方が拘り過ぎると、カーロが猫側、もしくはミメットが犬側だと噂されてしまうからだ。だからお互いに子供達を勘当した。

 それでも、やっぱり娘や孫が心配になって、こっそりと様子を見ていたという。


 脱線したり、長くなったりしたが、要約するとこういう事だ。


「つまり、この人たちは自分たちが可愛いから保身をしたのよ。身勝手よね」

「ミ゛ャ!?」


 ミメットがバッサリと切った。アマーリャの顔が引きつる。


「ミ、ミメット、それはね……」

「そういうことでしょ。私は素敵な夫と可愛い娘達がいればいいから」


 ね、と言ってこれ見よがしに『可愛い娘達』を愛で始める。


「ミャァーン! おかあさーん!」


 ミーアが意図を理解したように、これまたこれ見よがしにミメットに甘えてみせる。いつものミーアならこんな事はしない。


「あー! お姉ちゃんずるい! ママ、リルもー!」

「はいはい」


 リルの対抗は素だろう。


「これならカーロに憎まれ口を叩きながらも面倒見てくれた爺ちゃんの方がずっといいわ」


 フンッとミメットは怒ったようにそっぽを向く。


 初耳なのかきょとんとしたアマーリャにカーロが説明している。


「お義父さんがそんな事を……。畑を与えただけじゃなかったのね」


 反省はしているらしく、しゅんとうつむいている。隣にいるシモンも同じようにしている。


「あ、でも、この間のクレオパスさんや、今日のあたしを助けてくれた事は感謝してるから」


 ミーアがフォローのためかぼそりと呟いた。アマーリャが驚いたように顔を上げる。


「あと、本当に巻き込んでごめんなさい」

「い、いいのよ。別に。あんたこそ危なかったんだから。それに子供を守るのは大人の役目だから」


 こんな時に出てくるとは思わなかったのであろう感謝と謝罪の言葉に、アマーリャが焦っている。


「でも、これからはもうちょっとあんたたちに関わる事にする。あんたたち、今、大変みたいだし」

「あら、私たちに関わると贔屓だとか言われるんじゃないの?」

「いや、今はそういう事を言っている場合じゃないんだろう」


 シモン達の話によると、アマーリャ達を攻撃した人身売買犯達が捕まる時に『ミーア達がターゲットになったのは、この街で孤立している子供だったから』と言っていたという。なのに、こんなに助けが来るのはどういう事だ。話が違うじゃないか、みたいな事を怒鳴っていたそうだ。

 それで、さすがにアマーリャ達も自分達がやった事が何をもたらしたのか分かったという事だ。


「その……犬っこ、カーロのご両親とも話しておくから。事情話せば向こうも分かってくれると思う」

「……身勝手なんだから」


 ミメットが呆れたように言う。でも言葉とは逆に顔は悪く思っているような感じではなかった。

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