女神様とのコイバナ。
タイトル通りです。
ゆる女神様は、ゆるいです。
ハルさんも負けずにゆるいです。
私の名前はハル。ケダマモドキだ。
何と無く自己紹介した私は、ただいま枕です。
うん、比喩とかじゃなくて、リアルな枕だ。
体勢はベッドに仰向けで、お腹辺りにはリュートが顔面を埋めて眠ってる。
正直、息苦しいんじゃ、と思うんだけど、リュートの口からは健やかな寝息が聞こえてくる。
彼女候補が出来た訳だし、甘えん坊からは卒業した方が、とは思うけど、甘えられなくなったら、寂しいな。
私が仰向けでそんな事を考えてると、もふもふから這い出してきたルーが、視界の端で跳ね始めた。
(癒される……)
ぴょんぴょんと弾むルーは、かなりの癒し系だ。 山々ナメクジの納品を無事に済ませ、結構な金額を手にしたリュートは、お腹いっぱいご飯を食べて、部屋に戻った瞬間、私を捕まえてバタンキューした。
思わず状態異常を疑ったけど、疲れただけらしい。
可愛い子と出会って、緊張したのかもしれないね。
お嬢様は、貴族のご令嬢な訳だし。
腹黒ちゃんなお嬢様に、私は嫌われてしまってるけど、出来れば仲良くしたい。
リュートがあのお嬢様を好きになったのなら。
外での食事だったから、あんまり突っ込んだ事は聞けなかったんだけど……。
わざわざ納品の確認のためだけにお嬢様が来るとは思えないし、たぶんナリキ男爵かカネノの話を聞いたんだろう。
とんでもなく強くて、見た目が良い冒険者がいるって。
で、ナリキ男爵が、その冒険者に指名依頼を出したと知って、納品を確認する名目で会いに来たっぽいよね、お嬢様。
兄妹揃って、アクティブだね。
あのリアクションからすると、お嬢様の方は完全にリュートに好意を抱いてるようだけど、リュートの方はどうなのかな?
明日、聞き出さないと……。
ルーが戻ってきたのを感じながら、私はリュートの枕のまま、意識を手放した。
「……あれ?」
久々の喉の震える感覚と、ちゃんとした手足のある体と長い髪。
しっかり踏み締めてるに、ふわふわとした頼りない地面。
「これって、また女神様の夢?」
「そうよ、元気だった?」
私の呟きに、ヌッと絶世の美貌を持つ女神様が間近に現れる。
相変わらずフランクだ。
見た目はとんでもなく神々しいのに。
私の表現力じゃ表せないんだよね、美人過ぎて。
「相変わらず、お綺麗ですね」
「あら、ハルも同じぐらいの美人にしたわよ?」
誉めてみたら、何か聞き捨てならない事を言われた。
美人なモンスター。うん、つまりは、モンスターにモテるのか?
「オスに襲われる未来しか見えませんけど」
「元々モンスターは弱肉強食よ? 番になった相手以外は敵なんじゃない?」
「それもそうですね」
「それに、モンスターで美人なんだから、人の姿になっても美人よ?」
「それは、見られないのが残念です」
悪戯っぽく笑う女神様に、私も悪戯っぽく笑って答える。
近寄りがたい女神様より、ゆるいけど、話しやすい女神様で良かったと思う。
ドジなのは、改善求めたいけど。
「今見たいの? なら、鏡を出してあげる」
さすが女神様。
そう言って一瞬で豪奢な姿見を出してくれた。
「さぁ、これが人の姿になったハルよ?」
ふふん、と自慢げな女神様に後押しされ、私はゆっくりと姿見の前へと進む。
「これが私……?」
姿見の中では、真っ白な髪に金の瞳をした少女が、目を見張って見つめ返している。
年はリュートと変わらないぐらい。
体型は羨ましいぐらいって、自分か。
前世の私より、胸が大きいのは地味にショックだ。
顔面偏差値は、贔屓目もあるだろうが、高いと思う。
「服は私の趣味よ?」
じゃなきゃ、裸だったんだろうか、私。
そう言えば、前回は裸だった気がする。
「ありがとうございます?」
「現実では、自分で買ってね」
女神様は何が楽しいのか、うふふ、と笑って、背後から私の髪を弄っている。
現実では、と言われても、ケダマモドキな私に服は不必要だ。
「あの、それで今回はどんな用件ですか?」
こんなに、ひょいひょい会ってはいけない相手だと思うんだが。
「たまには、鑑定越しじゃなくて、会って話したかったの」
駄目だった?
