まったり感
『結構時間かかっているなあ。そんなに探すのが大変なんだろうか?』
待たされるということは、最もストレスを感じる1つといえます。結果が分らない曖昧な状態こそ不安感を持たされることになるからです。それは、時間が経つといったい何をやっているのだろうという疑念に変わっていくのです。
『ハア~、ふう~、長いなあ。』
近くにお偉い方が座っている訳ではありませんが、勝手に周りの物を手にとって見たり、HDプレーヤーで音楽を聴いているのも失礼なことですし、ただ周りを眺めていることを1時間以上やっていると脳の活性は停止してため息だけになります。子供なら間違いなくぐずってしまいます。無意識に、ひざに置いた両手をピアノを弾くように指を立てて小刻みに動かします。
『そんなに時間が掛かるようなら、後日改めてでもよかったのかな。これで残念ながらありませんでしたって言われるとやだなあ。』
陽の光のストライプが職場内に入っています。夕暮れに近付いているのです。折角今日は、仕事を交代してもらって来たというのに、成果無しでは余りにも寂しすぎます。
# うはああ~、ふう
思わず伸びをしてしまいました。そして、立ち上がると近くに座っている職員に声を掛けます。職員は、パソコンで表に何かのデータを打ち込んでいるようです。
「お仕事中すみません。おトイレに行きたいんですけど、出てどちらに行けば宜しいですか?」
「えっ、ああ、トイレね。廊下に出て、右に歩いていけば見えてきますよ。」
「有り難うございます。」
全身がまったり感で満載になって、トイレで溜まったストレスを放出することにしました。
廊下に出たところでした。
#“すみませ~ん、どちらへ行かれますか? ”
振り向くと、廊下の先の方に倉庫に行った防災管理課の2人が見えます。夕暮れ時のためか、それともこの古い庁舎のせいなのか、薄汚れた石膏ボードの天井の蛍光灯にもう明りが点されていました。
そうして、翌日。
「伝言掲示板の傍に置かれていたの?、誰かに飼われていた訳じゃないんだ。」
「ええ、自由帳にありましたよ。‘モグちゃん’って書かれてあったので確かです。やはり、持ち前の鳴き声で、来る人達に可愛がられていたんですね。でも、まだ分かりませんよ。」
「分らない?」
「どうやってそこに連れてこられたかは、これからなんですよ。避難所で動物を自主的に飼うことはありませんからね。兎君を返してくれと広告を出したのは、おそらく可愛がっていた人達の中の誰かでしょうね。だから、個人の名前が出ていないんですよ。まず、掲示板で働いていた職員の方を教えてもらいましたから、聞いてみます。そこから辿っていけば、いつかは最終的なところまで分るんじゃないでしょうか。」




