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真・恋姫†無双 ~緑に染まる黒の傭兵~  作者: forbidden
第十章.白龍との旅、そして因縁
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小覇王との再会

「やっぱりすごいな、長江は」


土色に濁った水を眺めながら呟いた。


「この長江を孫呉は武器としているのだから恐ろしいな」


俺の呟きが聞こえたらしい星も続けて呟いた。

まだ旅の帰路の最中だ。

行きは長安を通ったけど、帰りは呉の領土を横断していくことにしたのだ。

昼の今は長江を渡るため、一般人を乗せる船に乗って南下していた。

ちなみに大きな船で黒鉄と星の馬も運んでいた。


「水戦はしたくないね。でもこの長江、荊州も通ってるからね」


「長いものだな。この水路を活用すれば、国力の増加も容易いものだろう」


星の言葉に頷いた。

船で物資の運搬が速く、多くの物を運べるからだ。

馬や輜重だとどうしても休息を入れたり地形に左右されやすく、物資の量も限られる。

その点、水深と風さえ把握していれば良いのだから、陸路を使うよりも断然効率が良い。


海のような長江を渡り終えて、一先ず近くの街に向かった。


「はてさて、どの経路で永安まで行くか」


黒鉄たちを店先に繋いでから飯店に入った。

飯を待ちつつ、地図をひろげた。


「我らは今、建業にいる」


「そのまま江夏、襄陽を通って行くかな」


「長沙、武陵を行った方が良いのではないか?」


「じゃあ、それでいこうか」


星の案にした。

襄陽や江夏は長江寄りだから、水路の方が都合が良い。

だけど、長沙や武陵は長江から離れている。

馬を使えるのだ。

馬も走らせないといけない。


「お待たせしました」


店員が飯を運んできた。

今日は麻婆にした。

星は拉麺だ。


「いただきます」


一言言ってからレンゲに手をつけた。

星も箸をとっている。


すぐに食べ終えた。


「ごちそうさまぁ。さて、行こうか」


「あら? 傭兵くんじゃない」


聞き覚えのある呼び方に、ちょっとドキッとした。


「──孫策」


「久しぶりね、傭兵くん」


人懐っこい笑みを浮かべていたのは孫策だった。

隣の星が驚いて俺と孫策を見ている。


「どうしたの? 建業なんかに来て」


「蜀への帰り道だ。武器を直してもらってな」


「ふぅん。──敵国調査じゃないの?」


試すような殺気が俺を貫いた。

それを跳ね返すように睨み返す。


「名の知れた俺が調査しにきたところで、見つかって終わりだと思うが?」


「──それもそうね」


孫策がふっと笑みを浮かべて、殺気が消えた。

星はどこか警戒している。


「傭兵くん。あの時は言えなかったけど、言いたいことがあるの」


「なに?」


「私たちのところに来ない? 傭兵くんの力は孫呉総員、認めてるわ」


「……悪いけど、もう時効だよ」


「あら」


孫策が興味深そうに笑った。


「俺はもう傭兵じゃない。蜀軍の一武人だ」


「残念。あなたのこと、気に入ってたんだけどな。黒薙」


孫策が不敵な笑みを浮かべた。


「天命を恨むんだな」


「そうね、そうするわ。じゃ、他のみんなに見つかんないうちに建業を出なさいな。今回は見逃してあげるから」


「そうする。……ありがと」


「うん。またね、黒薙」


孫策が手をひらひらさせながら城に向けて去った。


「……雛斗、いつの間に孫策と会ったのだ?」


星が警戒を解いて訊いた。


「涼州に向かう旅の時」


「度肝を抜かれたぞ」


「ゴメンゴメン。ま、孫策がああ言ってくれたんだし、さっさと建業出て益州へ向かおうか」

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