この状況で、シュンとした超絶美女の無邪気な上目遣いに、駄目って言える奴がいたら会ってみたい。
「いいえ。私も女性と話したかったですから」
「うふふ、良かったぁ」
リアル花が咲くような美しい笑顔いただきました。
お嬢様も美少女だったけど、女神様は何かレベルが違う。
私は微笑みを返し、せっかくだから、気になっていた事を聞くことにした。
「女神様、ケダマモドキって、実在するモンスターなんですよね?」
「そうよ? 上位のドラゴンよりレアなの。能力はハルほどないけどね」
「かなり仲間に会うのは難しそうですね。そう言えば、何でリュートとエヴァンは、私の言葉がわかるんですか?」
「生きてれば会えるわよ。リュートとエヴァンがハルの言葉がわかるのは、ハルが伝われと心から願ったからよ」
「仲間と会えるの、楽しみにしてます。伝わった理由は何かわかりました。命かかってましたからね」
「ふふ、でしょう? ルーはいい子にしてる?」
「してますよ? でも、普通のスライムより成長が早いし、強い気がするんですけど」
「それはハルのもふもふの効果よ。成長促進効果もあるから」
「……私で遊んでませんか?」
「遊んでないわ。早くレベルが上がると良いわね。そうしたら、もっと色々出来るもの」
「まだ何かあるんですね、私」
もう私の能力に関しては、諦めた方が良いかもしれない。
女神様は楽しそうにクスクス笑っているだけで、色々については教えてくれそうもないし。
別なことを話した方が、時間を無駄にはしないだろう。
気を取り直して、私は口を開いた。
聞きたい事はたくさんある。
「そう言えば、いつも鑑定ありがとうございます。聞きたかったんですけど、何で私の鑑定には体力値とかステータス的な数字はでないんですか?」
「どういたしまして。あら、ハルはレベルと年齢ぐらいで十分でしょ? 体力値とか素早さとか数字でわかったからって、役に立ちそう?」
「……言われてみれば、腹黒ちゃんとか、教えてもらえる方が便利ですね」
「そうでしょう?」
女神様のドヤ顔可愛いな。
美人は何しても美人だ。
「体力値とか素早さとか、私には無用の長物ですね、確かに」
平均とかわからないし、私。
「うふふ。腹黒ちゃんで思い出したけど、ハルの可愛いリュートに悪い虫がつきそうだけど良いの? 今のレベルじゃ間に合わないかもしれないし、早くレベルアップ出来るようにする?」
「いえ。彼女は腹黒ちゃんかもしれませんが、なかなか真っ白な天使みたいな子なんて……あ、いましたね」
「ハルの可愛いリュートは、真っ白な側よね。時々お馬鹿さんだけど」
「そこが可愛いんです。ま、ちょっと寂しいですけど、いい子なリュートには、少し計算高いぐらいの相手が頼もしくて良いと思います」
「最終的にはリュートの気持ちよね? さすがの私でも、人の心を完全に把握なんて出来ないから」
「んー、私が見たところ、女狐よりは可能性が高そうですよ? まんざらじゃない感じというか……」
「脈ありなのね。てっきり、リュートはハルが好きだと思ってたけど」
「それは、好きの種類が違うんです。私への好きは、家族への好き、でしょうから」
「そうなの?」
女神様も女性。やはり、恋話が好きらしい。首を捻る姿は、とても、生き生きしている。
「なら、ハルは? リュートをどう思ってるの?」
「可愛いうちの子、ですね。精神年齢的には半分ぐらいですから」
うん。今さらだけど、死ぬ前の私の年齢は、リュートの約二倍だ。
「あら、今はハルが年下だし、男の子の成長は早いわよ?」
「リュートは将来有望そうですよね。エヴァンにも負けないイケメンになりそう」
「そうね。エヴァン。彼もいい男よ、どう?」
「どうと言われましても、エヴァンは友人です。それに、私達じゃ、美女と野獣じゃなくて、イケメンとモンスターですよ?」
「今の姿なら?」
「……冗談で、人間だったら口説いてるぐらいの事は言われますけど」
「あら、なら、お似合いよ!」
「残念ながら、私はもふもふなモンスターですから。女神様のおかげで……」
「もー、意地悪な言い方しないでよ!」
ぷんぷんという形容詞が似合いそうな可愛らしい怒り方の女神様に、私はクスクスと笑う。
もちろん、本気で言った訳じゃないから。
「すみません、冗談です。気に入ってますよ、ケダマモドキな自分。自分のもふもふに触れないのは、かなり残念ですけど」
「もー、ハルったら」
友人のようなじゃれ方は、女神様のお気に召していただけたらしい。
うふふ、と笑う姿は楽しげで、輝いてる。
本当に私と話したくて呼んだらしい。
「あと、今ならもふもふに触れるわよ? その姿でも、毛皮の感触は同じだもの」
「本当ですか!?」
これは触るっきゃないよね。
女神様に慈愛の眼差しというか、残念なモノを見るような眼差しで見られながら、おずおずと自らの髪へ触れる。
「これは、確かに最高の手触り……」
自分の髪なのに、思わずうっとりしてしまった。
「うふふ、でしょ? だから、迷わずケダマモドキに転生させたの!」
「いや、私はもふもふしたいと願ったんですけど……」
「それは、早とちりしちゃって……」
「もう気にしてないですから。一応、言いたかっただけです」
見た目は完璧なのに、女神様は残念な所が可愛らしい。
からかいたくなる。
「私で遊んでるわね、ハル。もう鑑定してあげないわ!」
「え!? それは困ります!」
主に食方面で!
慌てる私に、プイッとそっぽを向いた女神様は、しばらくしてからクスクスと笑い出す。
「からかったんですね?」
「さっきのお返しよ」
子供か。って、私も同じような事をしたのを思い出し、女神様と顔を見合わせる。
間は数秒。
私達は見つめ合いながら、声を上げて笑い合った。
目覚めはスッキリしていたが、夢の中でしか会えない友人を思い出し、ほんの少し寂しかった。
閑話的な話でした。
たまにはハルさんも女子トークしたいかな、と。




