第51話 恫喝
『絶対に面白いですから、ジェイムス隊長がやってご覧なさい。わたくしたちは見てますから』
『うまくいかんでも文句言わんでくださいよ?』
『うまくいきましたら、うちのワインセラーからいいのを1本持ってきてあげますわ。わたくしが全ての責任を取りますから、気にせずおやりなさい』
振り返って見ると、我が家ことエクソシア家の私邸も、炎上まではしておりませんが、流れ弾で損壊しているのが見てとれました。窓ガラスが割れまくりです。人的被害は軽傷者が数名といったところのようでした。
我が家はエクソシア領都の郊外に建っており、騎士団の拠点と隣接しております。ですので領都の市街地への被害がなかったことは、不幸中の幸いでした。父も市街地にあるお城に居たようですし。……比喩ではなく本当に城があるんですのよ? なお母とサラは、地下シェルターに退避していたので無事でした。
一応我が領は、スポットに隣接している危険地帯ですからね。市街地にもシェルターや防壁が数多く存在します。ちなみにハロウェル領は北側のお隣です。
現在、わたくしのグローシアの隣に、ヘーメラーとジェイムス隊長が乗るミューβが並んでいます。そしてその目の前には脚を5本折られ、上半身が半分なくなったアラフニスが煙をあげて転がっています。辺りには焦げた臭いが漂っていました。
わたくしに、けしかけられたジェイムス隊長が、アラフニスに近付いて行きます。
「ゴラァ!!! ハロウェルのクソガキャァ!!! よくもエクソシア騎士団に喧嘩売ってくれたのぉ!!! 今すぐ八つ裂きにしてやりたいところだが、うちの姫様が命だけは助けると仰せだ!!! 感謝しながら機体を放棄して退去しろ!!! それともここで死ぬかコラァ!?」
ゴンゴンとアラフニクの下半身をぶっ叩きながら、息つく間もない恫喝が繰り広げられます。流石コワ面の40代公務員男性。堂に入っています。……恫喝だけに。
『任せて正解でしたわね! やっぱり本職は山賊なんじゃありません? それにしてもめちゃくちゃ面白いですわね、これ』
『本職が山賊なのはヴィアでしょう?』
『わ、わたくし学生ですから……』
『諦めてね。二人揃って退学よ』
そ、そんな……わたくし職業山賊でしたの!? 今からでもエメラルドアイを保護するための保全活動家とかになりませんか? これではローンを組むとき困ってしまいますわ……。
「わ、わかった! 機体を放棄して退去する! だから機体を叩くな!」
「姫様の気が変わる前に退去しろ!!! ここに居る全員がお前たちの吊られた死体を見たがっていることを忘れるなよ!!!」
『素晴らしいプロの仕事ですわね。これはワインは2本進呈です。……わたくしのワインじゃありませんけど。オホホ!』
膝をつくように転がっていたアラフニスから、縄梯子が垂れてきて、男が二人降りて来ました。他のパイロットは消し炭になってしまったのでしょうか? エネルギー砲って怖すぎませんこと?
手を上げながらこちらに向かって歩いてくる二人。先頭を歩く男がおそらくハロウェル次男でしょう。なぜなら眼鏡をかけていますからね!
「こちらハロウェル侯爵家次男のストルアン=ハロウェルだ。退去するので車を用意してくれ!」
「襲撃しといて何舐めたこと言ってやがるクソガキャァ!!! 歩いて帰れ!!! それとも霊柩車で帰るかボゲェ!!!」
『ぷくく……マジで面白いですわねこれ』
『ヴィア、笑っちゃだめよ』
『はぁ~……お腹痛いですわ。シャノンにお願いがあるのですけど、翠蘭にこのことを伝えて、追加の防衛部隊の編成と、あのMAの回収をお願いしてきてもらってもいいですか?』
『ヴィアのお父様の件は大丈夫なの? ここにはいらっしゃらないのよね?』
『大丈夫かと聞かれると、話してみないことにはなんとも言えませんけど、もうわたくし一人でなんとかなりますわ』
『そうよね……家族のことだものね。わかったわ、任せて』
『あら? わたくし、もうシャノンも翠蘭も家族だと思ってますわよ』
『……うふふ、なにそれ。おかしいね』
シャノンはそれ以上何も言いませんでした。そしてヘーメラーのブースターの炎をきらめかせながら、夜空へと消えていきました。シャノンも色々あった女ですものねぇ……。
『姫様、ちょっとよろしいですかい?』
『気を遣わせてしまいましたわね。何かありました?』
わたくしたちの会話が終わるのを、律儀に待っていたジェイムス隊長は流石デキる男ですわね。ちなみに彼は騎士団の責任者ですが団長とは呼びません。団長は父ですからね。
『ハロウェルんとこのバカどもは車で送りましたが、本当によかったんで?』
『ええ、それでよくってよ。布石ってやつですわ』
ストルアンと言いましたか、あの眼鏡。あの眼鏡は原作でも足手まといなんですわよね。端的に言いますと、パイロットとしての技能が低いのですわ。
戦闘が苦手で、内政が得意なタイプなので、敵に回した場合はできるだけパイロットとして出張ってきて欲しいのですわよね。そうすればまた新型が鹵獲できるかもしれませんからね!
『そういやあいつが言ってた「第1王子殿下の無念」とは一体なんです?』
『ああ、そのことですか。ちょっとぶっ殺しただけですわ』
『…………何をで?』
『あら? 話の流れでわかりませんでした? 第1王子ですわよ。ウィングリーの』
『……………………嘘でしょう?』
『あの眼鏡に伝わっているのでしたら、わたくしたちはすでに立派な逆賊でしょうね! オホホ!』
『マジかよ、この女!?!?』




