プロローグ
「…………暑い」
俺は、桜兎美県立大豆山高校で、男子ソフトテニス部で部長をしている。
今は、コートが空いているのに使えない屈辱を受けながら、壁打ちの真っ最中だ。
なぜ、コートが空いているのに使わないだって?
それは――
――男子ソフトテニス部は俺だけ。
だから、打ち合う相手がいねぇんだ。
滑稽だろ?コートを使いたくても、打ち合う相手がいないから、壁打ちをしているなんて。
すると、横から壁にボールが叩きつけられる音が聞こえてきた。
…………あいつか。
山志那蓮香…………俺の小学生からのライバルだ。
――12年前
「お母さん、おじいちゃんの畑のお手伝いしてくるから、お留守番しとくのよ」
「はーい」
◇ ◇ ◇ ◇
「おかあさん、おじいちゃんお帰り」
「「ただいま」」
「珀多はいい子だなぁ。おじいちゃん、嬉しいぞ(笑)」
「あっ、そうだ。もうすぐ小学生になるでしょ?小学校まで遠いから、体力は付けといたほうがいいと思うの。だから、何かやりたいスポーツはない?」
「うーん…………おじいちゃんはなにしてたの?」
「おじいちゃんか?おじいちゃんは、テニスをしていたぞ」
「じゃあ、ボクもテニスにする!!」
「おじいちゃんと同じがいいのか(笑)みっちり教えたるぞ。そうだな……最初は軟式から始めたらいいんじゃないか」
「そうね。珀多が良いなら、そうしましょう」
「なんしき……?よくわかんないけど、する!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「はくた、テニスはじめたみたいね」
「はすかには関係ないだろ」
「関係あるわよ。あたしは、テニスで、はくたに勝つんだから。まぁ?おかあさんのおてつだいをしているあたしは、はくたに勝ってるけどね」
「うるせえ」
まぁ、1コートだけしかなくて、追い出されるよりマシか…………。
ここ追い出されたら、ガッタガタの砂利道で素振りするしかなくなるからな。
それなのに外のクラブに入らず、部活を続けている理由だって?
ここら辺も家の近くも田舎過ぎて、クラブがないんだよ…………。
俺は知らなかった。田舎であるが故に、危機が目の前に迫っていることを…………。




