第84話 姉性本能
アリシアが鍵を刺し込んでドアを開けると、そこにはアリシアと同じオレンジがかった髪を持つ小柄な少女が立っていました。年頃は小学生低学年くらいでしょうか? アリシアとよく似た朗らかな笑顔でこちらを見ながらも、どこか困ったような顔をしています。
「待ってたよ、お姉ちゃん」
「バーバラ!」
ひっしと抱き合うアリシアとバーバラちゃん。麗しき姉妹愛にわたくしも思わず後方で腕を組み、何度も頷いてしまいました。うんうん、わたくしも鼻が高いですわ。
「そこのお姉ちゃんもありがとう」
「いいってことよ、ですわ! ところでバーバラちゃんはお一人ですの?」
「そのことなんだけど……」
わたくしとアリシアが感じていた気配のようなものの正体について問いかけてみると、バーバラちゃんは歯切れ悪く言葉を詰まらせます。そしてじっとわたくしの目を見ながら《《緑色》》の瞳を何度も瞬きさせました。
「こっちに来てくれる?」
◇────────────────◇
「どうしてこんなことになっちゃったんだろ……」
困惑しながらもアリシアの手は動き続けています。アリシアのスキアが持っていた座席が多数配置されたコンテナ、その中のシートに妹を座らせ、シートベルトをつけてあげています。このコンテナは一番小さいサイズでも12人乗りだったのですが、そのことを神に感謝しなければなりません。わたくしは特に神を信仰してはいませんが。
「不思議なこともあるもんですわねぇ……」
わたくしは困惑を通り越して、呆れながら《《妹》》をシートに座らせ、シートベルトをつけます。
わたくしたちが案内された先には、なぜか妹がたくさん居ました。バーバラが増えたというよりは、ミニアリシアが増えたといった方が正しいのかもしれません。いわゆるクローンってやつになるのでしょうか? 今わたくしが座らせている妹Bは歳は5歳くらいでバーバラより少し幼い雰囲気です。
「お姉ちゃんお姫様みたいだね!」
「ありがとう。でも『みたい』じゃなくて本物ですのよ?」
「すごーい!」
「でもエクソシアは悪いやつだって言ってたよ?」
隣から妹Cが声をかけてきます。バーバラ以外の妹は皆5歳くらいの年頃で、同じ髪の色に同じ緑の瞳……つまりエメラルドアイを持っていました。そしてそれが合計8人居ます。恐らくエクソシア家と戦わせるための教育も施していたのでしょう。何やらわたくしが自己紹介したところ、敵視……というには幼いですが、わたくしのことを悪いやつだと思っている節がありました。
「そうですわ。わたくし悪いお姫様ですの! あなたたちを攫っていっちゃうんですのよ!」
「きゃー!」「きゃー!」「すごーい!」
オホホ! わたくしバカウケですわ!
「お姉ちゃん、本当に大丈夫なの?」
「うーん……まぁ、多分……?」
「そこ! 無駄口叩かない!」
アリシアとバーバラがわたくしを見ながら不安そうな顔をしているのを一喝し、妹Dのシートベルトを装着します。彼女たちには名前がないらしく、番号で呼ばれていたみたいなんですのよね……。そのうち名前もつけてあげないといけませんわね。
そして妹Eのシートベルトを装着しようとした時、妹Eが涙を流しながらわたくしの腕を掴みました。
「お姉ちゃんも叩いたり注射したりするの?」
わたくしはそっと妹Eを抱き締めると、優しく妹Eの頭を撫でます。わたくしには前世でも現在も兄弟姉妹というものが居りませんでした。だからでしょうか? 今産まれて初めて母性本能? 姉性本能? というものを感じているのかもしれません。けれども妹Eにしっかり現実を教えて差し上げなければいけませんわ!
「そんなことよりもぉ~っと楽しいことをして差しあげますからねぇ!」
「……うっ……ヴッ……びっ………………ひぎゃあああああああああん!!!」
「どうして泣くんですの!?!?!?」
誤字報告ありがとうございます。




