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カブラム

「そうだな、そのアレスは以前の状態から離れられないのかもしれんな。それでは、いつまでたっても幸せにはなれん。アレスは、色々な経験で進化しないと幸せを探せないんじゃ。執着している間は、ミクシスは無理じゃな。ところでお前さんは、以前のことを思い出しているのか。」

「ちっとも、僕は人間の以前は何だったの。」

「それについて、私では教えられないんじゃよ。」

「教えてもらえることなの?」

「たとえ今此処でお前さんに教えたとしても、前に宿った身体はもうなくなっておる。戻ることは出来んのじゃから何の意味もない。まあ知らない方が良い、幸せじゃなかったのだからな。しかしどうしてもと言うのなら、あのミクシスに入った時に、お喋りカブラムが教えてくれるかもな。」

「お喋りカブラム?」

「ああ、ミクシスの中に居るアレスの1つなんじゃがの、どうも身体があった時は口がきけなかったそうじゃ。」

「そうか、だからお喋りさんになったということ?」

「そんな単純じゃない。それはな、こういう訳じゃ・・・カブラムは、ベルム恒星の惑星デリの生物、ベルグだった。」

「また、聞いても分からないお話になっちゃうの?」

「いいや、デリは、お前さんの星、地球と良く似ていて、水と大地で被われておる。そしてベルグも人間の世界と同じような進化を辿っておる。この話をしても分かるじゃろう。」

「へえ、じゃあそのベルグという生き物は、僕等みたいな人間の姿なんだ。」

「人間?、いや、お前の言う姿じゃなかったが、手足が自由に使え、尻尾があり。」

「お猿さんみたいだね。」

「馬鹿にしちゃいかん、人間と同じぐらい脳が発達しておったぞ。わし等から見れば、人間もベルグも同じじゃ。カブラムが居た頃のベルグの世界は、まだまだ未熟で、幾つもの都市国家が乱立し、部族間の争いが絶えなくてな、ちょうど人間の歴史でいうと中世の時代のようじゃった。カブラムは、クイムスという王国の一諸候メッサムの子息じゃった。メッサムは、国王の下で政務の補佐を行う官位だったんじゃ。ある時、互いに交易を行い、不可侵を保っていた隣国の使者がやって来て、隣国の王からの親書を受けた。それにはこう書かれてあった。~親愛なるクイムスの王よ。私は何時も、貴殿とその貴国の繁栄を慶び、友好の関係が永遠に続くよう願っている。誠に申し訳ないが、ある罪人が我々の堅固な警戒をすり抜け、不覚にも国境を越え、貴殿の領地内に進入したと推察される。もし、その者を捕らえて頂けるならば、それ相当の礼儀を尽くす所存である。~、とな。」

「へえ、それで逃げ出した人、いやベルグはどんな罪を犯したんだろ?」

「面倒くさいからベルグはやめて人で良い。・・・そうだな、クイムスの王もそれを使者に尋ねたんじゃ。すると、その者は、隣国が古くから敵対している国へ内通し、国家の重要な情報を流していたとのことだ。確かに国を危機に陥れようとする罪は、何処の国でも死に値するからの。クイムスの王は、快く引き受け、罪人を捕らえた時は、即刻隣国へ引き渡すことを約束したのだ。」

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