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第36話 聖女と呼ばれた少女はお友達

 驚くべきことにわたくしの部屋に、元ではありますが、聖女様ことシャノン=オーティスが居ります。柄にもなく緊張して参りました。


「ヴィアリスさん……いえ、ヴィアリス様、本当にありがとうございます」


「そんな呼び方しないでシャノン。わたくしたちお友達でしょう?」


 わたくしは、そっとシャノンの手を取りながら語り掛けます。わたくしが絶対幸せにしてみせますからね!!


 するとシャノンは堪え切れなくなったのか、ポロポロと涙をこぼし始めました。……いいですわよね? 卑怯とは言うまいですわよ! そっとシャノンを抱き締めます。……視界の隅に映っていたサラと目が合いました。グッと親指を立てられてしまいました。わたくしの周りにはどうして愉快な女しか居りませんの?


「疲れたでしょう。お風呂に入ってゆっくりして来てくださいまし。何か必要なものがありましたらなんでも仰ってくださいましね」


「ありがとうございます……」


 少し笑顔が戻ったシャノンが、サラに連れられて部屋を出て行きました。帰って来るまでの間、わたくしもダラダラと過ごすことに致しましょう。とは言っても、カルヴォノ・マギストリアの世界って娯楽が本とラジオくらいしかないんですわよねぇ……。


 とりあえずラジオをつけてみましたが、ガビガビの音質でウィングリー国営放送のニュースが流れていました。なんでも第3王子とエクソシア家令嬢が皐月学園MA闘技大会を勝ち進んでいるらしいですわよ。なんだかよくわかりませんが頑張って欲しいですわね。


 他のニュースも取り立てて面白いものもありません。……暇ですわ……。


 そのままソファーでごろごろしていると、浴室から案内を終えたサラが帰ってきました。


「お嬢様、制服がシワになってしまいますよ」


「脱がしてくださいまし~……」

 


◇────────────────◇



 あの後わたくしもお風呂に入れられ、部屋に戻りました。そして今はサラに髪を乾かされています。ですけれど、なぜかはわかりませんが、わたくしの目の前にある鏡に映るシャノンは、なぜかバニースーツを着ています。……なんでですの?


 そういうの素直に着ちゃうから娼館で働くことになるんでしょうが!?!?!?


 ちらりと鏡越しにサラを見てみると、ドヤ顔でウィンクされてしまいました。訳知り顔~~~~! ……ええ、サラにも着せましたけども! 好きだとも言いましたけども!!


 そしてわたくしもなぜか黒いシルクのネグリジェを着せられています。ダブル据え膳ってことですの!? サラ、恐ろしい子……!


 とは言ったものの、実はわたくし普段から部屋着はこんな感じです。なんなら普段からえっちな下着をつけてすべての人類にマウントを取っていますからね! 何を言われましても、「ふーん? それで? わたくし今えっちな下着つけてますけど?」で、わたくしの勝ちです。今までの人生で全勝無敗を誇りますわ。


 ソファーに移動すると、わたくしとシャノンは、なぜかお互いにえっちな格好で相対することになりました。シャノンは覚悟がキマった顔をしていますし、サラはそっと照明を暗くします。わたくしは一体どうすれば……!?


「……まぁまぁ、シャノン。そう畏まらずに、無礼講というやつですわよ?」


 別に飲み会でもありませんのに、無礼講はおかしいんじゃありませんこと!? 唐揚げにレモン絞りますわね~~~~!!!


「ぶ、無礼講……?」


 ほら! 通じてないじゃありませんか!!!


「あぁ~っと……身分や礼儀作法なんて忘れてしまいましょう、ということですわ。私たちはこれからお友達になるんですもの! 当然でしょう?」


 ……沈黙。


 わたくし何かやっちゃいました……?


 まったく落ち着きませんので、足を組み直してお茶を飲んで誤魔化します。スマホがあればチラ見して時間を稼いでいたかもしれません。


「あの、ヴィアリスさん、お友達になるのには、この衣装が必要なのでしょうか?」


 シャノンがそう疑問を呈することも理解できますわ。サラ! あなたが説明なさい!!!


