第35話 聖女追放
ごきげんよう、皆様。本日は大会4日目ですわ。
「どうして聖女様が解任されて、退学になるんですか!?」
「アイン、枢機卿がお決めになられたことです……」
本日はわたくしのスケジュールは……対戦がございません。不戦勝です。
今日の対戦相手は、リュドヴィック寮の4年生だったそうですが、昨日から出席していないらしいですわよ? 不思議ですわねぇ……。
わたくしは、今までシードがまったくありませんでしたから、丁度いいですわ。
「それなら俺は……俺たちはこれからどうしたらいいんですか!?」
「アインにはたくさんの仲間がフォトゥネス寮に居ます。私が居なくても何も心配はないですよ」
「だからって退学だなんて!!!」
明日勝てば決勝戦ですわ。あ、そこに居るアインとかいう男も同じみたいですわよ。
「な、ならシャノン様! 俺と! 俺と二人で!」
「……これ以上あなたに迷惑はかけられません。アイン、あなたはミヒリを……聖女様を守ってあげて……」
「俺……悔しいですッ!!!」
「あの、盛り上がってるところ恐縮なのですけど、お別れは終わりました?」
恥ずかしいので駅の改札の前でそういうイベントを起こさないで欲しいのですけれど……。
あの3回戦の決闘の賞品こと、聖女様のシャノン=オーティスが、本当にわたくしの元にやって来ることになりました。
フォトゥネス教国側も渋りに渋りましたが、元とは言えばあちらが聖女を賭ける許可を出したのがいけないですわよね?
まぁそもそも言いがかりをつけて、絡んできたロクでもない人たちですから。上も似たようなものなのでしょう。……あれ? 賭けさせたのってわたくしでしたっけ?
とにかく渋りまくるフォトゥネス教国サイドさんには、「約束を破る人たちにのことは信用できないないので、スキアの部品供給止めちゃおうと思います」とお気持ち表明したところ、すぐにシャノンが届きました。持つべきものは軍事企業ですわ!
「お前が悪いんだろうがッ!」
「文句はあの決闘したおバカと、許可したおマヌケに言ってくださいませんこと?」
「そうです、アイン。ヴィアリスさんは何も悪くないのよ」
何も悪くないは言いすぎだと思いますけど、シャノンがそう言うのなら、わたくしは何も悪くないのでしょう。ええ。
「こう見えてわたくしは忙しいですから、失礼致しますわね。シャノン、行きますわよ。ではごきげんよう、護衛の人」
「はい。アイン、元気でね……」
「うわあああああぁぁぁぁぁっ!」
辺りに慟哭が響き渡りました。あの、公共の場でそういうのは迷惑なので、やめた方がいいと思いますわよ。
後ろ髪を引かれるように、崩れ落ちた主人公をチラチラと振り返るシャノンと、メイドのサラを引き連れて、わたくしはホームに滑り込んできた列車に乗り込みました。
勝手知ったる貴族用客車内を進み、わたくしたちは個室に入ります。この時ばかりは貴族制サイコーですわね。
「本当にいいんですか? ご迷惑じゃ?」
「いいんです、いいんです。わたくしにまったく非がないわけではありませんから、シャノンはわたくしが面倒見ますわ。困ったことがあったらなんでも言ってくださいね」
向かい合うように座席に座りますと、目尻に涙を浮かべるシャノンが嫌でも目に入ります。シャノンを泣かせたと言う罪だけでも、フォトゥネス教がおファッキンだと断定できますわね! え? 襲撃したこと……? ゔぃありす、よくわかんないかも……。
わたくしの欲望のためにシャノンを連れて行く、と言われてもわたくしは否定致しませんが、おそらくこのままシャノンをフォトゥネス寮に放置しておいても追放される気がするんですのよね。
彼女は原作カルヴォノ・マギストリアでも追放される展開があるのです。この今世ではなぜかシャノンを追放して、新たな聖女を立てたい派閥の力が強いようですから、きっとこのまま放っておくと、どこぞの娼館に送られてしまうイベントが起きてしまう気が致しますのよねぇ……。
フォトゥネス教国ルートでは、シャノンがメインヒロインです。しかしあの緑髪のミヒリという女もサブヒロインなんですわよね。で、緑髪派が裏で暗躍してまして、色々なイベントをきっかけにシャノンは追い出されてしまいます。わたくしが手を下さずともです。
シャノンは孤児出身で、件の緑髪ミヒリは貴族出身です。ミヒリはシャノンに嫉妬しており、シャノンを追い出す機会を伺っております。
主人公がある程度成長している状態で追放イベントが起きますと、シャノン同行ルートに分岐致します。もちろん追放を阻止することもできますわ。
今回はわたくしのせいで、主人公は「追放されたシャノンに同行しないルート」に突入してしまったようです。これからの主人公様のご活躍をお祈り申し上げておりますわ。
そして「追放されたシャノンに同行しないルート」に入ってしまうと、追放されたシャノンは行方不明になってしまいます。
そのままゲームを進めると、確かリドレス7州連合のどこかの街を訪れると、主人公が娼館の客引きに出会うイベントが発生します。そこで客引きに着いて行くと……。まぁここまで言えばわかると思いますが、シャノンと再会できるわけですわね。娼婦になったシャノンと。
再会したシャノンがピアスとタトゥーまみれのスレにスレた娼婦になっていることで、脳が破壊されるか、新たな扉を開くかはプレイヤー次第といったところですわね! わたくしは許しませんが!!!
「シャノンはわたくしが絶対幸せにしますからね」
「えっ? ……ええっ!?」
余談ですが、「追放されたシャノンに同行するルート」はヘーメラーを盗み出して傭兵として独立するルートになるんですけど、これがまた楽しいのでオススメですわ。主人公はルートに入れなかったみたいですけど、オホホ!
「それでどうします? わたくしが一生養ってもいいですわよ。それともシャノンには何かやりたいことがありますか? ……いえ、性急すぎましたわね。今はゆっくり休んでください」
「ヴィアリスさん、ありがとう……」
「うちでメイドをしてもいいですわよ? そしたらサラが先輩ですわね」
とサラに話を振ってみれば、何やら意味深な笑みを浮かべながら、バチコンバチコンとウインクをしてわたくしにアイコンタクトを送ってきました。……え? どういう意味ですの? 全然わからないんですけど!?
「任せてください! 私なんでもやります!」
「そういうこと言うから体を売るハメになるんでしょうが!?!?」
「そんなことしてませんよ!?」




