第96話 滑り込み
「……ヴィア、ちょっといい? あなたたち換気しなさいよ……」
夜月研究所の翠蘭のベッドで寝ていたところ、普通に入ってきた未夢に起こされました。どう見ても事後なわたくしたちを見て、嫌そうな顔をしながらも何やら伝えたいことがあるようです。……引きずり込んでやりましょうか。
「……昨日果たし状のこと忘れてた」
「え? あっ! あ~~~~!」
「……どうするの。差出人が騎士団のところに来て怒ってるみたい」
「そのまま帰ってもらうわけにはいきませんの?」
「……思ったより強いみたい。ジェイムス隊長が負けたって」
「族長には任せておけませんわね……。わたくし自らが出ますわ!」
「……その言い回し何なの?」
全裸で爆睡している翠蘭を放置して、わたくしは一路、グローシアにて帰還の途に就きました。
まだもやがかった空気を残す爽やかな朝の空をグローシアは進みます。未夢は仕事が残っていますので、残念ながら夜月研究所に居残りですわ。
以前にもお話しましたがスポットの外周には防壁が張り巡らされており、その中を列車が走っています。いつもはその防壁を越える際にはできるだけ上空を通るのですが、本日はかなり低めに飛んでいます。
と言いますのも先達ての戦いで、ハロウェル家も壊滅し、ウィングリー寮のMAもかなりの被害が出たと聞き及びます。まぁご機嫌伺いってやつですわね!
そして接近してみても報告通りに寮軍はなんら反応を示しません。皐月学園の生徒ももう居ないのでしょうか? 数ヶ月の間ですが寝泊りしていました場所です。なんだか寂しいですわね。……わたくしは寮に泊まらずに、ほとんど実家に帰っていた気が致しますけど!
「むむっ!」
わたくしの感応器官が遠くからの飛来物を捉えました。砲弾をスレスレで避けると飛んできた方向に全力で突き進みます。スポット内から撃たれてたようです。
1キロメートルほど離れた森の中にMAの一団が居りました。機体は「アクラマシオン」……ということはリュドヴィックの部隊です。あの雑魚っぽいタンク型MAを見ているとなんだか懐かしい気持ちになってきました。リュドヴィックはご近所さんだけあって、事あるごとにぶっ潰している気がしますわ。
『ケヴィン、なぜ撃ったんだ!?』
『ですが隊長! あいつはピエールの仇ですよ!』
『そんなこと言ったって……速すぎる!? 回ひっ』
「よいしょぉー!」
隊長機らしきアクラマシオンのコクピットに滑空しながら蹴りを入れると、まるで振り下ろされた刃物に切り裂かれたかのように、すっぱりと頭とコクピットブロックが縦に分かたれました。
「えいっ!」
隣で突っ立っていた別のアクラマシオンの頸部に、チョップを叩き込んでみますが、見事に頭が飛んでいきました。
グローシアの手脚には何も刃物のようなものはついていないので本当に不思議ですわよねぇ……。自分でもよくわかりませんが、段々とコントロールできるようになってきた気がします。折角ですから残りも練習に使ってみましょう。
2分後には全部で1ダースのアクラマシオンを細切れにすることができました。それにしてもこの方たちは一体なぜここに居たのでしょうか? おっといけません。わたくし急いでいるんでした!
まだ破壊されて煙のくすぶる残骸を背に、さらにスピードをあげてエクソシア騎士団の本拠地に向かいます。
「間に合ってくださいまし……!」
◇────────────────◇
「ぐわあああっ!?」
ああ……間に合いませんでした……。
到着した騎士団の演習場には、スキアがゴロゴロと転がっていました。そして今もまた1機のスキアが追加されました。助けられませんでしたわ……。
「よくも族長や隊員たちを!!」
先ほどアクラマシオンに喰らわせたように上空から降下しながらの蹴りを敵MAにかましますと、向こうも足を高く上げてのハイキックで返してきました。なんだかかっこいいポーズのまま脚の装甲と脚の装甲が激突し、甲高い音が鳴り響きます。
「お前が中天と紫后を倒した女か!」




