第82話 嫌な感じ
作戦当日、深夜。わたくしたちはハロウェル領に侵入しました。部隊編成はわたくし1機、アリシアを含むスキア12機、トリガーハッピー地雷女のエフカリスト1機です。
シャノンは自称亡命政権を歓待中です。わたくしは彼らについて疑問しかないですのよね。そもそも亡命を受け入れる理由もありませんわよね?
彼らの標榜する「リュドヴィック王国」はすでに存在しない国です。というよりも現在は「リュドヴィック共和国」に改名済みといいますか……革命済みといいますか……転覆済みなんですわよねぇ……。なぜわざわざ弱小勢力のうちを頼ってきたのでしょうか? 本当によくわかんないですわ。
いえ、そんなことはいいのです。わたくしは今怒りに燃えているのです。まずハロウェルの悪行です。これはもう放置しておいても百害あって一利なしです。わたくしは心を鬼にして徹底的に叩き潰すことに致しました。
ちなみに未夢は今回の作戦で、まだ要救助者が残っているのに遠距離からの砲撃での制圧を進言して参りました。そんなシュワちゃんみたいなことをしてはいけませんわよ!?
そしてわたくしがもう1つ怒りに燃えていることがあります。……最近翠蘭が冷たいのです! わかるのですよ? この前までアグリオスを造っていましたし、今はレガシーで手に入れた本を読んでいて忙しいというのは! それは理解できます。
しかしわたくしの前に現れすらしなくなってしまいました! というか翠蘭は一応エクソシア公国の指揮を執っていたのではありませんでしたっけ?
もうなんだっていいですわ! 帰ったら今度はわたくしがお仕置きしてやるんですから!!
『では作戦を発表しますわ!』
『……え? ブリーフィングはもう終わってる。研究所を制圧してアリシアの妹さんを救出するのよ』
『ついでに途中にあるハロウェル騎士団の基地を叩きますわ。陽動になるでしょう? あとストレス発散にもなるでしょう?』
『……スコア稼ぎ? そうはさせない』
『え? 隊長、どうされるんですか?』
『……悪いアイデアではない。けど私が陽動する。救出作戦は少数精鋭の方がいいと思うし』
『正論っぽいですけど、あなたはスコア稼ぎしたいだけでしょう?』
『……そうよ。アリシアと副長はヴィアに着いて行って』
『はっ!』
『わかりました。未夢さんもお気を付けて』
『まぁ別に構いませんけど……』
そんな軽いノリで作戦が変更されてしまいましたが、まぁなんとかなるでしょう!
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二手に別れたわたくしたちは一路、例の研究所へと向かいました。現在わたくしの後ろをアリシアの乗った特殊装備のスキアと、副長さん──この方が何の副長かはわたくし存じ上げませんが──の乗った支援砲撃型のスキアが同行しています。
目的の研究所は領境から100キロメートルほど北に行ったところにありました。見えてきた建物は性懲りもなく病院を装った研究所です。わたくしは過去に何度も病院風研究所を燃やしていますわよ。
副長さんは連絡役として少し離れた場所で待機し、アリシアはわたくしと突入します。アリシアのスキアは今回の救出作戦のためにコンテナのようなものを両手で抱えています。中には座席が並んでいて、まるでワゴン車のリア部分だけを持っているようですわ。
『信号弾の使い方は大丈夫ですか?』
『はい。ありがとうございます』
わたくしを放置して二人が無線で打合せを続けている中、わたくしは遠くの研究所を見ているとなぜか不安な気持ちになってきました。不安と言うより怖い? 別に怖くはないのですけど、不思議な感覚ですわ……。
『では私は後退します。今、陽動が開始されました。こちらは何もなければあと30分ほどで突入開始です。ご武運を』
『はいっ!』
『ええ、ありがとう』
副長が後退していき、わたくしとアリシアだけになるとアリシアも何かを感じていたようです。
『ねぇ妹が呼んでるのがわかるよ、ヴィア』
『そうですわね。妹さんはエメラルドアイですの?』
『違ったはずだよ……』
『そうですか……』
アリシアに直接は言いませんでしたけれど、わたくしとアリシアが《《それ》》を感じてしまうということは、妹さんが無事ではない……ということなのではないでしょうか? なんだか気が重いですわね。