「他人行儀ですわ、シャノン。……でもわたくしの思った通りでしたわ。とってもそのバニースーツ似合ってますわよ」


 わたくし、疑問には答えません。論点をズラしてひたすら褒める構えです! 目隠しをしていても、後ろでサラが笑いを堪えていることくらいお見通しですからね!


「ねぇ、サラ?」


「あっ、はひ! にあっ似合っております……ぐうっ……ひうっ……」


 超能力でどことは言わないですがキュッとつまんでおきます。お仕置きですわ!


「ね?」


 ……シャノンがドン引きしています。後ろで悶えているサラを見ていると、なんだか腹が立って参りました。そうです。今までもそしてこれからも、わたくしが悪かったことなんてありますか? ありませんわよね!?


「それで聖女について詳しくお聞きしたいのですけれど……。聖女の条件とは何でしょうか?」


 ただその前に、「フォトゥネス教の聖女になる条件」だけは聞いておかねばなりません。聖女でなくなったら力が失われるとかって設定ありますものね! 据え膳に手を出さないとは言ってはおりませんけど!


「聖女とは人々の心の……」


「ああ、違いますわ! そういう話ではなくて。その……女性にこんなこと聞くのって気が咎めるのですけれど……。聖女の条件は純潔と聞いておりますの。それってどこまでが本当なんですの?」


「じゅ、純潔……?」


 目を白黒させているシャノンも可愛いですわね! 首を傾げると、うさ耳がふわふわ動いて可愛いんですわ、これが!


「ええ、肉体的な純潔ってどこから純潔で、どこからが純潔じゃないんでしょうか? 例えばキスしたら純潔じゃなくなりますの? それとも性行為をしたら? 異性だけですの? それでは同性は? 誰かが聖女の体を調べて決めるんですの?」


 昔……というか前世では、聖女と言えば処女チェックがあったりすると、風の噂を耳にしたことがありましたので、とても気になっていましたの。この世界はエロゲの世界ですし、何があっても驚きませんが。


「ち、違います! そういう話ではありません! 人としての心構えの話です!」


「まぁまぁ……そうですのね。では肉体的な純潔は関係ありませんのね? それは重畳ですわ。 ……サラ」


 いまだにびくびくと痙攣しながら腰をくねらせているサラに、目隠しを外してもらいます。これからのことを考えるならば、ここでシャノンにエメラルドアイの話をしておかねばなりません。


「見苦しいところをお見せしてごめんなさいね。わたくし、こういうの苦手で……」


 人に目隠しを外してもらうのをじっと見られるのって、なんだか恥ずかしいですわね?


 目隠しが外されると、シャノンが目に見えて──まだ目は開いていませんけど──動揺し始めました。シャノンは顔に出すぎです。


「ご安心なさって。私の瞳を見ただけで死ぬのなら、わたくしの両親はすでにこの世に居りませんもの。今も元気ですわよ」


 誰が言い出したか知りませんけど、最近素敵なあだ名に加えて、素敵な噂もたくさん増えていて困ってしまいますわ。わたくしの目を見たら死ぬだとか、女を食いまくってるだとか……。わたくしはメデューサやカトブレパスではありませんわよ。


 それにしても初めてシャノンを裸眼で見ましたけど、実物ははちゃめちゃに可愛いですわね!?!? 原作でもそれはもう可愛くてわたくしは大好きでしたけど!!!


「シャノン。本当にあなた美しいわ……」


 思わず声に出てしまいました。そして、わたくしなんだか興奮して参りました。


 興奮すると感応器官が活性化するのか、目と髪が緑に淡く光っちゃいますのよね? いつか1680万色に光らせて、ゲーミングヴィアリスになってみたいですわ。


「私なんかとても……」


「そんなことないですのに……。さぁ、楽しみましょう、シャノン」

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